「そういうものなのだ。
日嗣(ひつぐ、人間の格)小さき者への世の運命の光とは雑草への焼き殺しにして、本性の告白(重要な節目(ふしめ)事に際しての、まして敵陣での小用の連射)をも急かすのだ。
今しがた、先刻の旗内の告白事をそれがしによる啓(ひら)き言葉に照らし合わせ、光の下に晒し、恥による焼かれと共に偽りは許されぬ内的自己の聖なる装束の内に於いて調べ直してみるがよいのだ。」
怒りに気圧され続ける京側を無視し、清による抗議の論調は続きますが漆黒は上の論調に終始し、耳に入れる様子はありません。
約四十分もの清の攻めの時間帯はしかし、世慣れは寂しい漆黒を劣勢に置き、表情への染み、嫌がりの漏らし、大量を実現させるには十分でした。
しかし両者には何の合意事も生まれないまま、共有される疲労は祭祀への移行をなし崩し的にせよ、清京両国に協力させていきます。
並べた椅子に座った清は腰の疲れを癒やす機会にひとまずは肉体的に安堵してしまいますが、今肉体を支配する精神的営み、これを命じて来た祭祀の広間は漆黒による長き祝詞を再び予想せざるを得ません。
普段の祭祀では漆黒は階段を昇り、祭壇前に立っての祝詞詠唱の時を過ごす事を配下は知ります。
しかし、清一団の同席となる今回は階段を昇らずの詠唱のようです。
理由とは“声の届かせへの不安の届きではなく、言葉にはならぬ原因不明な不安”からでした。
祭壇からやや遠間での祝詞奉納に立つ事とした漆黒はこの時、祝詞の短縮を思い付きます。
“もし通常通りの詠唱、一時間半を祭壇遠きから本日認め、次回の機会に及ぶとなると、麻袋人による装束へのすがり付き(詰問語調各種とのやり取りの記憶)を以降毎回認め続ける幅を見る事になる。”
詠唱は十九分で終わります。
“この世万象は言うに言われぬ憤怒をまとうとして、世の平静への容赦無き理力、憤怒操作、浄化力が為に意識底部から響かせる、己の人生での嘘偽りのない憤怒の羅列こそ、平静への使い捨て依代、人目指すべきにして次なる浄化を待つ神人合一が、底部から上空に浮いての人形段階”が祝詞です。
異例の同席者との距離を近く選ぶ事にした漆黒は祝詞奉納中の陶酔の静謐(せいひつ)の立脚時を選び、即興で祝詞に放屁(ひ)を追加する事にしました。
“ボ”
装束の内、“人触れざる内的自己”は前列の着席者との追加祝詞の即興性の共有を恐れ出しますが、正面が祭壇に向かうとあっては確認の術(すべ)はありません。
実際は偶然、誰にも聞こえてはいませんでした。
“先の神前での騒動と言い、次回の祭祀への不安と言い、更に今しがたの・・・・・・ええい、もう何もかもが喧しいのだこの土嚢(どのう)経済が国家発展係数項目の田舎者共が。”
祝詞最後の綴りを詠唱し、祭壇に向かいつつの暫(しば)しの黙想の時を貪ります。
天井の空調が吹かせる風は祭壇直近、今回の立ち位置いずれであっても漆黒を集中的に狙う設計だと、揺れる烏帽子の霞(かすみ)から分かります。
“この強欲装束が。
詠っとる時も時たま祭壇に手を出して供物(くもつ)の瓶の蓋を開けて何か飲みおったり煎餅(せんべい)喰いおったが厠はどうするんか。
中で尿瓶(しびん)装備しとるか、巫女に木箱持たせてそこらでかます勢いじゃねーの。”
清としても今回が頭目役としては初陣となった、今や最高実権者の若獅子の随想に対し漆黒は“あー、装束を緩めたいものだ。(小用を済ませたい)
祭祀とは欲望の露出を表明するものなのだが、祭壇にこうも誘いが溢れていると、容易と見なしてよい手の延ばし、浅ましき喰いとはそれがしによるかつての即興着想、果敢な実行であったが、その延長の用足しとなるとそれは相対すべき欲望なのか。
いや、愚劣さと見る。
あまりに、追われの相が強いのだ。
困窮のあまり京の知恵にがっついて訪れて来たあの台車引き共なのだ。
