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つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

麒麟でGO!

2005-03-13 11:30:54 | ファンタジー(異世界)
さて、陽子の活躍がかなりかっこよかった第103回は、

タイトル:風の万里 黎明の空(下) 十二国記
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ホワイトハート

であります。

下巻に入ってしばらくしてから一気にストーリーは動く。
止水郷での出来事から、教えを請うている遠甫と言う人物から慶国の実情を知る陽子。
そして清秀を殺され、復讐を決意する鈴。
楽俊に景王がいかにして玉座を選んだのかを知り、その人となりを知りたいと景王を目指す祥瓊。

それぞれが新たな理由を持って慶国へ入り、止水郷へと向かっていくこととなる。

さて、ストーリーが動くのは、極めて悪辣な官吏……郷長が治める拓峰で乱を起こすために集まった義賊たちの存在が出てから。

鈴はこの郷長である昇紘に復讐するためにこの義賊の仲間になり、着々と乱の準備をする。

祥瓊はと言うと止水郷でひとを集めて、戸籍もくれて……なんて噂を聞いて、止水郷へ向かうことにする。
辿り着いたのは止水郷よりまだ東の和州州都明郭。そこで、芳でしか行われていないはずの磔刑を見て愕然とし、思わず刑吏に石を投げてしまう。

それで追われることになり、陽子の助けを得て、そして傭兵だと名乗る得体の知れない男に助けられる。

で、陽子はと言うと景麒と一緒に明郭に行ってみたりと和州の実情がどんなものなのかを見聞し、いかに王として何も出来ていないかを実感する。
そして、里に戻ってみると里家が荒らされ、一緒に住んでいた子供たちは殺され、傷つけられ、遠甫までがいない。

理由はわからないが、関係がありそうなのは拓峰で出会った男たち。
そこで、あの義賊に出会い、そして鈴に出会い、昇紘を討つために集まったことを知り、これに加わる。

ここでまず陽子と鈴がともに戦うことになる。

祥瓊はと言うと、厄介になっているところが実は侠客の集まり。
義賊が拓峰で、こちらは和州州都明郭で王に国の実情を知ってもらいたいと集まっていた。
そこで義賊に武器を渡すための使いに選ばれたのが祥瓊。

ここで接点が出来る。

そしてとうとう拓峰で乱が起きる。
様々な計略を用いて郷城を落とし、昇紘を捉える陽子と義賊の仲間たち。

ここからはほとんど合戦。
拓峰での乱を知った祥瓊たちまで参戦し、拓峰の兵だけでなく、州の軍……州師まで出てきてどんどん規模が大きくなってくる。

続いて明郭にまで乱が起こり……とうとう禁軍……いわゆる王の近衛軍のようなのまで出てくる。

ここまではテンポのいい合戦が続いていて、読みやすい。
女性の作家にしては剣を持って戦う場面とかもしっかり書かれているし、流れがよく、どこも描写で引っかかったりするところがない。

上巻は陽子、鈴、祥瓊の3人の人間ドラマが中心で、下巻は前半がこの乱を起こすための話。
里家が襲われたり、武器を集めたりと、その後に続くこの戦いの緊張感と言うものを最初は淡く、そして引き絞られた弓のように高めていく構成はすばらしい。

合戦の描写も上に書いてあるように流れはいい。
文章はけっこう地の文が長いんだけど、ほんとうにそれを気にさせない。

そしてやはり最後の締めは陽子。

禁軍が出てきたことで「月の影 影の海」のときのように戦いに慣れた覇気を、怒気とともに纏う陽子。
かっこよすぎっ!

さらに景麒に騎乗し、禁軍……王師の将軍に向かって出陣の真偽を糾す姿はいかにも王。
そして、勅命をもってこの乱の原因ともなった官吏を捕らえ、王宮に戻ることになる。

まぁ、その後のエピローグのところはさておき、このクライマックスのあとの、もうひとつの見せ場が戻ったあと、陽子が初勅を宣言するところ。

「諸官はわたしに、慶をどこへ導くのか、と訊いた。これで答えになるだろうか」
 諸官の返答はない。視線だけが王に向かう。
「その証として、伏礼を廃す。――これをもって初勅とする」

