スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

挽 歌

2016年10月30日 | 雑感
今年8月に発刊された歌人・松川洋子の私的なエッセイ集。

『 大戦末期、挺身隊員として徴集されていた時のこと ・・・ 隣り町、江別で列車が爆撃を受けたり敗戦の
  日が近かったある日、隊員が忘れた弁当を届けようとある駐車場を駈けていた、そこへ偵察機が急降下。
  射たれると思ったという。 その一瞬、兵の顔が見えた。 機は一転して走り去った。
  見える筈が無いと言われるが確かに見えた。』 
                           

歌人らしい人間へのひと筋の救いを描くが、戦争への憎しみには一歩も譲らず、こうも断ずる。
         
『 戦争とは大義名分をもって人間が人間を殺させる、殺せる、殺す野蛮な行為をいう。
  人の性は善か悪かと折に触れ論は出るが、そんなものは現実に何の役にもたたない。』


戦時下をくぐり抜けてきた歌人の文章はさすがに鋭く美しく、腹の据わったエッセイ集だ。

       

この方、函館生れの札幌育ち、戦争・病気・数々の不幸をも体験した短歌ひと筋の人生
のようで、もう高齢と推察するが、凛としたその姿には恐れ入る。 


『 みどり児の 姉の柩を 運びゆく 函館本線 あかねにかすむ 』

初子を亡くし、葬儀の為函館から祖父のいる札幌へ柩を運んだ時の挽歌だ。

父母の悲しき声を胎内(五ヶ月の)で確かに聴いたという。  歌人の感性とは科学を越えるものなのかも。


微生物探索

2016年10月28日 | 雑感
人間の体内には、微生物(主に細菌)だけでもなんと100兆個を超える数が住んでいるという。

最近これら体内に陣取っている微生物・細胞・寄生虫とかに興味を持ち始めている自分がいる。 
ガンを患ってからなのか知れないが、どうも気になって仕方がない。  男のロマンなのか。(笑)


ある本で紹介されていた亀谷了(カメガイサトル)著 『寄生虫館物語』 というのを読んでみた。 
                 (亀谷了(1909-2002)・医師で、世界的著名な寄生虫研究者)
 
     

他者に食も住もどっぷり頼って生きる、これを寄生虫というのだそうですが、実に人間らしいじゃないですか。

細菌やウイルスなど、人と互いに依存しあい、絶妙のバランスを保ってきたさまざまな微生物たち。

体内に入るやいなや必要無くなった目を自ら除去してしまうもの、しかも徐々にではなく一気に。
胃や腸も持たず身体全体で栄養を吸収する寄生虫などもいるそうです。

昨今の環境からか、寄生虫はその体内からは急激に減ってきており、その弊害もあるときく。
アレルギー疾患(サナダムシはアレルギー防御の特効薬)や自己免疫疾患、さらにはメタボリック症候群、
心臓病、がん、発達障害、うつなど現代病の増加をも引き起こしている一因でもあるようだ。


数メートルものサナダムシが出没していた時代が懐かしい。
清潔ばかりを追い求める現代人よ、寄生虫や微生物・細菌、侮っちゃいけません。

厄介ものの ガン細胞 にしても生きる権利はあるのです。 そんな声も聴こえてくる。
 
医師・世界的な寄生虫研究者でもある著者が設立したという<目黒寄生虫館>はJR山手線目黒駅
西口から徒歩15分大鳥神社すぐそばにあるようです。 03 3716 1264 念の為電話してみました。 

休館日は月と火曜日。 入館無料。  こんど行ってみようっと。  スノーマンの微生物探索は続く。


キラキラキララ

2016年10月19日 | 雑感
どうも読めない常識から外れた最近の名前の数々。  ≪キラキラネーム≫ と呼ぶらしい。

心愛 (ここあ)・咲愛(さくら)や 空詩(らら)・結夢(ゆめ)など素敵な名前もあるが、
手真似(さいん)・陽夏照(ひげき)・光宙(ぴかちゅう)・苺苺苺(まりなる) ・・・


どうも首を傾げざるを得ない いわゆる ≪DQNネーム≫ を含めると、あげたらきりがない様相を呈している。

最近の ≪キラキラネーム≫ が見られるようになったのは、当用漢字第三世代(団塊ジュニア時代)という。
この伊東ひとみの書は ≪キラキラネーム≫ の実態と その変遷を歴史的側面からも詳細に追っかけた本だ。   

        

「 近きころの名には、ことあやしき字、あやしき訓有りて、いかにともよみがたきぞ多くみゆる ・・・ 」
                                             本居宣長 『玉勝間』
≪ 日本語の歴史は漢字とやまとことばの相剋と融合の歴史でもあった。≫ と著者はいう。
訓読みからして当て読みであり、造語を繰り返して現代に至っているとのこと。

