迷宮映画館

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海洋天堂

2011年08月31日 | か行 外国映画
リンチェイが、脚本にほれ込み、ノーギャラでもどうしても自分が出たい!!と言ったとか。とにかく真っすぐで、真面目で、この世のやさしさと、厳しさをまざまざと見せてくれた一本。どれが撮ったのかは知らなかったが、最初の映像から、印象的なショット。全編、水を効果的につかい、ガラスの向こう側から独特な映像。これは一体だれが撮ったんだ??と思っていたら、クリストファー・ドイルだった!なる。

エンドの歌も、しっかり見つけましたよ!周杰倫の名前!!おまけに音楽は久石譲・・・。名にしおう人たちが集まる力のあった本と、リンチェイの思いの深さを感じた次第です。

自閉症の息子・・・。もう子供とは言えない年齢になってしまうと、その道は本当に難しい。子供の時は、きちんとした施設ももあり、保護も容易に受けられるが、年齢は重ね、大人になって行く。そして、親は摂理から言っても先に死んでしまう。

自分が親になった時、ふにゃふにゃした、決して自分の力では生きていけないであろう赤ん坊をこの手に抱いて、強く強く思ったのは、私はとりあえず死ねない・・・。まずはこの子を守り、きちんと育て、なんとか自分の足で歩けるようになるまで、私は死んではならない・・・・。そう思った。

己の力だけで生きて行くには、非常に難しい自閉症。自閉症と言っても様々な種類があるが、このターフーによく似た感じの子供をとっても身近に知っている。言葉はオウム返し。自分の思いをうまく伝えることが出来ず、伝わらないと癇癪を起こす。しかし、根気よく言葉を教え、丁寧に接すると、真面目にきっちりと覚える。そして、絵や彫刻に抜群の才能を表している。うまく表現できない自分の思いを、作品に表しているよう見える。

ターフーは自分の思いを伝えられない。自分が自分らしくあって、自分を思いっきり表現できるのは泳いでるときだ。水族館の魚たちと一緒に悠々と泳いでるターフーの、なんと自由なこと。

しかし、自分で着替えることはできない。やってはいけないと言われていることを何度も何度も繰り返す。それが自閉症の特徴なのであるからしようがない。自分に絶対のこだわりを持っている。社会的には受け入れてはもらえない。だからターフーのことを、守護天使のように守ってきた父親がいた。

しかし、その父親は末期のがんを患っていることが分かる。思い余って息子と海に身を投げるのが冒頭のシーンだ。あたしゃてっきり、それが最後で、回想の映画なのか?!と思ってしまったのだが、それじゃあ、やり切れなさすぎる。なんとかして、ターフーを自立していけるように父親が根気よく、丁寧に、愛情を持って、思いを込めて、ターフーに教える。その様子は、とってもコミカルで、苦笑もんなのだが、その影に見える寂しさがびんびんと伝わってくる。

いくつもの施設を断られ、まるで行く先が見えなくなってしまったとき、救いの手が差し伸べられる。世の中、捨てたもんじゃない。身を引き裂かれるような寂しい思いとともに、安心してターフーを施設に預けて部屋に帰った父親のやることが泣ける。何度注意してもTVの上にぬいぐるみを置くターフー。父も、TVの上にちょいと置いてみる。全身見えてるのに、かくれんぼをしているつもりのターフーのまねをしてみる父。。。この辺で涙腺決壊。このリンチェイパパが泣かせる。

薄皮をはがすように・・・と言ういい方があるが、その逆、一枚一枚、薄皮を重ねるようにターフーに生きる力をつけさせようとする父。自分と言う存在がなくなっても、ちゃんとお前を見守っていると伝えるために身を削る父。親なんてそんなもんです。子供行く末をいつまでも案じ、でもいつまでもそうやってるわけにもいかない。子供を信じ、背中を見せる。親です。

知り合いの自閉症の子は、中3です。義務教育ももう少し。彼も大人になっていかなければなりません。今までもいろいろな保護を受け、そして手荒い洗礼も受けてきてるようです。子供の社会ってのは、マジに残酷ですから。でも、彼が大人になった時、やさしく受け入れられる社会を、われわれは作っているのだろうか。。。。大きく頷けない自分が情けないです。