クライマックスに続いて、最後の最後でもうひとつあるのがまた憎い。

書いてなかったけど、この初勅のことは上巻からあった話だからこれまたうまく構成されている。

何度読んでもこのラストはクライマックスの余韻と相俟って印象に残る。
上下巻あわせて700ページを超えるくらい長くはなったけど、このシリーズの中ではこの陽子の話が3本の指に入るくらい気に入っている。



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出奔でGO!(謎)

2005-03-12 14:06:23 | ファンタジー(異世界)
さて、十二国記シリーズの正当な続編の第102回は

タイトル:風の万里 黎明の空(上) 十二国記
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ホワイトハート

であります。

正当な続編、と言うわけで最初の「月の影 影の海」の主人公の陽子が景王になってからの話。

でも、この話は陽子だけの話ではない。

いつもの通りの成長話。
でも、今回は陽子に加え、おなじ海客の鈴、討たれた芳王の元公主の祥瓊。

まず本当の主人公、陽子。
玉座につくことを選び、晴れて景王となったけど、王になってももとは海客。
違う世界から来たからこの世界のことなど何もわからない。

どうすればいいのかわからない。
そんな苦悩の中、民の暮らしを見るために身分を隠してある里に厄介になる。
そこで経験する数多の出来事。もちろん、それは下巻に続く話の中のひとつ。

てか、上巻は陽子の話より、鈴、祥瓊の話のほうが多い。

では鈴。
だいたい、十二国記ではこういうメインキャラにはたいていそのキャラの考え方とかを変えるべく、ひとりのキャラクターが用意されている。

鈴の場合、旅の途中で出会った少年の清秀。
この少年の言動や態度で成長し、そしてその死で決定的になる……わけだけど、仙になって百年も経つのに成長しろよ……と言いたくなる。

まぁ、いろいろと過去がある。
海客でいきなり流されて、言葉も通じない、常識はわからない、などなど。
でも、何の努力もしないで人に哀れんでほしい、ってのはどういう了見だ? と言いたくなる。

さておき、鈴の場合は、こうだけど、祥瓊の場合は「月の影 影の海」で陽子を救う巡り合わせになった楽俊。

まぁ、鈴も祥瓊も、何考えてんだ、おまえら、的なキャラだな。
もともとは、公主でその責任を果たさなかったから憎まれ、恨まれた。

でも、それをまったく理解せず、自分勝手に恨まれるのは自分のせいではない、と言い張るところは鈴とよく似ている。

挙げ句の果てには自分が失ったものをすべて手に入れたと勘違いして陽子を、同じ年頃で王になったと言うだけで恨み、憎み、弑逆すら考える。

だけど、祥瓊のほうはまだ楽俊のおかげでまだマシかな。
だいたい、さんざんなどん底から陽子を引き上げるだけの器のでかさがあるネズミだけにね。

まぁ、鈴と祥瓊をあえて較べるなら、ってとこだろうけど。

ともあれ、このふたり……鈴は清秀、祥瓊は楽俊と旅をして、心や考え方に僅かながら変化が起きる。
こういうところの流れはやはりうまい。

それに、元々の理由はどうあれ、慶へ向かうことになったふたりが、出会うべくして清秀、楽俊と出会い、そして慶へ辿り着く。

陽子も何が起きているのか見えないまま、和州止水郷へ向かい、ふたりと出会う。

まったく別の原因、旅路、目的がある3人がごくごく自然に集まってくるストーリーの流れのなめらかさはやはり感服する。

しかも上巻はうまいところで切っている。

華軒にひかれ、命を落としてしまう清秀。
それを抱いて鈴に渡すのは陽子。

ようやく3人が集い、ひとつの目的に向かって話が進んでいく際のところで終わらせている。

くそぅ、下巻が気になるじゃねぇかよっ!

下巻に続く



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時代劇でGO!

