ROSE POSYのハンドクラフト・ブログ

”手仕事”の楽しさをお伝えできればと思います。ROSE POSYオリジナル作品もどうぞお楽しみ下さい。

ジュエリーCADの普及でおもうこと (ちょっとカタイかも)

2009年11月21日 | ジュエリーよもやま話

ジュエリーCADを始める人が急速に増えてきたようですね。ラヴァーグの生徒さんもどんどん増えているらしく、パソコンフロアは盛況のようです。

ジュエリーCADによる製品作りでは、ソフトウエアの操作スキルと宝飾の伝統工法のどちらの知識 も持ってないと、製品として完成しない、という点では、これからジュエリー制作に携わる方々は、以前よりも学ばなければならないことが沢山増えたのではないでしょう か。

造型機もどんどん改良され、高性能なものが登場しているようです。
ジュエリーCADの分野は、ソフトウエアとハードウエア、それぞれがさらに改良されていくことで、まだまだ進化していくことでしょう。

ジュエリー製造の技術は、『工芸』(craft)から、『工学』(engineering)、へ変わりつつある、そんな気がしています。

   

私がジュエリーCADを習い始めた2年前の段階では、ジュエリーCADについての情報 がほとんどなく、ブログを書く人も少ない状況でした。最近になって、利用者が増えたこともあって、ようやくいろいろな情報が入ってくるようになってきたのかなと思います。

同じくジュエリーCADを駆使する人にも、いろいろいて、オープンな人とクローズドな人がいます。情報を抱え込んで外に出さないで自分だけが知っている状態を保つことが自分の付加価値を高めると思っている人もいますし、どんどん情報を外に出すことで皆に注目され、入門者を導きリーダーシップを取っていく人もいます。ジュエリーCADという分野の技術全体のレベルを底上げしてくのはもちろん後者の人の存在に違いありません。

   

宝 飾業界に新しく登場した制作技術である、ジュエリーCADは、IT(Information Technology:情報技術)の一種です。ITそのものは、産業活動を支援するための技術ですので、特定の人しか出来ないようなものであってはならず、 誰でも習得できるよう方法が開示され、ソフトウエア開発メーカーから多くの情報が提供、マニュアル化されています。ソフトウエアの世界では、掲示板やWikiなどで、ユーザ同士のノウハウ情報交換も盛んに行われています。ジュエリーCADはまだまだその粋に達していませんが、いずれはそうなるでしょう。そこが、従来の伝統的な技術との大きな違いです。

伝統的な技術とは、師匠(親方)と弟子のような関係で口づてに伝承され、簡単な技から徐々に高度な技へと順序だって教えられ、長期間の修業によって習得できるもので、短期間で手っ取り早く出来る方法など絶対に教えてくれません。また、教えるといっても、学ぶ、とは”まね”ぶ、ことであり、師の技を黙ってまねて、技術を盗み取りながら体得するものでした。そうやすやすと教えないのは、”自分も苦労したから、お前も苦労して学べ”、という考え方があるからではないでしょうか。

ところが、ITの世界では、 情報はオープンであることが基本ですので、利用者同士がオープンに情報交換をすることによって、ノウハウのシェア、新しい技術の普及と改善、そしてさらなる発展を目指します。ある経済評論家の方によると、IT業界が短期間で急激な成長を遂げ、いまも発展しつづけられる理由は、”情報のシェア”という文化が根底にあるからだと言っておられました。ITを習得することが最終目的でなく、ITを使って何かを達成することが目的ですから、IT利用者の間には、”しなくてすむ苦労はしないでおこう”、という共通の理解があるのです。

さて、アメリカではインターネットが普及してから、宝飾制作技術に関する情報がかなりオープンになり、データベース化されて誰でも参考にすることができます。また、 わからないことがあると質問できる公開掲示板などもあります。中立的な団体がこうした情報サイトを運営しており、秩序と品性が保たれているので、”2ちゃんねる”のように、玄人がよってたかって素人を叩いて追い出すようなことはしません。また、先進的な職人さんたちは、”YouTube”を使って、自分が制作する様子や実演デモをさかんに配信しています。私もそれらの情報に助けられて、多くを学んでいます。

