焼岳2455mは、北アルプスの槍ヶ岳から連なる稜線の南端に位置し、唯一の活火山。穂高連峰をバックにした上高地にあって、茶色いトロイデ型の焼岳は一種独特の存在感がある。深田久弥は、「群雄の大伽藍の衛兵のようだが、なかなかのくせもので表面は穏和を装いながら次に打つ手を考えているかもしれない」と述べている。大正4年6月の噴火で、梓川をせき止め、それがのちに大正池と命名されたことはあまりにも有名である。この時期 梓川の流れと黄金色に色づく落葉松林を前景にして上高地から仰ぐ焼岳は、ひときわ美しい。
槍ヶ岳から北穂高岳へは、大喰岳3101m、中岳3084m、南岳3032mなど3000m以上の高峰が南北にいくつも連なる。この一帯は、かつて東西両斜面に氷河が発達した地域であり、特に東斜面は氷河の発達が著しく、現在は河川の源流部に氷河が削った巨大なカールが数多く分布している。東鎌尾根や横尾尾根など長い尾根と、槍沢や横尾本谷などの渓谷が複雑に構成されており、この時期これらの氷河地形と紅葉が創りだす風景美は圧巻である。
奥穂高岳より涸沢岳、北穂高岳へと続く穂高連峰の主稜線を望む。奥穂高岳と涸沢岳の鞍部、白出(しろだし)のコルへは、ザイテングラード(ドイツ語:Seitengrat)と呼ばれる支稜が、北穂高岳へは、南稜とゴジラの背と呼ばれる東稜が伸びている。穂高には、スケールといい、険しさといい、人間の想像を超える造形美がある。
「涸沢の紅葉を見ずして 穂高を語ることなかれ」 今、穂高連峰は紅葉のピークを迎えている。穂高連峰は、日本列島の中央部に連なる飛騨山脈、通称北アルプスと呼ばれる山岳エリアの南部に位置し、主峰奥穂高岳(標高3190m)をはじめとして、涸沢岳(3,110m)、北穂高岳(3,106m)、前穂高岳(3,090m)、西穂高岳(2,909m)などからなる。 難易度の高い縦走路、登攀ルートを数多く抱え、その迫力ある急峻な岩稜、稜線からの大パノラマ、また涸沢カールからのヨーロッパを思わせる壮大な眺めなどが多くの登山者を魅了する。
トキと金山で有名な新潟県沖に浮かぶ佐渡島。沖縄本島に次ぐ大きな島で、大佐渡山地(北部)、小佐渡山地(南部)そして国仲平野(中央部)に3分される。トキが自然界から姿を消して四半世紀が経つ。トキは早苗の今頃、小佐渡の田んぼでタニシを啄んでいたという。茜色の空に朱鷺色の翼を羽ばたかせるトキの飛翔を想像した。
北アルプス南部に聳える槍ヶ岳(3,190m)は、その天を突くような山容から、「日本のマッターホルン」とも称され、北アルプスの象徴であり、また登山者の垂涎の的でもある。松本盆地上空から、常念山脈(蝶ヶ岳、常念岳、大天井岳)の奥に、その堂々たる美しい鋭峰を遥かに眺めることができた。
安曇野(あづみの)は、北アルプスの山々から湧き出た清流(梓川、黒沢川、烏川、中房川)によってできた扇状地である。扇状地の扇端部には、「安曇野わさび田湧水群」があり日本一を誇るわさび畑が広がる。この時期、一面田んぼの水に残雪の山々を映し出す美しさは格別だ。
富山方面から見て、立山の後ろに位置するということから名づけられた「後(うしろ)立山連峰」。鹿島槍ヶ岳・爺ヶ岳と剣岳・立山が黒部の谷を挟んで対峙している。麓の湖は、糸魚川静岡構造線上の断層湖群、青木湖、中綱湖、木崎湖のいわゆる「仁科三湖」である。湖畔の小熊山からは形の良い鹿島槍ヶ岳の姿が一望できる。
北アルプス北部に位置する白馬(しろうま)岳(2,932m)、杓子岳(2,812m)、白馬鑓ヶ岳(2,903m)を白馬三山という。幅100m、標高差600m、真夏でも万年雪が延々と続く「白馬大雪渓」。大雪渓の先は、「お花畑」が広がり、雪解けを待つようにして、100種以上の高山植物の花が咲き競う。
立山連峰に降り積もった雪が溶けて、5つの大河(常願寺川、神通川、黒部川、片貝川、早月川)となった流れは、長い年月をかけて扇状地を形成し、富山平野をつくってきた。この清冽で、豊富な水は、大地と海を潤し、富山に豊かな幸をもたらしている。5月の中旬、平野一面に広がる水田には、水が入り、鏡のように輝いていた。
上高地は北アルプス南部の標高1,500m付近、穂高連峰、霞沢岳や焼岳などに囲まれた梓川流域にある細長い堆積平野で、その語源は「神降地」とも「神河内」とも言われる。雄大な山岳風景と梓川の清流が織りなす景色はまさに神々しいほどの美しさだ。5月中旬、ケショウヤナギの若葉やニリンソウなどの花々が見頃で、今、一年で最も瑞々しい季節を迎えている。
急角度で立ち上がる甲斐駒ケ岳(2,967m)、鳳凰三山などの南アルプス北端の山々。その奥には仙丈ヶ岳(3,033m)、富士に次いで国内第二位の海抜を誇る北岳(3,192m)、そして塩見岳、荒川岳、赤石岳と三千メートル級の名峰が圧倒的なボリュームで連なる。地上からは決して見ることができない絶景である。
3,000m級の独立峰が長野県・岐阜県に跨って裾野を広げる。白装束に身をかためた信者が「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」と声を響かせ、杖をついて登る姿をみることができる。最高峰の剣ヶ峰(3,067m)をはじめ、いくつもの外輪山や火口湖が頂上付近に集まる。
乗鞍岳は北アルプスの南部、長野県と岐阜県にまたがる、剣ヶ峰(3,026m)を主峰とする山々の総称で、朝日岳、麻利支天岳、富士見岳など23の山々が連なる。コニーデ型の優美な稜線を持つ火山で、山名は、その姿が馬の鞍に似ていることから名付けられた。
黒姫山(2,053m)を手前にして、「岩戸伝説」の舞台として知られる戸隠連峰が見える。高妻山(2,353m)、八方睨(1,911m)、戸隠山(1,904m)などが険しく聳え立つ山々には神々が住むと考えられ平安の昔から山岳信仰の修行の場として歴史を刻んできた。