2005-03-11 11:59:07 | ファンタジー(異世界)
さて、気付いたら大台越えてる第101回は、

タイトル:東の海神 西の滄海 十二国記
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ホワイトハート

であります。

「国が欲しいか……くれてやる!」

とまぁ、アームズごっこは置いといて。
十二国記シリーズの第三作目です。

前作、前々作で登場した雁国の漫才コンビ尚隆と六太の番外編。
時代はかなりさかのぼって、五百年前。
つまり、二人が王&麒麟として国を治め始めた頃です。

尚隆が延王に即位して二十年。
荒廃した雁国はようやく復興の兆しを見せ始めていた。
しかし、光あるところ影があるのが人の世の常。
自ら召し抱えた有能な官吏に政治を委ね、自分は色町に出かけたり賭博に興じる尚隆に内外で不満の声が上がっていた。

そんな折、麒麟である六太が拉致されるという大事件が勃発する。
果たして、雁国の運命やいかに?

ノリは時代劇です

いや、冗談抜きで。
何でも調べてくれるスーパーエージェント『御庭番』は出てきません。
でもそれを除けばまるっきり時代劇です。オチの付け方も。
小姓が悪い藩主にさらわれて、暴れん坊将軍がそれを助けに行くようなものです。

それはさておき、ちょっと真面目な話を。
本作では、キャラクター配置、及び時間の流れが二重構造になっており、それが非常にストーリーを解りやすくしています。この方、本当に構成が上手い。

キャラクターで言うと、尚隆と六太に対するのが斡由と更夜。
斡由は今回の陰謀の主犯格でナルシスト。
更夜は妖魔に育てられた人間で、斡由以外に頼る者がない。
二つのコンビは見事に対極の位置にいます。

時間で言うと、主筋は即位から二十年後。つまり今回の事件。
それに、尚隆と六太が出会った頃の話がオーバーラップするようになっています。
このおかげで、真面目と不真面目を使い分ける主人公二人の性格がよく理解できます。

キャラも話も非常に良くできた本作。
最初にこれを読んでハマったという方もいらっしゃるようですね。
私としては、やはり順番通り読んで頂きたいと思いますが……。

というわけで今回はこのへんで。
ちなみに十二国記シリーズは、sen-linn二人揃ってオススメという希有な作品です。
なので、必読! もオススメ! も敢えて付けません。
騙しますので、騙されて読んでみて下さい。(なんか文法おかしくないか?)



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企画は続くよ、最新刊まで

2005-03-10 08:42:55 | ファンタジー(異世界)
さて、次は分けようがない第100回は、

タイトル:風の海 迷宮の岸(下) 十二国記
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ホワイトハート

であります。

というわけで、前回の続きです。
ちょっと内容が重複したりしますが、ノリで書いてるのでお許しを。

ついに、その時がきた。(※昼の連ドラではない)
泰麒は蓬山にやってきた者達の中から王を選ばなくてはならない。
未だ転変することすらかなわぬ幼い麒麟は決断を下せるのか?

無理だってば

今まで日本にいた子供が中国風ファンタジーの世界に連れてこられる。
周囲の人間は皆一様に優しいが、それは自分に重大なお役目があるから。
とどめの一撃は、貴方は人間じゃありません、麒麟です、獣です、要は妖怪です。

そんな状態でまともな判断なんて下せるわけがありません。
しかも、麒麟にだけ解る『王気』なるものも曖昧模糊としてよく解らない。
泰麒は王を選ぶことができず、人々の間をうろうろすることになります。

おまけに、出会った人々と別れる時の決まり文句がありまして。
要は、「貴方は王じゃないけど無事にお帰り下さい」ぐらいの意味。
相手の好き嫌いに関わらず、王を選ぶ時以外はこれを言わなくてはなりません。

お前ら小学四年生に何を要求してる?

結局、最初に昇山した人々の中に王はいませんでした。
代わりに、泰麒は二人の人物と親身になります。
どちらも戴国の将軍ですが、一言で言っちゃうと、『なんとなく怖いオジサン』と『優しいおねーさん』。

ある日、泰麒は二人と一緒に幸せな牢獄を出て、狩りにでかけました。
そして、そこでとんでもない妖魔と対峙することになってします。
泰麒の運命やいかに……。

上巻は泰麒の葛藤と置かれた状況を説明するのが主でしたが、下巻はとにかくストーリーが動きます。葛藤→安堵→恐怖→覚醒→罪科→解放と続く一連の流れは非常にテンポが良く、一気に読めます。可愛いだけじゃない、泰麒の活躍をお楽しみ下さい。