しかし、用は済ませたい。
ん・・・怒鳴り声脅威なる台車引き、小用と来ると心内で跳ね返り合うものを感じるぞ。”との告白を経て事物への理解を明るく啓(ひら)く、真実に向き合う、単純にして自己に偽り許されぬ目の光を心の内側にかざす事にします。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何故お前達は、ここにいざなわれるべくの応対をしつらえられていったのか、今になっても思考はその文明啓けぬ暗き都(みやこ)のロウソクでは及ばぬのか。」
祭壇の前に立つ漆黒は姿勢そのままに、前列を貫くと確信する声量とは叱責調の大声です。
対して清は“今になって遂に明らかにする本心か、いや酔狂か衒学講釈への必死専心か、残念ながら分からん、ようにされたがそれは一方的だったと言わせろ。
そしてそれは何故なのだ、と問わせないのは何故なのだ。”との下手な禁じ手の連続打ち手への呆れは、底部から込み上げてくる爆笑に呑まれそうになり、もはや緊張の面持ちをこれ以上保てそうにありません。
“ふざけんなこいつ。”
“この御仁(ごじん)は一体何を御所望なのだろうか。”
“アホな祭祀手続きを遮二無二見学させるべくこいつらは北京を二年冷遇したのか、との仮定の問いで意識底部への知的叱責を与え、痙攣を癒やそうとしてみるが知的視野自体が既にこの日の策謀大部分の本心に侵略されて意味が無さそうだ。
総じてきたねーこいつ。”
「にぃーーーみぃーーー(答えろ)。」
絶叫です。
「親の死体を売る、人の肌を剥ぐ、陰部(ほと)を竹で刺す、田畑に糞尿をばら蒔く、陽(ひ)を笑う詞を文化人が歌う、胎児を抜いて薬に砕く、川下を無視して厠にする、政治家が賊と酒を飲む、犬を蹴って遊ぶ、猫の目玉を抜く、鼠を市政が放る、麻薬を学舎(まなびや)で売る、婦女子を売春に追いやる、武人を色で骨抜きにする、月との蜜月に走り、」
ゆっくりと顔から始めに前列へ振り返り出し、その次に首から下を動きに従わせます。
(それがしをにやにやと笑いものの磔(はりつけ)にしておったとは。
おのれ損じ事ととなったぞ。)
「・・・・・・・・・何をしようとしたのか大清の脳髄構成員達よ。
分からんのか。
踏まれても尚生やす雑草の花、渾身の渇望の姿を命じたのだ。
鏡を見よ。
水を渇望しても尚内在する欲を呑み上げ、外に吐き出すのだ。」
ある幹部が立ち上がっての、大きな拍手を打つ手は現場支配雰囲気への無視、簡易なる自他発破火薬を意味しました。
「大変素晴らしいご講義、有り難く拝聴致しました。
然れども、わ・が・く・にに、卿の言われるが如き、動きは、あるが、二年もかけた貴国の事挙げに値するとは、考えない。
後は、力のやり取りとなる、と見るが如何か。
構わんですぞ。」
(強気に言い返して来るとは想定外也。
望まぬ想定とはこの手の野蛮、汚れ仕事が生業との問答也。)
広間の左右前方それぞれで手もちぶたさに佇んでいた侍と金星人には放屁は聞こえてはいませんでしたが、前列の失笑の面持ちとその理由を知っており、結果二人共失笑をこらえていました。
清が“濁”が放った噂を否定する怒りの語調を続けていると、自身の間合いと見た侍は漆黒の傍に仕えるべく広間の左手から移動を始め、これに気付いた右手の金星人も倣(なら)います。
対する漆黒はこのやり取りの直前に、側近である“濁”の仕事、放流された嘘の一端を始めて上奏され、知りを回避出来ぬ事となりましたが、眉一つ動かしません。
「無視の先、今回の様な陰湿極まる非礼を浴びせかけて来るとなると、こちらとしても相応の返礼に打って出るぞ。
いいか。」
大勢に睨まれ、内心は恐怖で半泣きだった漆黒は両傍らに帯同となった脇差しにより、声色を変えられました。
