迷宮映画館

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エレファント

2004年07月01日 | あ行 外国映画
今日もいつもと同じ一日が始まろうとしていた。遅刻して学校に着いたジョン。校長先生に少々注意を受ける。イーライは写真が趣味、いろいろな写真を撮っていた。いけてるカップル、スタイルを気にする今どきの女の子達、アメフトの練習、孤独な子、いろんなのがいるごくごく普通の高校の一日が、おのおのの人物に焦点を合わせて撮られていく。後ろから、記録映画のように。感情が描かれることもなく、淡々と、それぞれのショットから映し出されて行く。

彼らが、このあとどうなるのかわからない。何が起こるのかは、わかっているのだが、個人個人の運命など、誰でもそうなように、どうなるのかわからない。事件が起きたとき、被害者としてくくられる人たち。でも、紛れもなく彼等には彼らの人生があった。悩み、悲しみ、愛し、笑い、いじめ、それらの生きていた証があったということを強く感じさせるバックからのショット。ひたひたと追うそのカメラは一人一人の人生を映し出していた。

なぜ、こんな悲劇が起きたのか。その真相はわからない。物事の真実がつかめない。本当の理由などわかるわけがない。全体像が見えていない、見えてこないということから、狭い部屋の【象】(「エレファント」)という題名になったそうだ。わからないと言ってしまうとあまりに悲しいのだが、人の心の闇はわかってしまった方が恐ろしいような気がする。

人間は生き物の本性を持っていないのではないかと時々思う。憎しみあい、殺し合い、復讐し、繰り返す。営々とそれを続けてきた。平和が大事だ、命を大切にしよう、戦争反対、そんな言葉を繰り返しながら、片方でとんでもない殺戮を繰り返す。自己の命を永らえるために相手の命を奪うことはどの動物でも行う行為だ。しかし、命を弄ぶ人間とは一体なんなのだ。

長らく自問自答しているが答えは見つからない。結局人間とはトンでもなく不完全な生き物であるということなのだろうか・・。美しい音楽の調べ(エリーゼのために)を聴きながら、悩み続けている。

『エレファント』

原題「Elephant」 
監督・脚本・編集 ガス・ヴァン・サント 
出演 アレックス・フロスト エリック・デューレン ジョン・ロビンソン 2003年 アメリカ作品


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