迷宮映画館

開店休業状態になっており、誠にすいません。

セプテンバー11

2003年07月31日 | さ行 外国映画
世界に衝撃が走り、いまだその後を引いているというよりも、拭い去ろうと思っても拭い去れない、人類が忘れてはいけないものの一つが、『11’09”01』の出来事だ。

あの日の夜、BSで映画を見、そのまま、他のチャンネルには変えずに寝てしまった。おかげで、睡眠不足にはならなかったのだが、随分マヌケな翌朝だった。時間差でのショックだったが、あの衝撃は、近年そうないショックな出来事だった。このまま、世界はどうなるのだろう。この後、どんな報復があるのか、あそこで一瞬にうちにどれだけ多くの悲劇が起こったのか。何も、思いも浮かばなかった人はいないはず。その衝撃を世界のクリエーターたちがそれぞれの視点で、どんな映像にしようとしたのかを、オムニバス形式にしたのが、本作品。11分9秒1フレームという制約のなか、11人の映像作家が集結した。こういう映画は滅多に見れない。

導入はイランに住んでいるアフガン難民の生活。300万人の難民が住んでいる。NYなどという、どこにあるのかも知らないところの大事件よりも、子供達にとっては日々の、この生活の方がずっと大事だ。いろんな描き方があったが、実はこれに一番共感した。先生が一所懸命、凄い事件なのよ、多くの人が犠牲になったのよ、と口を酸っぱくしても、人間なんて、そんなものかもしれない。ここにものすごい真実を見た。

他には、「愛と哀しみのボレロ」の名監督、クロード・ルルーシュの静かな、静かな激しい映画。久々に彼の作品を見たが、うまい。さらに、ボスニア、イスラエル、チリ、ベイルート、NYの悲劇に負けず劣らずの悲劇をからみ合わせていく。圧倒的な表現力で、その才能を見せ付けたのはケン・ローチ、ショーン・ペン、そしてイニャリトゥの作品だったと思う。

とりは我らが今村昌平。俳優陣は超豪華。でもきっと、出演料などは関係なかったと思う。一番興味深かったのが、今平のだった。一体どんな短編を撮るのかとわくわくだった。その期待に十分答えてくれた。

で、私的に一番感銘を受けたのはインドのミラ・ナイールの作品。さすが、ミラ。マルチカルチュアのインド人の中にあって、どうしても相容れないのがパキスタン人との確執だろう。しかし、その悲しみにあえて挑み、普遍的な母の愛を描いた。事実が元になっているという説得力もあるが、真っ直ぐに、悲しみと、憤怒と矛盾を描いてた。

あの衝撃から、もうすぐ2年、経とうとしている。その後の世界の激動は、また目を見張るものがあった。世界中のすべてのことに影響を与えてしまった。特に映画界に与えた影響は大きかった。真っ直ぐにものも言えない風潮もあった。しかし、こういった映画を見る限り、人間は捨てたもんではないとの思いを改めて感じる。悲劇は悲劇だ。でも人間にはその悲劇を乗り越える力がある。

「セプテンバー11」

原題「11’09”01」 
監督 サミラ・マフマルバフ クロード・ルルーシュ ユーセフ・シャヒーン ダニス・ダノヴィッチ イドリッサ・ウエドラオゴ ケン・ローチ アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ アモス・ギタイ ミラ・ナイール ショーン・ペン 今村 昌平 2002年 フランス作品
総括プロデューサー ジャック・ペラン ニコラ・モベルネイ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