ちなみに本巻では、前作で登場した大国雁の愉快な二人がゲスト出演します。
って、紹介してないし。ま、次作は彼らの話なのでその時に。

最後に一言。

少年は試練を越えてナンボである

では、また次回



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さらに企画は続く。

2005-03-09 08:26:28 | ファンタジー(異世界)
さて、こちらは分ける必要はなかったかも知れない第99回は、

タイトル:風の海 迷宮の岸(上) 十二国記
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ホワイトハート

であります。

主人公こそ陽子ではありませんが、『月の影 影の海』の続編です。
ただし、時代的には陽子が来る以前。
舞台も世界の中心にある蓬山です。(ちなみに陽子が王になる慶は東のはじっこ)

本作の主人公は、泰麒(たいき)と呼ばれる十歳の少年。
前作の景麒と同じく麒麟であり、戴という国の王を選ぶ役目を与えられています。
問題は、彼も陽子と同じように日本で育ったということ。
麒麟の姿になることはおろか、この世界のことを何も知りません。

泰麒を守るために生まれてきた女怪の汕子。
世話を焼いてくれる女仙達。中でも一番親身になってくれる禎衛と蓉可。
友情出演(笑)したにも関わらず、どこまでもそっけない景麒。
まだ幼い泰麒は皆の期待に応えられず、そんな自分を恥じるばかり。

さて、泰麒は本当に王を選ぶことができるのか?
そういったマクロな話は下巻で書かれています。

ちなみにこの泰麒、とにかくよく泣きます。
よく解らないまま、できそこないの麒麟なのだと自分を責めます。
母性本能にダイレクトに来るのでしょう、女性に異常なまでに人気があります。

最後に恒例のデカ文字一言を。
下巻はともかく、上巻はこれが妥当でしょう。

泰麒は可愛い

では、また次回



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初の上下巻分けの下巻

2005-03-08 21:33:55 | ファンタジー(異世界)
さて、下巻に続くをホントに続けて第98回は、

タイトル:月の影 影の海(下) 十二国記
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ホワイトハート

であります。

上巻でとことんどん底まで落ちてしまった陽子。
下巻は人間らしさを取り戻し、浮上する話。

まぁ、お約束っちゃぁお約束だけど(笑)

で、ここで鍵を握るのは、下巻の最初で行き倒れの陽子を助けたネズミの半獣の楽俊。

もちろん、完全に人間不信になった陽子にとっていくら助けてくれたとは言え、どうなるかはわからない。
自衛のために剣を握り、油断なく、けれど、行き倒れだったから動けない。

疑い、利用しようとする中で、小さく燻るもの……。

そんな中、異世界から来たのだからと別の国……治世500年を数える大国雁へ行くことを勧められ、楽俊とともに雁への旅路を選ぶ。

そんなときでも、実は楽俊はいまいる国……巧では半獣は一人前の成人として認められないから、そういう差別のない雁へ行きたい、と言う完全な善意でないことに酷く納得する陽子。

やはり、人間荒んでくるとそういう思考しかできないのだろう。

続いてある町で妖魔に襲われてしまい、それを撃退するけど、巻き添えになった旅人の中に楽俊の姿を見つけて、とどめを刺すべきか、それとも逃げるべきか、助けるべきかを迷う。

このあたりにいくら荒んでいても、最後の一線を越えられないところが見え隠れしてくる。

結局、逃げてしまい、楽俊を見捨ててしまったことに後悔しつつ、雁を目指し、ようやく雁に到着する。

そこでは実は楽俊が陽子が来るのではないかと港で待っていた。
そのことに愕然とする陽子。
自分は見捨てて逃げたのに、それでも楽俊は働きながら待っていてくれていた。さらに、見捨てたはずなのに、自分の落ち度だと言う。

ようやく見つけた信頼できる相手に、らしさを取り戻す。
まぁ、予定調和っちゃぁそのまんまだけど、そこまでの道のりがつらく、しかも描写が容赦ないから、読んでるほうもほっとしてしまう。

ここからは話がちょっと違う方向へ。
実は最初に出てきて陽子を主だと言った男……これがこの世界で各国の王を選定する麒麟。
慶国の麒麟で景麒で、いちばん最初のときにすでに王に選んでいた。