偶然が編んだ希少状況下に於いて測定されし、明のみならずの大陸の全王朝精髄の力凄まじきを詠う明の故事一節ずつの暗唱の間に、異星人文物を身近に知る京の童(わらべ)による故事の登場人物へのいたわりの頭撫でを挟んでいきます。
清は立ち上がり腕を組んで聞き入る、座ったままの憤慨の表情とそれぞれです。
「童の学舎を京で探して行っては如何(いかが)か。
京では売れぬを知らぬが中の、明の上流子女必需品、麻袋共よ。」
清一同はただ無言の二十五秒です。
「ご不満とは何なのだ。
何故明かされないのか。
我らに明かし事を行えと言われるが、それでは矛盾があるではないか。」
浅ましきを、未洗練さを、ただ麻袋に入れる朝、昼、夜を無視とする相互補填的循環状態と、明の阿片故事、戦史に、憤怒を、生きる糧(かて)を見ない神職とは、光放たぬ虚なる太陽也。
漆黒一派が一切の要望を発する事無くして、配置とそれによる満足の上納を呼んでいたのがこの日に“姿見せ”を行うべく、“濁”に指示され屋敷別室で待機していた侍と金星人でした。
初めての入室となった金星人は、拝殿の間での靴の必要性を“濁”から事前案内されておらず、“世への貫通力とは民へのいざない、いやらしきへの為であり”を深く知るに立つ我らとばかりに、待ち間には頻度高く即興でかましていた二人の性交には今回も避妊具はありませんでしたが、侍と共に靴下でばつの悪い時に佇んでいました。
避妊具無しでの性交を長く知っていた京人の女性への真似には敗北感、失敗感と共に経口避妊薬頓服の事実が染色して来る時でした。
清の表向きの代表者と漆黒とのやり取りは、“派手なやり取りは避けるべくの事としようではありませんか。
こちらと致しましては、そちらの異常な力みを見たならば、一方的に筒での覗き事を行う事と致します。”と過ぎますが、“筒での覗き事”の下りで傍らの侍は清の冠を意味深な目と笑みを差し向けつつの会釈を選んで来ました。
“分析事にある中、沈んではいかぬ異常密度の立方体の金属とは回転羽による上空への浮力を伝えるがそれによる水紋とは周囲への無視を含む。”
清の腕力部隊は対面に於いて異星人による盗聴があった四十年前以来、首席実力者、二位が素性を匂われた例はありませんでした。
侍の背後は異星人の往来激しい京の情報密度でした。
一方金星人は場の後半となり雰囲気がかなり砕けて来ると、背中を壁にもたれさせ、右足を片方に絡めての腕組みから希な客層を眺め出していました。
“無機質な視線を中空と的に選んだ顔の間で交互に向かわせているが、視線停止の時間も含めて無機質に規則正しく一定おきであり、不測事象への動きの慌てを消す雅量の充填と、蓄積してくる滑稽さによる自他嘲笑、ただの暇潰しだった、二行をいずれ相補的に合体させ、得た情報への付随悪貨、相手からの憤慨があった場合に当てつけるつもりだろうと見る。”
以上の分析を済んだ冠への視線の順となり、恐らくは十二秒を差し向けて来ます。
中間の六秒目から、これは予定行動であった、が伝わるべくゆっくりと首を動かし金星人と視線を合わせると、人生での“殺”の残骸概念“戮”が、内部残存の感動による脱力の表情で取り繕われてしまいます。
視線が合い二秒が過ぎると、金星人は左目側に視線をゆっくりと逸らし、“好奇心の満足に利用しようとしたのではなく、この場で蓄積してきたわざとらしさに律動されただけよ”との含意を込めたつもりを選び、相対を避けます。
自己の振る舞いを無駄だったと判定しての謝罪に不覚さが混じり、そして俯き気味の沈鬱な表情には演技が見えないという、先の輝いた表情からの遷移角度、つまり自己を律動に導いた戦慄度はそのまま相手に向かい、知的適量、銘柄化を済ませなかった液体状の欲望の焼灼を担います。
“その服を着たまま何をするつもりかここらで。
