スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

万葉の酒呑み

2013年03月25日 | 雑感
不覚にも風邪で熱を出し、2日ばかりふとんの中でCDを聴いたり本を読んだり、だらだらしておりました。

単行本『万葉集』をながめていたら、いいお酒の歌があったので紹介します。

大伴旅人(おおとものたびと)の歌でした。


○ 験(しるし)なき ものを思はずは 一坏(ひとつき)の 濁れる酒を 飲むべきあるらし

 (くだらない物思いなどをするよりは、一杯のにごり酒飲むべきである)

○ 賢(さか)しみと 物言ふよりは 酒飲みて 酔ひ泣きするし まさりたるらし

 (偉そうに物を言う(人)よりは酒で酔い泣きする(人)のほうがいい)

○ なかなかに 人とあらずは 酒壺(さけつぼ)に なりにてしかも 酒に染(し)みなむ

 (なまじっか人間であるよりも、酒壺になりたいよ。そうすればたっぷりと酒に浸れることができる)

旅人という人は余程酒が好きだったのでしょうねえ。
千数百年前と今も酒に関しては、たいして変わってないのですね。


旅人は大伴家持(おおとものやかもち)の父。
60歳の晩年九州に赴任早々、愛する人を失った悲しさ・孤独な老いの身を酒で慰めていたのだろうか。
あの檀一雄もこの旅人に心酔していたという。

『万葉集』は全十二巻 四千五百余首もあるという。
今回の単行本は、特に親しまれている歌を中心に約140首の歌の技巧・時代背景・人間関係等を解説した角川文庫本でした。

他に皆さんも学校で習ったことのある歌、、、知ってますよね。

○ 東(ひむがしの)野にかぎろひの 立つ見えて かへり見すれば 月かたぶきぬ   (柿本人麻呂)
                               
○ 田子の浦ゆ うち出(い)でて見れば 真白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける   (山部赤人)                                   
これなんかもいいなあと思います、、、。

○ 世間(よのなか)を 何に譬(たと)へん 朝開き 漕ぎ去(い)にし船の 跡なきごとし(沙弥満誓)
                           
○ 天(あま)の海に 雲波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ
                               (人麻呂歌集)
○ 新しき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事(よごと)
                               (大伴家持) 
この新しき、は万葉集最後の歌で、めでたくも降る雪のようによい事が重なりますようにとの祈りの一首です。

家持は政争に翻弄され不遇の晩年を生き、この後26年生きたがこの歌を最後に一首も詠んでいないという。

万葉集もなかなかいいものです。

我が山岳会の皆さん(と言っても1に酒、2に温泉、3・4なくて5に登山の会)
酒ばかり飲んでないで和歌のひとつでも詠んでみてはいかがかな、、、?


命なりけり

2013年03月16日 | 雑感
(野垂れ死に)を理想とする仲間がいる。哲人山頭火の域ですね。

(自然死)(尊厳死)、、そうこれが出来うることなら人間にとってあるべき姿なのかも知れません。
しかしなかなかそうはいかないのが、この、いや今の世の中。

二年前初めて入院した時、、ああそうか人間ってこうやって病院のベッドで大部分の人が死んでいくのかって、思ったものです。

日本は延命治療がますます盛んで、嗚呼! 理想の自然死は遠のくばかり。

寿命世界一になったが、同時に高齢者の大量死の時代に突入するという。
(年間死亡者のなんと85%が65歳以上の高齢者に集中~ちなみに100年前は、50歳代には半分が亡くなっていた)

医療技術も進み、長生きは人間の悲願であったから死の高齢化は歓迎すべきことではあるのだが、、、、。

カルフォルニア州が、リビングウイルと呼ばれる文書を書いておく権利を認める法律を世界で初めて法制化し、次々と全米でその権利が認められているが、日本は実現に至っていない。

勿論反対意見も多くある。

医療技術・医療費・医師の判断技量・安楽死と尊厳死の違い・看取り・介護問題・終末期の定義・脳死の問題等議論を要する課題も山積みである。


付録「尊厳死の宣言書(リビングウイル」全文・一般社団法人日本尊厳死協会提供
~ 田中保奈美著『枯れるように死にたい』副題「老衰死ができないわけ」より抜粋。

書いておくことは、意思を表明する力にはなるが、主治医によっては認めないこともありうるということ。
その場合、尊厳死に理解を示す医師を探しておく必要もあるかも知れませんね。
                    (と上記本に記してありました。~考えさせられる良著でした)

尊厳死反対意見も含め、どんどん議論すればいいと思う。

死ぬことは、生きることなのですから、、、。


西行の歌にこんなのがあります。

『野辺の露 草の葉ごとに すがれるは 世にある人の 命なりけり 』

どんなにすがって必死に落ちまいとしても、、、蒸発もあるしねえ!

西行は病に伏して、その頃めざして断食死を選んだのではと、、山折哲雄氏(宗教哲学者)が記しておりました。

『願わくは 花の下にて 春死なん そのきさらぎの望月のころ』
と詠み、旧暦の2月16日(新暦の3月下旬~4月上旬にあたる)花の盛りの頃、大阪南河内・弘川寺の庵で73歳の往生を遂げたという。

色即是空・空即是色

この世はあってないようなもの、、、。

でも確かにあるんだなあ! これが! 

もうすぐそのきさらぎの望月のころとなる。