迷宮映画館

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イン・ザ・ベッドルーム

2002年10月28日 | あ行 外国映画
メイン州の小さな街、おいしそうなオマールエビがあがるところ。この街で小さな診療所を開いているマット・ファウラー医師。妻のルースは学校で合唱の教師をしており、建築の勉強をしている一人息子のフランクは帰省中。船にのってエビの漁のバイトをしている。

一見、ごく普通の小さなそれなりの家庭。贅沢ではないが、幸せそうだった。その幸せに暗雲といえば、息子の恋人のナタリー。二人の子供がいる。暴力亭主のリチャードと離婚をしたいのだが、亭主がうんと言わない。その一点さえ除けばまあまあの幸せな彼らだったのだが、その1点がすべてを壊してしまう。

何回かのこぜりあいのあと、とうとうフランクをリチャードが殺してしまう。たった一つの銃弾で・・。当然、終身刑が下るだろうと思っていた両親に聞かされた罪状は『故殺』。そんな馬鹿な。息子を殺した男がこれからものうのうと生きていくのか。私たちはかけがえのない息子をあっさり殺されてしまった。あの時、ああすればよかった。これをしておけばよかった。こうさえしなければ・・。無念の思いが次から次へと浮かんでくる。でも、後悔しても始まらない。現実は、毎日は、否応無しにやってくる。息子を殺されたのに、私たちは日々の生活を送らなければならない。なぜ、あの人たちは笑っていられるの?私たちに心から笑える日など永久にやってこない。私たち以外のすべては雑音でしかない・・・。

子供を殺されてしまった親の気持ちを描いてきた作品はこれまでにもたくさんあった。どれも痛さを十二分にわからせてくれたが、この映画のあまりに素晴らしいシシ・スペイセクの母親ぶりに泣かされてしまった。すべてを虚脱してしまったような姿。とことん憤った様子。父親役のトム・ウィルキンソンも素晴らしかったが、とにかく母親のすごさをまざまざと見せてくれた。これはすごい。溜飲の落とし方に異論もあるだろうが、そうして彼らも贖罪を背負うことを選んだわけだ。

初監督作品ということだが、役者だけあって、俳優の使い方がうまい。フェードの多用だけがちょっと気になったところ。

「イン・ザ・ベッドルーム」

原題「In the Bedroom」 
監督 トッド・フィールド 
出演 シシ・スペイセク トム・ウィルキンソン マリサ・トメイ 2001年 アメリカ作品


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