そこで今度は景王として慶へ戻る話になる。

まぁ、ここはわざわざ解説するほどのところではないので割愛。

やはり、上巻から続く陽子の描写がよい。
剣の見せる懐かしい日本の幻影、自分でも気付かない内心の思いを暴く青猿。
荒んでいく心と、らしさを取り戻すまでの楽俊の役割。

構成自体は独自性があるとは言えないとは思うけど、そこは陽子や楽俊、青猿のキャラクターとしての魅力や見せ方というのが、やっぱりうまいと思う。

ストーリーの流れもすんなりと入っていけるし、主人公を現代日本から流れてきたキャラにしたから、中国風の異世界ファンタジーでもカタカナ表現に無理がなくなっている。

100%素晴らしい、とは言えない部分もないわけではないけど、やはり無条件でお薦めできる小説には違いない。

ただし、上巻だけを買わないように。

あまりにも暗いので、下巻を一緒に買わないと読む気が失せる可能性あり(笑)



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緊急企画!(どこがだ!?)

2005-03-07 20:12:39 | ファンタジー(異世界)
さて、またもや中途半端に企画する第97回目は、

タイトル:月の影 影の海(上) 十二国記
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ホワイトハート

であります。

再び小野不由美先生であります。
なおかつ、十二国記シリーズの企画であります。

悪霊シリーズでティーンズ小説の中では名前が知られていた小野先生。
これによって、ティーンズの枠を超えた人気を得、そしてNHKでアニメにまでなった作品の記念すべき第1作。
(新潮文庫の「魔性の子」のほうが先だけど)

主人公は、ある女子校に通う高校生、中嶋陽子。
家族、クラスメイト、教師……そんな人間関係を上辺だけでもうまくやってきた陽子。

その陽子が1ヶ月前からずっと奇妙な夢を見る。
鳥や猿……だけど、見知ったそれとは違う奇妙なもの。
それがどんどん夢の中で近付き……そしてそれは現実になる。

そんなときに、現れ、事情も話さず、陽子を主だと言う謎の男。
わけもわからず、そしてホントにわけもわからないところへ連れて行かれる陽子……。

そこは、日本ではなかった……。

本作は中国風の異世界ファンタジーで、主人公の陽子が景と言う国の王になるまでを語った物語。

なんだけど、暗い。
とにかく暗い!

そりゃそうだろう。
わけもわからず、何も知らない世界へ連れてこられ、頼りになるはずの連中とははぐれたまま。

そんな中、陽子はとにかく不幸続き。

地元の人間には捕まえられ、ようやく親切な人に出会ったと思えば女郎宿に売られそうになり、おなじ日本から流れてきた人には裏切られ、化け物(妖魔)とは延々と戦い続け……。

また、わけのわからない化け猿や幻覚に悩まされ……。

そんな中で、陽子は極めて人間不信に陥る。
誰を見ても裏切るのではないかと疑い、いかにして利用できるかを考える。

そして、戦い続けて、もう動けない……ホントに身体が言うことをきかないところまで追い込まれる。

……はっきり言って容赦がありません。

後書きで、「暗さにめげず……」というくだりがあるけど、ホントに暗い。

この作品に出会ったとき、本気で暗すぎて下巻を買ってなかったら読む気がおきなかったくらい。

でも、ここでめげてはダメ。
ダメ……だけど、次回……(笑)



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実はこれが原点

2005-03-05 22:32:19 | ファンタジー(異世界)
さて、一部のファンにとってはホントに懐かしいはずの第95回は、

タイトル:エフェラ&ジリオラシリーズ
著者:ひかわ玲子
出版社:大陸書房(現在講談社X文庫ホワイトハート)

であります。

私が物書きをしようと思った原点とも言える作品。

主人公はふたり。
女傭兵と女魔術師。

このふたりが大陸を股にかけていろんな冒険をする話。

……っちゃぁおしまいだけど、シリーズとして結構長かった。
お人好しの傭兵で、実は皇国の王女様なのに、傭兵やってるジリオラ。
おちこぼれ、でも潜在能力はすごい魔術師のエフェラのふたりが織りなす冒険譚。

かなーり、ジリオラのキャラが好きでした(笑)

