迷宮映画館

開店休業状態になっており、誠にすいません。

戦火のナージャ

2011年08月29日 | さ行 外国映画
ロシアの田園風景。ちょっとセピア色がかった草原、飛び交う小さな虫、短い夏を惜しむように降り注ぐ陽光。貴族の庭園を思わせるようなテラスに座ってご満悦なのは、かのスターリンだ。絶対的な力、他を圧する存在感を振りまいている。

え?そこにいるのはコトフ大佐?え、まさか。なでコトフが生きていて、スターリンの首根っこを押さえつけられるところに・・・。

それはコトフが見ていた悪夢。そう、粛清されたはずのコトフ大佐は、強制収容所で生き延びてた。指の先につけている金具を見れば、どれだけ過酷な状況にいたのかは容易に想像できる。さらに重労働の仕事場に移送される混乱の中、突如降ってきたドイツの戦闘機からの爆撃でなんとか逃げ延びる。

と思ったら、なんとナージャも生きていた!しっかり面影残っているし、すっかり大人になったナージャだが、彼女を匿って育てたのは、当然ながら、我らがドミトリであります!!きゃああーーーオレグ様!!!ちょっと貫禄がついて、お年を召され、ますます渋みがまして、きゃああーーー、昇天一歩手前であります。指折り数えて待ってたんですよ!!

なかなか映画に出てくれないし、この映画が出来たことは聞いてたけど、なかなか日本に来ない・・。おまけに公開の頃にあの地震があっての延期ということで、もう待ちくたびれました。。。。でもいい、待った甲斐がある。若い頃のひりひりした、鋭いイメージが、ちょっとやわらんで、余裕が出た感じ。でも、一層重いものを背負い込み、ことさら複雑さが増したようで、もう垂涎です。あーーーー、素敵。

私の理性をふっとばす3大俳優のお一人なもんで、お見苦しいのですが、なにとぞお許しを。この映画のキモですから、ドミトリの存在は。

「太陽に灼かれて」で描かれた私憤とソ連という国の国情。これで知ったオレグ・メンシコフ様ですが、いいです。最高でございます。

さて、ナージャはバリバリ共産党の少年少女団に加わって運動していたのだが、父コトフへの思慕の念はさめやらず、現在の父親代わりのドミトリに反発してしまう。そしてドミトリのちょっとした困ったような表情からわかってしまった父が生きているという事実。父に会いたい。あの夏の日。大好きな父と過ごした時間を思い出す。



前線で戦うコトフ。塹壕掘りに加わり、ドイツ軍の進撃に備えていたが、応援にやってきたエリートたちは足を引っ張るだけ。ドイツ軍の戦車部隊になす術もなかった。激烈な戦いを生き延びたコトフ。胸に去来するのは娘と過ごした幸せな日々。その娘は、攻撃を受けてしまった赤十字の船からなんとか生き延び、この生きながらえた命は、父を探すためだと心に誓う。

二人がそれぞれ遭遇するのは、壮絶な戦いの場面。ある村を全滅させるドイツ軍のとんでもない蛮行を目の当たりにしたナージャ。でもそれは同胞を見捨てたことが巻き起こしたことだったり、あまりにお粗末な自軍の作戦だったりと、とにかく目の前に敵と対峙し、壮絶に殺しあったという独ソ戦の残虐さと、人の命をあまりにも軽んじる戦争の空しさを痛烈に感じさせる。

第二次世界大戦で、とにかく最大の犠牲者を出した二大大国のドイツとソ連。その戦いにあったのは、とんでもない指導者が生み出した蛮行以外の何物でもない!!ということをこれでもか!これでもか!と思わせた。いままでのミハルコフの映画からは、想像も出来ないくらいの激しい戦闘シーンに面食らったが、どうしてもこれを作らないとあらないとならなかったという監督の思いも感じれた。

