今日の何と変化にとんだ一日だったことだろう。
朝9時ミデルト(Midelt)のキャンプサイトを出発して、30Kmほど北のゼイダ(Zeida)の村で朝食用のオレンジ4個を買った。4個で23DH(1ポンド70ペンス)これじゃロンドンよりも高い。この地方はまだ砂漠の気候でオレンジはトラックで運んでくるに違いない。
このゼイダの町から近道80Km西へ向かった。すると途中からみぞれ、そして本格的な雪になり、道にこそ積もらないが辺りはまったく冬景色に変わった。亭主はこの雪に閉じ込められなければいいがと心配したそうだが、私のほうは写真を撮るのに夢中。
途中相当大きな2村を通ったが、はじめの村は雪で埋もれていて、次の村では除雪車が待機していた。この踏切が降りたらここは通行止めになるとのこと。幸い無事に通り過ぎ、その村からは徐々に下り坂になって雪はあっという間に見えなくなってしまった。
マラケッシュへ行く国道に着き今までの雪道が嘘みたい。辺りは盆地内の広大な平野で、湖あり、オレンジやオリーヴ畑あり、麦の新芽があざやかで平和そのもの。時々太陽が雲の間から顔を出すが、にわか雨がしょっちゅう降って気温は4度。
市場へ行く馬車に満席の女性たちも黒ずくめは見当たらない。大きな村の市場はぬかるみになって、久しぶりの雨でも市場は活気を呈していた。道端にこんなに多くのオレンジを売ってるならゼイダで買うのじゃなかったとがっかり。
この地方で一番大きな町ベニ・メラルのバイパスでアトラス以南では無かったマージェンヌの巨大なスーパーを見つけた。亭主の求めていたブラウン・ブレッドや数種の肉類、それに大きなオレンジ10個も買い込んだ。オレンジ10個が4kgで10DH(75ペンス)こりゃやっぱりゼイダではぼられたんだ。
ベニ・メラルから20kmほどでわき道のR304をアトラス山脈内のアジラル(Ajilal)に向けて走る。平野の行き止まりから道路は急な曲がりくねった坂道になり、一気に1km近くも登ってしまった。山頂から見た平野はここがモロッコであるとは信じられないくらい整然として、町並みも素晴らしい。
山脈をいくつか越えたところは緑色の谷川とその上流にダムがあり、水力発電所があった。
ダムの辺りから雲が低くなりあたりは暗く雨が降ったり止んだり、山全体を素晴らしく彩るアーモンドの花が雨にかすんでいる。
アジラルはメインの国道から86Kmも山奥へはいってこんな田舎に大きなモダンな町があると驚いた。キャンプサイトはそこからまだ40kmも坂道を上下し山を廻り、一時は霧か雨雲の中へ入り込み前方5メータくらいしか見えなかったりした。
後キャンプサイトに6-7Kmで急に明るくなって雨雲が切れ、山全体を彩るアーモンドの花の素晴らしさ。今日のハイライトだった。
今夜はオランダ人カップルが経営するきれいなキャンプサイトで、夕食はモロッコの有名なタジン料理をサイトのレストランで食べた。ヤギの肉と野菜をタジンの器に入れて数時間直火で焼いたもの。肉は柔らかく美味しいが小さな骨が多い。
二日前に日本人の男性一人、自転車で香港からアジア、ヨーロッパ一周をしていて、このサイトで泊まったそうだ。