迷宮映画館

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白いカラス

2004年07月02日 | さ行 外国映画
大学の古典教授・コールマンはある一言で人種差別主義者との告発を受け、大学を辞める。その不当な扱いに憤りを感じた妻は、あっけなく亡くなり、孤独な日々を送っていた。

似たような隠遁生活を送る作家のネイサン・ザッカーマンを訪ね、自分の境遇を本にしてくれと頼む。自分で書けばと一旦は突き放したネイサンだったが、なぜか通じるものを感じ、二人は付き合いを続けていく。

ある日、コールマンはネイサンに「自分には恋人がいる」と打ち明ける。普通で考えれば、決してつりあった女ではなかったが、コールマンはいう、「これが最後の恋だ」と。恋人ファーニアの持つ傷、コールマンが持つ秘密、秘密を抱え、二人の悲しい愛の結末は。

原作もかなりの本、アンソニー・ホプキンスにニコール・キッドマン、おまけにエド・ハリスまでご登場なのに、・・・なんで面白くないのか。これだけの材料で、これだけの役者を使って、でもなぜか魅力的な映画になっていない。ベトナム帰りの暴力夫の虐待を受け、辛い過去を持つ34歳の女。掃除をし、一人で寂しく生きている女。身持ちがいいとは言わないが、二コールは神々しすぎる。女としてではなく、人間として。途中意識が薄れてしまって、不覚を取ったが、ベトナム帰りの夫、PTSDを抱える夫を持つ女にしては若すぎないか。その辺の年齢の整合性のなさに納得がいかないと、見ていて入り込めなくなってしまう。

人種に対する大きな秘密を持つコールマン。白い肌の黒人。この辛さは私達にはわからない。どっちにもつけないような半端な人生。拠り所のない自分の人生に対して、ぶつけようのない憤りを感じて生きてきたのだろう。ある日、その半端な自分の人生と決別するのだが、どこまでも心の片隅でくすぶっている。そして、誰よりも人種の苦しさを知っているはずなのに、人種差別をしたと告発される。しっぺ返しを喰らったような衝撃。

ここで、他人の作家に自分の人生を提供しようと思うわけだが、そのように思うだろうか。書けなくなったと思われる作家に、ネタを提供するような形を取るわけだが、見も知らない他人に、何の動機もなく、そういうもち掛けをするとは、不自然だ。そういった不自然さが、見るものを入り込めなくさせている。少なくとも私にはそう感じてしまった。なにより、かにより二人の恋愛が合わないのが決定的なのかも。

ところどころいい言葉の表現がちりばめられていて、じんと来るところがあるのだが、役者と本におんぶに抱っこで、映画としての魅力を考えていないような感じがしてしようがなかった。

『白いカラス』

原題「The Human Stain」 
監督 ロバート・ベントン 
原作 フィリップ・ロス
出演 ニコール・キッドマン アンソニー・ホプキンス ゲーリー・シニーズ 2003年 アメリカ作品


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