軍師だとして、何故そうも臨時に不埒な真似に打って出るんだ。
自由裁量枠を、意識内部で消せ。”
当人の筒覗き行為の本気度に応じ、現実社会での類似行為意欲は本当に消える事を、冠は知っていました。
(いいじゃないの。
気が強い奴ね。)
この金星人は後に、白黒の縦八十、横五十センチ大の大きな顔写真を京による紹介許容神経に乗せられる事になり、清一団は再会する事になります。
単独行動、自由の身分の上での御苑と商工会議所での放恣(ほうし)の見聞行為を誰も抑制出来ずの結果の、京の公家は当然に知る薔薇の花言葉、“不要、過剰、情愛とは”への措置でした。
漆黒は当日の面会日程を当然知りつつ、武家屋敷で待機させ続ける清を尻目に午後一時四十分まで庵(あん)でくつろいでいました。
高さ百、奥八十、横百二十センチ大の百年分の月語のラジオ放送を録音した黒い金属端末と、縦四十、横三十、厚さ二センチの太舞烈斗状の電子新聞に執心していたのです。
太舞烈斗新聞は金星の新聞社の記念事業による製作で、九十八年分は金星の社会全般、事実に即した報道を反映しており、それ以降に関しては日々の内容は未来への想像、希望報道です。
記念事業、製作、予測報道とは巧妙な失笑を装っての社会への実現強要を形成骨格としての、社、それの製作発意者たる女性幹部職権への算定装置導入状態が内部子宮でした。
学者の福澤諭吉と似る公家が金星人による滞在日程上の不手際を不問とし、これへの謝意が、御苑で皇族が手渡された恒久電源内蔵型の太舞烈斗新聞、一枚でした。
昼食にはステーキ、メロンほぼ一玉、蜜柑飲料、芋の磨り潰しを選び、予定通り、定刻より五時間遅らせた三時に向けて馬車に乗り込みます。
漆黒の利用可能日に当たると見ていた車高五メートルの電動馬車は到着せず、“未発展の清を精神内部から突き破るべくの洗練意識を予定通り充填出来ず”、軽い憤慨を浮かせ、後で呑む事とします。
実行に訴える前の二年の間、漆黒が暖めて来た対清策謀にとっての子宮とは異星人との交際であり、中でも金星製の太舞烈斗新聞が毎日繰り返しの往復刺激でした。
策謀の実行に当人を移行させた祭祀への浅沓、緊急時の信頼の担保、当人にとっての律動力は九割が“阿弥陀(あみだ)クジ”、金星技術の行動項目算定装置の披露状態による京の公家動態の活発化及び、“濁”所掌の装置利用権、一割は御苑で面会していた色白のグレイ、“にゅぅぅい”、(たすき、襷の右辺の上部のみを四分割し、左上一区画に脳の古語を一字、残り三区画には真実周囲の劣情、興奮無視なる無私、“辺(へん)”が脱力のまま人間意識の指向性四十七に対し駆動力全能状態を意味する京独自考案の合成漢字を置く、以降表記は襷)との関係から漆黒が期待出来るようになった、彼らが意図的に仄めかした外交人脈への安心でした。
行動項目算定装置は京全体の知的鋭利さに対する金星人の評価を背後に、日常的にそれを携帯していた彼らが御苑で漆黒との歓談に流れた折、五名の金星人の内一人が金星語の入力項目例と案出結果を示す、四角、三角が阿弥陀クジ模様に踊る“誰にとっても問題を生まない、文明の感動神経回路を他星で颯爽と駆け抜ける順路”を示す画面を漆黒に見せた際、密度のある質問を浴びています。
“敵国による弓矢の陣形を縫い抜ける法とは”
“公家階級の拙き、謗(そし)り事、謀を貫く弱味を見つける法とは”
“意味蒙昧なる異星人技術を他星で振り撒く何者かの意思を言い当てる法とは”
金星人にあったのは交際相手と認定済みの京での足早交際上の外貨欲と相手の素性認識、“恐らくは御苑の高位神官”でした。
漆黒が襷の標高へ到達した梯子とは十割を外星人の御用達(ごようたし)旅館、ねおとしています。
