さいかち亭雑記

短歌を中心に文芸、その他

年末所感

2015年12月29日 | 現代短歌 文学 文化
 動きすぎてはいけない。むしろ積極的にリゾームを切断すべし。(『動きすぎてはいけない: ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』千葉 雅也)。

 色々なモノゴト同士をやたらとつなぐことよりも、過剰な接続を切断することの方が、大事なことであると、最新の哲学思想の本をめくってみたら書かれていた。全世界にインターネットの普及した段階での人類全体への警告である。スマホによる超絶的な加速化(私は使っていないが)に多くの人が慣れてしまった。そこで敢えて「切断せよ」、というのは、それなりに勇気の要ることである。隠者の志、というものが求められている。ここで思い出した言葉があった。それは、
 
  孤独とは守っているべきものではなく、むしろ常に人前にさらしているべきものだ。
                            小林秀雄「道徳について」

というものである。
 人前にさらされたら「孤独」ではないではないか、というのは、子供の反論である。インターネットという場所は、そういう子供の反論に力を与えてしまうところがある。念のため、私は<子供>をばかにしていない。ここで言っているのは、「何でも質問していい、何を聞いても許される」という資格が、社会的に無条件に与えられている立場にある、という意味である。一対一で向かい合っていたら、これを聞いてはまずいのではないか、とか、こんなことを言ったら怒られるのではないだろうか、といった相手への配慮が当然生まれる。インターネットの場においては、ときどきそういう常識が通用しない。メールのやりとりにおいても、そういうことが起こる場合があって、私はそれでだいぶ痛い思いをしたことがある。
 孤独とは守っているべきものではなく、むしろ常に人前にさらしているべきものだ。そのような「孤独」を行使できる人が、これからの時代の真の表現者であると私は思う。

※2018512付けで再度アップすることにした。
 
  


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