迷宮映画館

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亡国のイージス

2005年08月05日 | は行 日本映画
ある、雨激しい夜、一人の男が宮津という家を訪ねる。何かを秘めたようなただならぬ雰囲気だ。そして、事故現場。それを見守る男・・。一体、どんな秘密が隠されているのか。

発端は一つの論文からだった。国家のありようとは、今の日本は本当に守るに値する国なのか、日本は亡国と化してしまったのではないか・・。その論文に触発され、何とかせねばと思った人々によって、『平和ボケの日本に喝を入れる』ことが目的になるのか。この辺から話がわからなくなる。まあ、最初からわかりにくいっちゃ、わかりにくい。

その攻防の舞台となるのが、日本が誇るイージス艦。攻撃のための戦艦ではない。専守防衛の名のもと、日本を守る『盾』の名を頂いている。そして、この艦に乗り込んだ男たちによって、戦いが繰り広げられていく。

沖縄の基地から猛毒の化学兵器が盗まれる。ごく微量で、東京を全滅させられるくらいの猛毒。某国(ここはあえて某国といっているところがミソ)のテロリストの仕業と推測される。その使用を阻止するために、工作員として訓練された政府側のスパイが、同艦に乗り込む。その艦に乗り込むとわかっており、活動を起こすと言う事が、推測されていたのに、なぜ未然に防ごうとしなかったのか。未然に防いでいたら、映画に、本にならない、といってしまえばそれまでだが、それではあまりにお粗末でないはないか。それこそ、日本の体質の起きてしまってからら「あぁあ」と言う事を描きたかったのか・・。

その化学兵器を人質に、政府に対して、要求を行う。その要求は、理にかなっている。当然、政府側は飲む事は出来ない。そこに登場する日本の政府の対応もいかにもという感じで、逆にがっかりしてしまう。事なかれの政府の対応はいつものことだ。でも、原田芳雄を首相に据えてしまうと、気骨ある政治家なのではないかと見るほうに期待させてしまう。

原作は非常に長いらしく、読んでないが、あまた出ている登場人物の説明があまりに不十分だ。先任伍長やら副長やら、その他役者のキャラに完全に依存している。それにしては皆さん、髪が長すぎませんか?

シーンシーンの脈絡が繋がらない。「ヒトヒトマル」とか「ヒトロクサンマル」みたいな戦艦用語なんかはやたら丁寧に繰り返して、時間を使うのだが、肝心な爆撃は、遠くに見える僅かな炎。ドア一つ爆撃しても、爆発の瞬間はなく、ドアが開いて、水と一緒になだれ込むシーンが流れるだけ。いつもの監督の人間劇ならば、肝心なところを見せないのも効果的かもしれないが、ここではまるっきり、逆効果になっている。

そして、全編通して、どうしても頭に引っかかるのは「ザ・ロック」。シチュエーションから、人間関係から、落ちの付け方まで、ほとんどどっかで見たことある流れ。それは勿論「ザ・ロック」。マイケル・ベイの映画の中では、これが一番いい出来だと未だだに思っているが、非常にバランスが良かった。役者もよければ、政府、軍、研究者、海兵隊、どれにもきっちり説明がつく。シリアスとコメディの按配もとってもいい。まさに、これの亜流ではなかろうか。

福井晴敏という人の本は読んだ事がないので、きちんとした事はいえないが、軍事アクションという分野で、さまざまな状況下の本を描いている。そこで彼が描きたい事というのはなんなのだろうか。平和ボケの日本に喝を入れたいのか、自衛隊は頑張っているのだぞ、と言う事か。ただの面白、おかしいお話なのか。今年、一気に公開された3本では、何を主張したいのか、という事は全然わからなかった。

本作は非常に今日的なものを含んでいる事はわかる。隣国の脅威、今の日本人にはない愛国心の鼓舞、刹那的な生き方をする日本人、あまりにも短絡的すぎる事件やニュースを聞くたびに、本当にこのままでいいのか、日本人!と思ってしまう。

商売がら、なぜ人間は戦争を起こし続けてきたのか、戦争の悲劇、悲惨さ、戦争が起きる要因等々をずっと考え、生徒たちに問題提起してきた。それは教える側の責任だと思っている。伝えた、伝え続けている。

結論、誰しも戦争など起こしたくない。しかし、なぜ起きてしまうのか?それが人間だから。人間という不完全な生き物が、この地球上に60億もいて、エゴを通し、他人を傷付ける。では、どうしたらいいのか?学ぶしかない。正しい事を。そして、学ぶ事が出来るのは人間だけだ。不完全だからこそ学ばなければならない。そんな事を思い続けながら生きている。そして、この映画を見て、感想を書くにあたって、思い至った事だ。

役者はおのおの素晴らしかった。本ものの戦艦や戦闘機の持つ迫力はやはりすごい。吉田栄作が述べていたが、本物の持つ迫力に役者は太刀打ちできない、と。言い得て妙だ。いやいや、役者さんたちも、頑張ってマシタ。阪本監督、貴方にこういうアクション(?)軍事物は似合いません。深い人間描写を撮ってこそ。


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