時のうねりのはざまにて

歴史小説もどきを書いてみます。作品と解説の二部構成で行こうと思います。

蒲殿春秋(四百四十三)

2009-12-26 05:19:29 | 蒲殿春秋
その頃、丹波国に入った源九郎義経と安田義定、そして多田行綱に率いられた軍勢は
土地の案内のものを連れて三草山へと向かっていた。

休息の間義経に土肥実平は耳打ちをする。
「伯〇(老+日 ほうき)国は今大変なことになっているようですな。」
実平はここでにやりとする。
「さよう、都の方々から様々な知らせがいっているようですからな。
今回の御子にお味方された者達は院の覚えめでたからんと張り切っておられるようだ。」
義経が中原親能に命じて西国各所に文を発っさせた。
在地で平家に反抗したものの名を院に奏上するそしてそのお働きは院に奏上されるであろう、とその文には記されている。
ことに伯〇(老+日 ほうき)国で挙兵した院の御子と称する者の活動は活発である。その勢力はいまや伯〇(老+日 ほうき)国半分を押さえ隣国の美作国まで影響を及ぼそうとしている。

院の後ろ盾があれば安徳天皇を奉ずる平家に反旗を翻しても謀反人にはならない。
在地の豪族たちにもそのような計算もある。
反乱は伯〇(老+日 ほうき)国だけではなく西国各所に起きている。
平家に従軍している西国の豪族達も自らの本領のことが気がかりで帰国することを願っているものが後をたたない状態になるのことがたやすく予想される。事実福原の兵は日に日にその数を減らしているという話も聞いた。

在地豪族たちの争いは平家がいる播磨国や丹波国でもあった。
その国における平家の勢力伸張によって平家に近いものたちから圧迫されていた豪族もある。
その豪族達が今回の鎌倉勢の進軍の案内役を買っている。

休息も終わり義経たちは三草山を目指す。

その行軍は夜を徹して行なわれた。

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