さいかち亭雑記

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水道と、名著『日本のリアル』(PHP新書)

2019年02月15日 | 地域活性化のために
 水道法が改正されてから、しばらくたった。 ※ 本文は、翌日に加筆訂正した。

水道に関しては、名著『日本のリアル』(PHP新書)のなかで養老孟司と対談している畠山重篤のような人の意見も私は聞いてみたい。この対談で畠山氏が示唆していることは、ダムと水道をセットにする考え方の変更である。

この本には、衝撃的な記述があった。

「実は、昨年、とんでもないものを見ました。世界遺産の白神山地に行ったのですが、あそこの岩木川をずっと遡っていくと、だんだんブナが多くなって、ああ、きれいだなと思ってさらに進んでいくと、その奥の方で津軽ダムという巨大なダムをつくっているんです。白神山地の喉仏にあたるような場所にです。

 白神山地は世界遺産として守ると言いつつ、その奥ではダムをつくって森の養分を止めてしまう。
この国はそういう国だったのかと思いました。」(132ページ)

 植物は窒素やリンを取り込むために、微量の鉄分を必要としている。山の枯葉は、その腐食する過程でフルボ酸を生み、それが鉄イオンと結びついてフルボ酸鉄となった時に植物が鉄を吸収しやすくなる。それをダムでせきとめてしまうと、そこから下に山の栄養分がいかなくなる。これは海も同じで、ダムが川にあると、海に山の栄養分がいかなくなる。

 上流のダムは、山を栄養不足にし、海も栄養不足にする。小田原では1954 年まで年間60 万匹もとれたブリが、いまは年間に600匹しかとれない。「なぜかというと、丹沢の川から相模湾に流れ込む三本の川がすべてダムで止められてしまったからです。」(127ページ)

 根底的な発想の転換と、都市設計とインフラについての斬新なアイデア、それがもとめられている。水田の活用や、ため池の活用、ビルや家庭における湛水の仕組みの変更その他、やるべきことは山ほどある。

 目標としては全国的に作りっぱなしのダムを撤去したらいいのではないかと思うが、それにかわる方法を編み出して、山の栄養がせきとめられないような水の動かし方を研究して実践したらいいと思う。

 これは素人の思いつきだが、ダム底の土をスクリューで土ごとかき混ぜて粉砕しつつ、汲み上げて下流に流す装置を作れば、この弊害を少なくできるだろう。電力は直下の水力発電がある。または、川からダムへの入水口の水を一定割合、最初から川に誘導しておくとか、俎上する魚用に別途のパイプを設けるとかして、死滅状態のダムを再生するといったプロジェクトを導入すれば、一定割合で地域に恒久的にお金が回ることになり、そのお金は一定の需要を喚起するから、もともとお金が落ちて来ない地域にも周り回っていくはずだ。

 とにかくこれは沿岸漁業が再生するから、一石二鳥である。そうしてたとえば神奈川では相模湾に魚をもどせば、小田原の漁業も復活するということになる。

休耕田に一年中水を張るのもわるくない。養老氏の対談集は、無限の示唆に富んでいる。 


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