迷宮映画館

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皇帝ペンギン

2005年08月08日 | か行 外国映画
この世界で、最も過酷な世界で生きている動物はなんだろうか?アフリカの砂漠に住むトカゲ、虫かごの虫、ジャングルの草食動物、それとも人間?いや、やはり皇帝ペンギン。コレに尽きる。

マイナス40度の酷寒の中、何もそんな時に卵を産まんでも・・と思うようなときに産卵をする。南極の冬に向かうその季節に。自分の身を削って、3ヶ月かかって生んだ卵。親元から離れた卵は数秒で凍る。身を削って生んだ卵は、メスからオスへのほんの僅かな受け渡しの失敗で無情にも凍り、亀裂が入る。

しかし、感傷に浸ってはいられない。メスは卵から孵った雛に食べさせるえさのために、100kの道のりを海に向かって行進を始める。その間、オスは吹き付けるブリザードの中、互いに身を寄せ合い、ひたすら卵を守る。

卵が孵った日にあわせ、メスはまた100kの道のりを雛にエサを食べさせるために帰ってくる。帰ってこれなかったメスの雛は、死ぬしかない。そこまで生き抜けなかった雛もいる。そして、今度はオスの旅立ち。雛を守り抜き、つがいに雛をバトンタッチした後、やせ細ったオスは、100kの行進を始める。自分のためだ。しかし、弱りきった体で海までたどりつけないオスも多い。

過酷な中でも雛は着実に成長する。大型の鳥に狙われ、まだまだ続くブリザードにやられる。雛を失った母ペンギンの痛みが刺さる。

ペンギンの生態のおおよそは知っていたが、綿密に、大きく、これほど丁寧に撮ったものは、見た甲斐がある。ペンギンもペンギンなら、撮った方も撮った方。どっちも凄い、えらいぞ。哲学者のような顔に、愛情を交わすときの慈愛に満ちた表情。ユーモラスなお腹にものすごくごつい足。満ち足りて帰ってくる白いお腹と、やせ細ってよたよた進む黒い背中。生きるとはなんと過酷な事か。これほど過酷な人生(?)をなぜ、貴方は選んだのか・・・。

家族のために、自分を待っている雛のためにひたすら歩くペンギン。それは過酷だが、どこか求道者のような、信念が感じられる。1500羽の群れなのだが、雛を失ったペンギンやつがいを見つけられなかったペンギンも、群れの一角をなし、寒さを耐えしのぐ輪を作る様がすさまじすぎる。

一人で見るにはどうしても勿体無く、夏休み、少々お疲れモードの日に、息子二人と見に行った。博学な兄ちゃんは、冷静に見ていたが、弟はやけに感動していた。つくづく見た甲斐のある映画というのは久しぶりだったかも

『皇帝ペンギン』

原題「LA MARCHE DE L'EMPEREUR/The Emperor's Journey」 
監督 リュック・ジャケ 2005年 フランス作品


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