庵の固定電話による口頭指示を起点とした、ノートパソコン状の現物の案出十割に対する“濁”による掌握、運用、その結果の実現は五度の演習を経て確認済みなので、漆黒の入り用に際しては算定装置とは庵の傍の庫(くら)の、金星製の直径二・三メートル大の地球儀でした。
漆黒は対清関係を冷却化する前に、高麗の公家に対する実験、“反抗的な公家への叱責”を実行しており、これが対清計画の前哨戦で、結果とは二年間にわたる公家の完全沈黙でした。
漆黒が訴えた難癖、叱責の前にあるのは肉体に起因する京での奇形衝動、振る舞いによる身振り手振りの演習の日々です。
ところで、異星人技術の援用を確信しつつの叱責の対外実践は未経験でした。
算定装置と襷を前にしての、自身ですら統御不可能なる意識底部から呑み上げるような下劣への頓服力、下劣による律動に身をおもねっての大規模作戦でした。
“清の脊髄神経は六年で形骸化するだろう”。
これが漆黒の目測でした。
漆黒による対清攻撃の目的とは、高麗以外の大きな成功例の確保、換言すると次なる攻略事への足場となる実例、意識腕力の増幅でした。
清との交戦記憶を異星人技術の運用が染めれば、労も無く雪崩式に叶っていくと見た、漆黒の野望の介入の的とは清の次には地球の金星人居住区、金星、インド、イラク、サウジアラビア、襷、エジプト、エチオピア、ペルシア、トルコ、ギリシア、オーストリア、イタリアを順に据え置いていました。
王家、古代遺跡、文化が欲望の眼差しの色です。
金星人は距離が近い。
弱味などすぐに掌握出来る。
金星人に悪意で誇張した噂を流し、泣かす、癒やすで生理を掌握する。
襷には、金星を足場に周辺の文明星から吸いとった知見に知的疲労の末の無力感を混ぜて投げつけ、襷の紳士さと大人しさの境に気付かぬ振りをして雪崩れ込む、仰々しい大感動の間で、弱味を握る。
“典礼雰囲気重厚なる組織、国家の神璽(しんじ)にとっての本物の不手際への苦悶を眺望したい”
神聖さや強さに向けての精神集中は周囲への無視の奥に、邪魔による憤慨を宿す。
消せぬそれ、悪貨を集約し隠蔽したとして、それを人が見たならば苦悶、無力感を知る。
嘘偽りならぬ、痛みへの無力感を眺めたい。
この星広くを遍ねく従えたとなると、国の次期祭主はそれがしを詣(もう)でろ。
今回の接触を大きな節目として、清、日両国は以降約半世紀にわたる交戦の沼を走り、沈んでいく事になります。
外星人による調停を無効判定とした日本側の全権代表ならぬ、簒(さん)奪者は清、日両国それぞれに二百十六万人、十八万人の死者数を求めます。
現代、日本の自衛隊が装備する航空戦闘機と酷似する宇宙空間往来型の無人戦闘機が月から飛来しての清の七都市に対する、無差別機銃掃射、定期的空襲は七百人を殺害し、付随した都市機能の六年周期発生の完全壊死は疫病で九十万人を死に至らしめました。
北京北方の山地地下から飛来する、現代のドローンと酷似する小型の無人戦闘機は紫禁城を集中的に空襲してはビラン剤系の毒瓦斯を散布し、直接死亡者数十四、吸気による遺伝子疾患露見者数四万五千、奇形児、視聴覚異常といった子孫への二次被害者数五十六万を残しました。
“京の未来二千年にわたる少女の精神を狙った侵略”との清への謗(そし)りは、その数十二億もの数の異星人の異空間技術による諜報の的に清の対異星人部隊を据え置き、京に圧倒的な情報優勢を与える一方、劣勢の清に人肉業者の跋扈(ばっこ)を命じます。
清各地の天津級の発展段階ほぼ全てが満たした密集密度とは三平方キロメートル辺り、十二件のコンビニ大の広さの人肉業者の巣の林立で、これによる無法地帯化、成り上がり者の群雄割拠(かっきょ)が百万人の病死を予定しました。
算定装置が北京、天津、保定を無作為に選定し、月の裏の凶悪指数頂点階級判定の性犯罪人を放牧した数は七千でした。