漢字じゃなくまさに感字と言った方が、こと名前に関してはピッタリなようです。
今に始まったことではないと理解はするが、それにしても名前・言葉・常識ってなんなのでしょうね。

日本のみならず、中国でも名前に <@> や <-A> をつけたりしているようです。 
英米の <Al Kaholic (アルコール中毒)> や、ニュージーランドの <Lucifer(悪魔)> とか 
< ・ と記して (フルストップ)と読ませる> それに <Anal (アナル)> と 笑える名前もあると聞く。 

        ( もっともこれらの内には申請時点で内務省から却下された名もあるようですが )

そういえば日本にも <悪魔> 騒動がありました。 結末は却下されたようですが、あの時の悪魔くん、
もう成人になっている年頃ですよね。 「悪魔くん」で良かったのではと思ったりもする、無責任ですかね。 


余談ですが、山折哲雄著『日本人と「死の準備」』によると、あの釈迦も我が子に「ラーフラ(悪魔)」
と付けていたという。 釈迦の9番弟子になったあの「ラーフラ(インド名)」です。 不思議ですね。

それを思うと ≪DQNネーム≫ ではありますが、ちょっと残念な気もします。

この本、≪キラキラネーム≫や≪DQNネーム≫ を通して日本文化を語る力作ですが、数々の名も紹介されていた。

そのなかで、雪の結晶の六角をイメージした これぞ ≪キラキラネーム≫ という素敵な名があった。 

「 六 花 」 と書いて 「 ゆ き 」 と読むのだそうです。   だれか この名 つけません ? 

風に吹かれて

2016年10月14日 | 雑感
2016年のノーベル文学賞が 「フォークの神様」 ボブ・ディラン氏に決まった。

反戦や人種差別への抵抗など、半世紀にわたり社会と時代を映し出してきた数多くの歌詞
によって 「米国音楽の偉大な伝統の中に新たな詩的表現を創造した」 との理由だという。


オリンピック開催とか世界遺産もそうですが、このノーベル賞も各国の政治的意図が見え隠れするものだが、
≪風に吹かれて≫ はそんなことを越えた名詩ですよね。   村上春樹さんも納得するはず。


ボブ・ディラン の曲 「風に吹かれて」 (壺齋散人訳)

    どれほどの道を歩かねばならぬのか
    男と呼ばれるために
    どれほど鳩は飛び続けねばならぬのか
    砂の上で安らげるために
    どれほどの弾がうたれねばならぬのか
    殺戮をやめさせるために
    その答えは 風に吹かれて
    誰にもつかめない

    どれほど悠久の世紀が流れるのか
    山が海となるには
    どれほど人は生きねばならぬのか
    ほんとに自由になれるために
    どれほど首をかしげねばならぬのか
    何もみてないというために
    その答えは 風に吹かれて
    誰にもつかめない

    どれほど人は見上げねばならぬのか
    ほんとの空をみるために
    どれほど多くの耳を持たねばならぬのか
    他人の叫びを聞けるために
    どれほど多くの人が死なねばならぬのか
    死が無益だと知るために
    その答えは 風に吹かれて
    誰にもつかめない


Blowin' In The Wind : Bob Dylan (原詩)

    How many roads must a man walk down
    Before you call him a man?
    Yes, 'n' how many seas must a white dove sail
    Before she sleeps in the sand?
    Yes, 'n' how many times must the cannon balls fly
    Before they're forever banned?
    The answer, my friend, is blowin' in the wind,
    The answer is blowin' in the wind.

    How many years can a mountain exist
    Before it's washed to the sea?
    Yes, 'n' how many years can some people exist
    Before they're allowed to be free?
    Yes, 'n' how many times can a man turn his head,
    Pretending he just doesn't see?
    The answer, my friend, is blowin' in the wind,
    The answer is blowin' in the wind.

    How many times must a man look up
    Before he can see the sky?
    Yes, 'n' how many ears must one man have
    Before he can hear people cry?
    Yes, 'n' how many deaths will it take till he knows
    That too many people have died?
    The answer, my friend, is blowin' in the wind,
    The answer is blowin' in the wind.


歌もいろいろ

2016年10月13日 | 雑感
今注目されているこの二人、お笑いの人って凄いですねぇ。  あなたはどっち派?  

ピコ太郎 ≪Pen-Pineapple-Apple-Pen≫  ピコ太郎
なんとも言えぬ明るさ。  世界的にも凄い事になってるようですね。  これ いいですねぇ!
でも この視聴回数 なんと今現在で 42,093,628 回 ってどういうこと?

