津幡にて、秋眠暁を覚えず。

朝晩はずい分と涼しくなった今日この頃。
布団に入って眠るのが楽しみな季節になった。
春のまどろみもいいのだが、秋の清涼もまたいい。
「今日の一枚」は、散歩を終えて心地よい疲労感に包まれて眠る
「りくすけ」である。
きっと、アレコレと悩みや思慮を抱えずに眠りに就けば、
こんな風に安らかな寝顔になるのではないだろうか？

…しかし、これまでの道のりを考えてみれば、
彼もなかなか「不憫なヤツ」なのだ。

犬種名の由来は、アメリカと隣接したメキシコのチワワ州。
19世紀の半ばに、そのチワワ州からアメリカに渡った数頭の犬が、
現在の姿になった。
正確に言うなら、自然の摂理で進化したのではなく、
愛玩用として人為的に変化させられたのだ。
より小型さく、より愛らしく、人間の視点で人間が望む姿に造り替えられた。

おそらく世界中の犬が、似たような運命を辿ってきたのだろう。
アナグマの狩りに便利になるよう胴長短足のダックスフントが出来、
闘犬のために鼻が潰れ、頬の肉が厚いブルドッグが出来、
やはり闘いに強い犬を目指し複数の血をミックスした土佐犬が生まれ、
羊の番をさせるためにコリーやシェパードが出現した。

犬は人のパートナーだと言う。
それは間違いではないと思う。
だが、パートナーとして望んだ割合は人間の思いの方が強い。
自ら望んだ結果なのだから、犬達と付き合う僕たちには責任がある。
たとえ自分ではない他の誰かが行った品種改定だとしても、
実行したのは同じ人間なのだから。

「りくすけ」は、僕の望みよって津幡に来た。
彼は人間の都合で去勢手術を受けさせられ、
性愛の喜びを知らぬまま、次世代へのバトンを渡せないまま死ぬ運命にある。
当り前の事だが、僕には彼と最期まで連れ添うという覚悟が必要だ。

無邪気な寝顔を見つめ、改めて、そう思った。