……さておき、実は原点と言うのは、私はこの小説を読んで、ファンタジーを書くようになった、ということ。

と言うより、物書き始めた、ってことだけど。

いま読むと、「うーむ……」なんだろうけど、懐かしさが先に立つ。

でも、三剣物語より前の作品で、いわゆる剣と魔法の世界、と言うとこのひとの、この作品はひとつの記念碑的な作品だと思う。

まだ日本のファンタジー黎明期のころに出た作品だからね。
無条件でお奨め、とは言わないけど、無理なくそつなくストーリーは組み立てられているし、一度手に取ってみるのは悪くないと思う。
(ただし、今風の氾濫してるライトノベルが好きなら、と言う限定はあるかもしれないけど)

ただし、ふたりの迷コンビは楽しい(笑)
お人好しで、傭兵なのにお金云々より感情で突っ走ってしまうジーラと、それを怒ったり怒鳴ったりするエフェの場面は定番であります。

主人公とは、すなわちアウトサイダーである。

2005-03-04 18:56:50 | ファンタジー(異世界)
さて、一部のファンタジィ・ファンにとっては垂涎の第94回は、

タイトル:カメレオンの呪文
著者:ピアズ・アンソニィ
文庫名:ハヤカワ文庫

であります。

「時よ止まれっ! ザ・ワールドッ!」

いや、JOJOごっこはいいとして……。
本書は、知る人ぞ知る『魔法の国ザンス』シリーズの第一作です。

ザンスの世界では、誰もが独自の魔法の力を持っています。
しかし、主人公ビンクにはそれがありません。
おまけにザンスには、25歳までに魔法の兆候が現れなかった場合、別世界(要するに人間世界)に追放されるというハードコアなルールがあったりします。

ビンクに残された時間はたった一ヶ月。
果たして彼は自分の魔法の力を見つけることができるのか……?

ハイ・ファンタジーというジャンルには、幻想世界での不思議な出来事を描くことを目的としたものと、幻想世界を利用して現実を描くものの二種類がありますが、これは後者の部類に入る作品です。つまり、ビンクの『魔法の兆候』を、『職業的資質』とか『芸術的才能』に置き換えても話が成立するということです。

ま、成長物語だということは、あらすじだけで察しがつくでしょうけど。(笑)

登場人物の会話が非常に論理的かつ現実的で、物語をしっかりと支えています。
ファンタジーと言うよりはむしろSFに近い作品です。
しかし、ちゃんと魔法は興味深いものとして扱われていますし、世界も(私達から見れば)不思議に満ちています。

ファンタジー好き、SF好きどちらにもオススメ。
ただし、ヒロイック・ファンタジーではないので注意。
ビンク君は素敵な青年ですが、英雄でも超戦士でもありません。

ようやく終わった……

2005-02-27 14:45:26 | ファンタジー(異世界)
さて、なつかしシリーズもようやく最後の第89回は、

タイトル:ロードス島戦記 ロードスの聖騎士(上)(下)
著者:水野良
出版社:角川スニーカー文庫

であります。

今回の新しいメインキャラはフレイムの騎士見習いのスパーク。
そしてスレインとレイリアの娘のニース。

ニースが邪神復活の扉であることで、マーモの元宮廷魔術師のバグナードに狙われ、それを守るためにスパークを始めとするパーティが組まれ……。

上下巻のうち、上はほとんどスパークの話。
まぁ、前の巻がこの話の伏線だったので、いろんな国でようやくマーモの支配をどうにかして、そこからマーモへと各国が攻め込んでいくのもメインのひとつ。

んで、第1巻で対決した灰色の魔女カーラの話もここで締めている。

んー、きちんといままでの話をここで完結させてるのは、うまい具合に書いたと言う感じがしないでもない。

いや、きっちりと終わらせたし、矛盾もないし、全体の構成としてはしっかりしている。

しかし……。

懐かしいだけでこれだけの巻数があるシリーズものを読むものではない。

よっぽど好きで、いまでも読み返しておもしろいなぁ、と言える話ならいいけど、大してお気に入りでもない話を選ぶと読み進むうちにかなりどーでもよくなってくる。

「王たちの聖戦」「ロードスの聖騎士」ともに、一括して書評にしてやろうかと本気で思ったぞ。

と言うわけで、今回の教訓。

懐かしいだけでシリーズものを選ぶと馬鹿を見る。