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ジャスミンの花開く

2006年08月31日 | さ行 外国映画
いまや大女優となったチャン・ツィイーが20世紀を生きた中国の女性、【茉】・【莉】・【花】三代を体当たりで演じる。

1930年代、上海の写真館の娘・茉は映画スターを夢見る少女。スカウトされ、天にも昇る心地の彼女を、戦争の始まりと妊娠が奈落に突き落とす。夢破れて家に帰り、女の子を産む。生きていく気概をなくした茉。母の恋人に誘惑されても、抵抗しない。その姿を見た母は自ら命を絶ってしまう。母の遺言で、娘に莉と名づける。

1950年代、望まぬ妊娠によって自分の人生が狂わされた、という思いにとらわれている茉は、娘が付き合う男が気にいらない。時は社会主義全盛の時代。財産で暮らす茉のようなプチブルは糾弾されるべき存在だ。誇り高き労働者の偉と駆け落ち同然で結婚した莉は、何とか貧しい生活に慣れようとするが、どうしても出来ない。母のもとに帰るが、自分は不妊症である事を告げられる。養子を迎え入れるが、段々と精神に異常をきたしてくる。そして悲劇が・・。

1980年代、莉の養子となった花は祖母の茉に育てられる。年頃となった花は杜という青年に恋し、祖母に内緒で結婚してしまう。学業半ばの杜は、花を置いて留学するが、心も離れてしまう。結婚を解消しようとするが、既に妊娠していた花は一人で子供を産む決心をする。

大雑把に3人の女性の人生を綴ったものだが、「初恋のきた道」の撮影監督だったホウ・ヨンの初監督作品。ということで今中国も映画界は世代交代、過渡期のようである。そして評価はどうかというと、コレがなかなか稚拙だ。中国はバブル状態のようだが、映画界もそうなのかもしれない。

チャン・ツイィーの魅力満載といってしまえばそうなのだ、すべてがチャンにおんぶに抱っこと言う気がしないでもない。人生に疲れ果て決意に満ちたときに表情など、うん、凄い女優になったという気にさせられた。2004年の映画なので、このときチャンは25だが、流石に少女時代の純粋無垢な姿はちときつい。

時代の色がそれぞれ個性的に表されているが、なんといっても目を見張るのは華やかな30年代。チャイナ・ドレスのきらびやかさは目の保養。こういうチャイナ・ドレスを見事に着こなすのは女優の醍醐味ではないかと思えるほどだ。

監督もしてしまう才女ジョアン・チェンとのやり取りが多くを占めるが、このジョアン・チェンがいい。陰と陽の対比とでもいうならば、この陰のおかげで陽が映える。そしてチアン・ウェン。こう書くとだれ?と思ってしまうが姜文と書くと、おぉ、あの人!と思い浮かべてもらえると思う。うまい。今中国の役者の演技派と言ったらこの人でしょう。画面から伝わるオーラが違う。

決して登場人物は多くなく、狭い世界でこじんまりと描いたが、話は壮大だ。なんせ三代にわたる長い激動の人生なのだから。だとしたらもっと壮大に、もっともっと激動でいいと思う。結局は男に翻弄され、妊娠がトラウマになってしまった女性の生き方に見えた。そんときのあんたの選択がどう考えても甘かったんでしょ、と同性としては言いたくなる。

おまけに女性の年代に合わせたせいか、年代がどうにも納得行かない。戦争がはじまった頃に生まれた莉だったが、その18年後にいきなり文革はないでしょう。中国で戦局が厳しくなっていったのが30年代後半、戦争が終わって、国民党との争いが激しい時代が40年代後半。毛沢東の大躍進運動が50年代後半で、文革は60年代後半である。文革の嵐がすぎさるのが70年代後半で、77年には小平が政権を握っている。この流れを考えながら見ていると、どうにもつじつまが合わない。

「玲玲の電影日記」の時も感じたが、つじつまあわせるのは基本でしょう。時代を追って、年代を表現しているのなら、見ている人に疑問をもたせないのがまず基本でしょう。新興の中国映画を見ると、野心は感じるが、あらも見えてしようがない。その辺の基礎をきちんとしてもらいたいもん。と言うことで合格点にはちょっと足りなかったかな・・・。

『ジャスミンの花開く』
監督 ホウ・ヨン
出演 チャン・ツィイー ジョアン・チェン チアン・ウェン リィウ・イェ ルー・イー


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4 コメント

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こちらにも・・・ (ミチ)
2006-08-31 17:23:11
中国の近代史が好きなのでこの映画はとても期待していたのですが、「歴史に翻弄される」というよりは「自分の甘い選択」によって不幸な方へいている女性だったのでちょっとガッカリでした。

モーの時代は視覚的に華やかだったけれど、チャン・ツィイーのぶりっ子がちょっと気になったり(笑)。
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最初の (sakurai)
2006-08-31 22:45:44
前髪おろした顔にはちょっと・・・・無理を感じてしまいました。

もっと壮大な物語を期待していたのですが、やけにせせこましい物語でした。

不思議なのは、3代目のころまで家賃収入で暮らすのは無理だと思うですが、どうやって生計立ててるんだろうとか、時代の細かい所のつじつまが合わなかったり。見てるほうのストレスがたまってしまいました。
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あぁ~ (miyu)
2008-11-10 19:52:51
そうなんですか。
年代的にはズレがあるのですね~(;・∀・)
全然詳しくないモンで、
観ている間はそんなことに気付かずに見ていました。
まぁ何とかその時代を描きたかったのでしょうが、
ムチャクチャなのはいけませんね。
って気付かなかったあたしもムチャクチャですけど。
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>miyuさま (sakurai)
2008-11-10 20:25:37
中国の近代史もかなり勉強したので、年代的に無理があったりすると、思考の邪魔になって困りますです。
無理無理、一人の役者を使わなくてもいいかとも思ったんですが、よくあるパターンですよねえ。
そんなに無理に演じさせなくてもいいと思うのですが。
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