花の公園・俳句 ing

日本は素晴しい花の国。美しい花々と公園、四季折々の風景を記録したいと思います。我流の俳句は06年3月12日からです。

墨染 の和歌の謎

2015年04月17日 11時19分39秒 | さくら    
白の一重・中輪のサクラ、墨染匂 スミゾメニオイ。
墨染には花弁の間にスキマがあるとされており(注①②)、この木の花びら
にはそれがまったくないので、何系の品種かよくわかりません。
      (茨城県結城市 日本花の会結城農場  2015年4月12日)

墨染というと京都市伏見区・墨染寺 (ぼくせんじ) のサクラが有名で、

    深草の 野辺の桜し 心あらば 今年ばかりは墨染に咲け
             『古今集』832 上野峯雄 (かむつけのみねお)

という和歌にちなむ桜です。詞書に 
「堀河太政大臣身まかりにける時 深草の山にをさめてける後に よみ
ける」 とあります。

また 京都新聞 「ふるさと昔語り」 2006年11月7日付には、
「上野峯雄が初代関白の藤原基経の死を悼んで歌を詠んだところ、桜が
墨染色に咲いたため、一帯は『墨染』と呼ばれるようになった、と伝わる。」
とあり、墨染寺の田中宏明住職(74)は、「咲いた当初、花が白い色で、
薄墨のように見える品種なんです。ソメイヨシノより開花が一週間ほど
遅く、時間と共にピンク色が増す」 という説明をしています。
私も2012年4月26日 「伝説の墨染め桜」 の記事で、藤原基経の死を悼ん
だ歌だと書いていました。
 
ところが今回あらためて墨染を検索すると、能楽 「墨染桜」 では、上野
峯雄が歌を詠んだのは藤原基経ではなく仁明天皇の死を悼んだもの、と
していることが分かりました。

調べてみると、藤原基経 (836-891) は1月13日に死去し、墓は宇治市
木幡の許波多神社にある宇治陵36号墓 (狐塚) とされています。
一方、仁明天皇 (810-850) は5月4日 (もちろん旧暦です。新暦なら6月
中旬頃) に崩御され京都市伏見区深草の深草陵に葬られました。仁明
天皇の (旧暦) 5月ではもう桜はすっかり終わっています。

葬られた場所が違う、と思いましたが、しかし京都通百科事典によると、
宇治陵36号墓は元は京都市伏見区の深草極楽寺跡の香神塚
で、藤原道長が改葬したといわれているそうです。それだとどちら
も深草ということになります。 

能楽はやはり創作でした。

なお墨染寺の桜は上記のようにだんだんとピンクに変わるそうで、
桜品種の 「墨染 スミゾメ」 と同じかどうか確信がありません。

また東金市貴船神社の墨染桜 (樹齢800年) は姥彼岸で、花は始め
桃紅色で、しだいに紅白色となるそうです。墨染匂との関係はなさ
そうです。

 (注① 「(墨染の) 花弁の間には隙間があり、輪郭がすっきりした白色
   になる。大島桜系ともされたりしており、別名墨染桜ともいわれる」 
                森 秀雄 「さくらさくらさくら」) 
 (注② 岐阜県図書館デジタルコレクション 「桜花図譜」 1921 三好学。
   花弁の間にスキマのある絵が載っている。)
 
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