漢語を話すヘロイン中毒の黄色人種十名単位による、六才の少女の誘拐、涙腺からの精液漏れが起きるほどの二十時間かけた輪姦が被害一件の態様の平均的描写中央です。
算定装置により“少年を吸って脳波を綺麗にしないと月に帰ったら絶望が待つぞ”と頭を脅された四十代の永遠放逐措置済みのブスババア六匹は十四才を誘拐して避妊薬を飲んでガンガンまたがりおった。
六千に対する直接の殺害を実行したのは対異星人部隊の長、“剪(せん)”、一人の鬼です。
内四千六百は手足を縛らせ合わせてまとめて巨大な鉄の釜に入れて一時間から五時間かけて茹でて皆殺しにしました。
指示での虐殺、残り千で計七千です。
特諜職員に対しては、南米域へは二分で移動する無人の宇宙船による誘拐、薬殺、南太平洋、南米への死体遺棄、鰐による捕食被害前のアマゾン川への生きたままの投げ落とし、アステカ遺跡への投げ落とし、月への連行、尋問が相次ぎました。
世界各地繁茂の今回の地球文明の歴史に起きた戦争に於いて、上の象限の指数、精神への苛烈さの高さは第二次大戦の独ソ戦を大きく引き離し、歴史学正史には非公知なる清京論争を首位としています。
漆黒の名を知る者は他界済みの両親を除いて、京には一人しか存在しておらず、それは一度たりとも、名を呼ばせず、書かせずの関係を二十年以上続けた相手“濁”でした。
漆黒は清には当日は名を明かしませんでしたが、一年半後両国の法的交渉の過程で漆黒が表記と読みを通訳に明かし、組織上特諜最高職権の冠が漆黒の名を知った四人目の人間となりました。
“郭(リュー)”と呼ぶ事にしました。
疲労困憊(こんぱい)の清は緊急休養の決定に全員が同意し、予定外ながら追加十日間京で滞在する事にしました。
十六から二十時間の睡眠を一団は強いられる事となった一日でした。
三日後、千本三条からやや東に入った所で現代日本各所のスターバックスの外装、内装に完全に埋没する喫茶店を見つけます。
献立(こんだて)を炭酸柑橘(かんきつ)飲料一点、十六点を日本各地原産の茶とするその店は、電光看板から始め全て金星文物への京の解釈によってしつらえられていました。
“一人で中に入ってみようか”との軽い好奇心は、店の入口への煉瓦(れんが)の階段を昇ろうとの曲がりを選ぼうとしてきた反対側からの年齢二十六の女性への道譲りで当惑します。
日本語での六度のやり取りは互いの譲り合いを投げ合います。
恥ずかし気に顔を赤らめながら、一礼しつつ階段を上がる女性の風貌、日本語の高貴音韻は殺戮概念形成疑惑の漢字を睨み続けた異国人に店での間合いは場違いとの理解を破壊された辺で組ませたのです。
女性は自動的に相手の気持ちの流入を受ける、能力者でした。
“清には見えん顔ぞこれは。
無いぞこのこのぶっ飛び上玉美人は。
顔は喰い過ぎぞあなたは。”
女優の小雪氏と似る身長百六十四センチのその女性の頭には上の言語、液体状が自動的に流入していたのです。
“物凄く頭の回転が早い、清の何かの怖い上級幹部候補にさっきの臨時でもあれほど咄嗟に脳で舐められる(誉められる)なんて嬉しいの定義を底から突き上げて来る感じがしてしまうわ。
誉め事にすぐに喜ぶなんて、鳥が急いで水を飲むと同じ舐める、よ。”が入店気分となっていました。
“店の蛍光度やら“宿の指数(売春宿がどれだけ上を集められるか)”と言い、破壊対象価格のみならずが外界認識から遅れた偽りならぬ本心と見るぞ。
それをな、無料性交許容、一方的な貫通事への気運と言うんぞ。
ここらは何もかんもの煌めきが派手でからつまりは貫通し過ぎなんじゃ。
それの前に、字で何でそれをこうしとるのか、との説明は無いんか。
字じゃ。
何もかんも貫通し過ぎる前に、それで丁寧に密度高く知ろしめ事をせんか。”
郭
青字
清京論争