その強い思いが先行して、少々物語が散漫になり、描き足りない部分を感じた。やはりミハルコフの真骨頂は、簡単にはあらわにならない人間の隠された感情を推し量ったり、美しい田園風景に潜む影みたいな繊細な辺りかなああと思っているモンで、ちょっとタッチは違ったが、これはこれで見ごたえ十分。彼特有のすべてに目を配ったまんべんない作り方は、突っつきどころがない。
その八方美人的なところを、胡散臭く思う人もいるようだが、映画としてみるには掛け値なしに面白い。

唐突に終わった感があって、これはまた続くのか・・・と思ったら、もう次の話を撮り始めているのだとか。16年前(あたしが「太陽に灼かれて」を見たのは95年)、まさかこの次の物語があるとは思わず、ドミトリとお別れしたのだが、思いもかけずに再会。なんだか居心地の悪さを感じながら、はたまたしっかりオレグ様を堪能できた時間でした。



しっくりこなかったのは、マルーシャ役の女優さんが変わっていた事。オレグ様、もといドミトリが策略によってコトフを追い落とさせた女性がこの人じゃないだろ・・・という不満が残った。ここまで揃えたんなら、マルーシャ役も前と同じ役者にしてもらいたかったなあ。

◎◎◎○●

「戦火のナージャ」

監督 ニキータ・ミハルコフ
出演 ニキータ・ミハルコフ ナージャ・ミハルコフ オレグ・メンシコフ


第一容疑者 姿なき犯人 [DVD]
クリエーター情報なし
ハピネット


このオレグ様、マジにいいです。2、3度、くらっときました。



最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
オレグ・メンシコフ♪ (mezzotint)
2011-09-07 15:52:09
sakuraiさん

わああ~この方のファンなんですか!
マーティン君にオレグさん、、、、。
大好きな方の映画三昧で、さぞかしハッピー
な鑑賞続きですね。
これは、前作を見ていないので、やはり途中から
の鑑賞はちょっと無理あったかもです。
まだ続くんですね。それにしても長いわ~!
返信する
>mezzotintさま (sakurai)
2011-09-08 21:01:59
はーーい、この映画は、できた!という話を聞いた時から、もう首をながーーーくして待ってたんですよ。
なのに、地震やらなにやらで、どんどんと遅くなって!!
やっとです!苦節二年。
前の映画から数えると、一体何年?みたいな。
でも、前作はあれで完結したと思っていたンで、見る方もちょっと戸惑いでした。
大佐も、娘も、スターリンの粛清で死んだはずなので。おまけにドミトリの最後も、未来はない。。。的な終わり方だったんですよ。
なかなか素敵な映画ですよ。
機会がありましたら、ぜひ見てみてください。
オレグさまにいちころでやんす。
返信する
やっぱり? (latifa)
2012-03-06 10:48:32
sakuraiさん、こんにちは!
うわー★
愛情たっぷりな、思い入れのあるレビューですね!!
オレグさん、体格が丸くなっていたものの、お顔はそれほど変化無かったですよね。
ちょっと困った顔、っていうのが、オレグさんから一番イメージしやすい・・(^^ゞ

>マルーシャ役の女優さんが変わっていた
やっぱりそうなんだ?
ちゃんと確かめなかったのですが、やっぱりそうだったんだ・・・。
ですよねーそこは変えちゃイカンですよ!
凄く重要な役どころなのに。
返信する
>latifaさま (sakurai)
2012-03-07 20:39:53
いやいやいや、お恥ずかしい。
オレグさまは、私の理性をなくす役者さんなんで、どうしようもないっす。
ははは。
うんうん、ちょっと太ったみたいですが、それも貫録かなあっと。
やっぱあの目がいいです。やさしかったり、突き刺すようだったり、ものすごく冷たかったり、寂しそうだったり。
次もぜひともよろしく!です。

見直して確認しました。違ってました、はい。
そこだけ違ってたもんで、ちょっと浮いてた感じもありましたね。
10何年も経ったんで、いろいろあると思いますが、こういう続編は難しいですね。
返信する

コメントを投稿