つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

久々に当たりを引いたので今日は長い。

2005-01-10 03:21:06 | 小説全般
さて、なかなか続いて第41回は、

タイトル:眠り姫
著者:貴子潤一郎
文庫名:富士見ファンタジア文庫

であります。

顔に傷のある美少女が毛布にくるまっている姿を描いた表紙。
16歳のやくそく! という恥ずさ全開のコピーが入った帯。
ピンクの背表紙に印刷された三文字のタイトル、『眠り姫』。

おいおい、ピンクのカバーの某文庫かよ?

友人Z(サイボーグではない)の推薦がなかったらスルーしてますね、これ。
上記の三要素が、内容を思いっきり誤解させてます。
タイトル以外は作家さんの責任ではないのだろうけどね……。

で、警戒心バリバリで挑んだ本書ですが。

大当たりです。

近年の作家では二番目ぐらい――ちなみに一番目は隠すのが通だ。
短編集なので一つずつ感想を書いておきます。

『眠り姫』……タイトルネーム。どうも、『12月のベロニカ』という作品の外伝らしいのですが、単独で読むと淡泊過ぎてイマイチ。話としてはまとまっているけど。

『汝、信心深き者なれば』……耽美ホラー(怖くはないけど)。悪い奴が虐められるのって奇妙な快感がありますよね、それをやるのがもっと悪い奴だったとしても。

『さよならアーカイブ』……短編の特徴としてリング形式(最初と最後が同じライン上にある)が取りやすいというのがありますが、これはそれを利用した好編。ネタはすぐに割れますが、気にせず読ませるのは御上手。

『水たちがあばれる』……個人的に一番好きな話。ディープに楽しむために、夢野久作の『ドグラ・マグラ』は必読。例の、「ブーン――ンンン――ンンン」という不気味な効果音をそのまま頂いているのはどうかと思うが、それをさっぴいても良い出来なので気にしない。しかし、SFと胎児って妙に相性いいよねぇ。

『探偵真木1・2・3』……スーパーマンではないが、キレのある探偵の物語。1は映画と音楽のウンチクが多すぎてウンザリ(それでも削ったらしいけど)。家出少女の捜索をする、3が一番秀逸。押しつけがましい説教話でも、安っぽい人情話でもない、オトナの話に仕上がっている。

長くなってしまったけど最後に一つ。

上手な短編作家は貴重だ。