ターフーがうまかった・・・。いや、うまいなどと言うと語弊がありますが、無垢な表情から、戸惑いの顔、ちょっと恋心が芽生えたあたりや、決意の顔。感情をむき出しにできないながら、びんびんと伝わってくる。いや、力作をみました。

◎◎◎◎

「海洋天堂」

監督 シュエ・シャオルー
出演 ジェット・リー ウェン・ジャン グイ・ルンメイ ジュー・ユアンユアン ドン・ヨン イェン・ミンチュー カオ・ユアンユアン ヨン・メイ チェン・ルイ


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6 コメント

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Unknown (KLY)
2011-09-01 00:05:12
公開してくれて本当に良かった作品でした。
仰るように薄皮を重ねるように少しづつ少しづつ、でも父ちゃんだって人間だから思わず癇癪を爆発させちゃうこともある。
怒ったって仕方ない、だって大福は悪いことしたと思ってないのだし。
正に親でなきゃ出来ないですよね、これだけの事。亀の格好で泳ぐ父ちゃんにもう涙ボロボロでした。
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>KLYさま (sakurai)
2011-09-02 08:43:41
ありがとうございます。
KLYさんの推してる映画ですから、見ねば!!と思っておりました。
とっても良かったです。
あの父ちゃんの気持ちはわかります。立派すぎるかも知れませんが、あれが親ですよ。
最近、親やってないなあ~と反省。
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やっと観れました (mariyon)
2011-10-06 10:56:26
自分が守るべきと思っている人間を置いて行く辛さ…。
お子さんの介護をされている方のことを、いろいろ考えてしまって。
映画は後見人もなんとかみつかったけど、現実問題で考えると、老人介護よりさらに大変な問題があります。
でも、あの水族館のシーンがとてもきれいで、そんなことを突っ込む気にならない作品になっていました。
カンフー無しのりんちぇいも良かったです。
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>mariyonさま (sakurai)
2011-10-06 14:27:35
とりあえず、子供産んだとき、こいつらが大きくなるまでは死ねないなあ~と一番最初に思いましたもん。
身近にも結構いるんで、なんだかいろいろと考えながら見てました。
深刻ですよね。
またリンチェイのカブが上がってしまいましたよ。
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ハッピーバースディ♪ (mezzotint)
2011-10-12 13:44:56
sakuraiさま
明日ですね。一足早いですが、、、。
50歳を迎えられるとい事で。
おめでとうございます
私はもう随分前に50歳(笑)
特に何も変わらず、、。まあこんなもんです。

さて海洋天堂、ジェット・リ―の転身ぶりにも
驚きましたが、やはりターフ―を演じた若い
俳優さん、見事に演じきっておられ驚きでした。自閉症の特徴もなかなかリアルで。

11年ほど施設で仕事をして来ました。
自閉症の方、様々でした。比率的にはやはり
男性の方が多いですね。パニックを起こされるとなかなか大変な人も。
そんなことを思い出しながらの鑑賞。
まさに親亡き後の子供たちのこと、いまだに
気になり次第です。でも現在は支援も充実しているので、以前より安心だと思います。
長々とすみません。40代最後の今日を
有意義にお過ごし下さい
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>mezzotintさま (sakurai)
2011-10-13 14:24:24
ありがたいお言葉、痛み入ります。
やっぱり体力の衰えを如実に感じます。自分では動けるつもりなのに、体がついてこない。
おかげでひどい目に遭いましたが、その辺の自覚をせえよ!という神の声と思ってます。

施設で見てこられたんなら、いろんなことを感じられたでしょうね。自分で自分をうまくコントロールできないもどかしさが、よーく伝わりました。
その憤りをぶつけることもうまく行かないだろうし、難しいですねえ。

先日、ダウン症の書道家、金沢翔子展を見てきましたが、母親が自分がいなくなっても一人で生きていけるようにと、書道を教えこんだ!ということでした。
みながみな技術を身につけることが出来るでもなく、いろいろと考えさせられます。
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