                          (ユーチューブ1億3千4百万回で世界一になったようですよ)

オール巨人 ≪男の子守唄≫ オール巨人歌
男の嘆きは、やっぱり暗い でも これもいいねぇ。 
< ♪ 忘れたつもりの面影は せつなき女のほつれ髪 ♪ > ・・・・・ か。
嗚呼 恋かぁ!  そういえば < 恋いかなと 思っていたら 不整脈 > という川柳もあったっけ(笑)

銀河の彼方へ

2016年10月07日 | 雑感
女流時代作家 ・ 宇江佐 真理 が他界して (2015年11月7日) 早いもので もうすぐ1年になる。
 
宇江佐 真理 Wikipedia  

             
  「髪結い伊三次捕物余話」はTVドラマにも。  函館在住・自宅は江戸情緒を醸し出す平屋だ。 
 
青い時の同級生。 当時から文芸誌に投稿するなどの才女、クラスのマドンナだったと記憶している。

2015年 『文藝春秋』 2月号の闘病記 「私の乳癌リポート」 を読み、初めて彼女が病気と闘っている
ことを知ったのですが、実は私もその数年前にがんを患い、手術と療養を余儀なくしておりました。

他人事とは思えない気がし、少しでも励ましになれればと文藝春秋編集長宛に「手紙」を出したところ、
早速本人へその書を転送していただき、まもなく本人から著書四冊と三枚の手紙とが送られてきました。 


人への思いって通じることもあるのだなぁと正直嬉しく、人の出会いの不思議を感じたものです。
懐かしい同級生のその後や思い出、病の状況とそれへの思い、などが綴られておりました。 

       
   この四冊は当ブログでも紹介。 ウエザ・リポート笑顔千両  読書三昧(24)宇江佐真理著三冊

訃報を聞いたのはその数カ月後。  月刊誌 『オール讀物』 に髪結いシリーズが連載され続けられ
てもいたので、少し病状も安定しているのかなぁ・・・・なんて思っていた矢先でした。

エッセイ ≪ ウエザ・リポート 『 見上げた空の色 』 ≫ に こんな <あとがき> が書かれていた。
  ~ エッセイ第二弾(文庫本)。文藝春秋の闘病記 「私の乳癌リポート」 も併せて収録されている。

        

『 同級生が手紙をよこしてくれた。
  もしもの時には、函館山山頂から午前零時発の銀河鉄道に乗って、皆で向うへ行こうと書いてあった。
  妙なことを考えているものだと苦笑したが、次第にそれもいいかも知れないと思うようになった。


      ( そういえば手紙に 「 その時が来たら銀河鉄道に乗り、酒でも酌み交わしながら
        皆で往こうか、なんて気の合う仲間とよく話をしているんですよ。」 って書いたからかな。)


  すてきだね。 眼下に函館の夜景が拡がっていて、花火なんて揚がっていたら、もっと賑やかだ。
  夢という言葉を口にしなくなって久しいが、それが今の私の夢になっている。

  日一日と時間が過ぎれば、当然、病状も悪化の傾向を辿るだろう。

  一日を大事に生きるなんて大袈裟なことは言わないけれど、毎朝目覚める度に思うことは
  昨日と同じ今日でいい、というささやかなものだ。

  昨日と同じ今日などないとわかっていても、そう思わずにはいられない。
  大きな変化はいらない。 舞い上がるほどの幸運もいらない。 生きているだけでいいと思う。 』 
                 
この単行本化への 「あとがき」 が書かれたのは < 2015年の 夏 自宅にて > とあった。

その同じ年の 秋 病状が急変、銀河の彼方へ旅立ったのです。  

遠からず仲間を引き連れてそっちに行きますから、その時はワインでも飲んで語り合いましょう !
「 いやいや 一人で行ってくれ 」  なんて そんな冷たい仲間もおりますがね。

  
               ≪ 銀河鉄道始発駅 ・ 函館山山頂≫

第21回吉川英治文学新人賞受賞作 『深川恋物語』(短編集)や蒼井 優主演で映画化された
『雷桜』 などがある。   もう一冊当ブログで紹介したこんな本もあった。
 寂しい写楽                                                 

2016年秋 ランの花

2016年10月04日 | 雑感
長閑な秋日和の一日。  札幌・百合が原公園・ラン展より。 
 

  

  

  

  

  

  

また秋がきました。 でも札幌はあっという間にまた白い季節がやってくる。 
公園内で見つけた「ハロウィン」。  コスモスも ≪凛≫ と咲いておりましたよ。