私自身も日本語サイトだけを対象にした検索エンジンで調べてわからないことは、ほとんどgoogle.comで検索して世界から情報を探しています。英語を読むのは苦痛ですが、日本語で情報がないのですから仕方がありません。

   

まるで評論家気取りで、至極、当たり前なことを、えらくこむづかしく四の五の書いてしまいましたが、要するに私自身も、『みんなでオープンに情報を共有することは、よいことだ!』という立場をとっていると言いたかっただけでした。

私と同じく、ジュエリーCADを勉強中の方々のために、素人の視点からですが、私が見聞きした情報を積極的に出していこうと考えています。ただし、この分野は、ともするとテッキーで自己満足的な内容になりがちなので、それは極力避けて、わかりやすい文章にすることを心がけたいですし、もちろん、業界のプロの方の営業妨害や不利益にならないよう配慮を配らなければならないとも思っています。

といっても、わたしは宝飾業界に身を置いていないため、どういう情報を出すと、どんな不利益になるのかが、よくわかりません。もし、気になるエントリーがありましたら、忌憚ないご意見をお願いします。

     


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3 コメント

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工芸が好き (はりい)
2009-11-22 00:18:51
>そうやすやすと教えないのは、”自分も苦労したから、お前も苦労して学べ”、という考え方があるからではないでしょうか。

というより、「教えようと思っても教えることができない」のであって、これを裏返すと引用のような言い方になるのではないかと思います。「教える事ができない」のは「自分でも自分がどうやってそれが出来るのか説明出来ない。なので、お前がどうやったら出来るのかも説明できない」ので「俺のやるとこ見て自分で工夫してね」ということであり、それが「技は盗むもの」ということと理解しています。
 でも、私はそういう「説明しがたい技」を見本を見ながら工夫して出来る様になっていく行程がとても好きです。情報共有には賛成ですが。
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わかります・・・ (ROSE POSY)
2009-11-22 01:03:56
はりぃさん、こんにちわ!
実は、私も経験上わかります!言葉でうまく説明できないから見て覚えてね、っていう技がありますよね。

彫りや留めのように指先の感覚で覚えるという、言葉にできないこともあります。もちろん、ムリなことは承知なのですが、それをできるだけ上手に言葉で伝え、技術を平均化、マニュアル化するのが宝飾学校の使命だと思うのですよね。熟練した職人さんが激減し、徒弟制が崩壊寸前の現在、学校卒業後に宝飾業界で即戦力のある人材を育成したいならなおさらだと思うのです。

いまなら動画がありますから、"見て覚えろ”もDVDや、ネットならYouTubeやFlashで何度でも繰り返し見ることができれば、マニュアル化の応用形かと思うのです。

未来のジュエリークリエータに幸あれ!

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多分 (はりい)
2009-11-22 11:29:37
そのへんは色々根本的だけど難しい問題ですよね。宝飾学校や教室は沢山あるけど、そこから巣立ったみんながそれで生きて行けるのかとか、そうじゃないから「教える側」に回った方が手っ取り早いとかさ。そんな状況だから「教育者」としてのプロ意識なんかあるわけない。ニュージーランドではスキーの教師は資格がいるのですが、その資格無しに友人なんかにこうやるんだとやって見せたりしているのをパトロールに見つかって捕まると法律で罰せられます。そこまで厳しくしなくても、教わる側がもっと消費者的な要求を出すべきでしょう。これだけ払っているんだからそれに見合ったサービスを提供せよ、と。私も教室に月謝を払っている訳ですが、1回幾らと計算して毎回それに見合う物を持ち帰っているかとなると、ほとんど無いのですが、まぁ、自分の制作のためのペースメーカー、コミュニティへの参加料と思っています。
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