スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

キャパの十字架

2015年08月15日 | 雑感
沢木耕太郎著 『キャパの十字架』 という本を読んでみた。

下の写真はフォトジャーナリズムの世界ではつとに有名な ≪崩れ落ちる兵士≫ の一枚だ。

演習中での撮影ではないのか、いやリアリティーがある等々その真贋はいまだに不明。

この一枚をめぐり科学的な検証(使われたカメラからの検証・前後の状況及び写真撮影背景からの検証など)、
キャパの生い立ちや生き様、キャパの他作品、恋人ゲルダとの隠された物語にまで迫った一冊である。


  
                                    ≪崩れ落ちる兵士≫

1936年スペインで内戦が勃発、その時共和国軍兵士が敵である反乱軍の銃弾に当たって倒れる瞬間
を撮ったとされる写真だが、実際に共和国が崩壊してからは、その為の栄光と悲惨さを象徴する写真
として広く世界中に流布されるようになる。 撮ったのはロバート・キャパ。 一躍時の人となった。

ロバート・キャパ(1913年~1954年)ハンガリー生れ。 報道写真でロバート・キャパ賞があるくらい有名な報道写真家。

(日本では報道写真家・沢田教一氏プロフィールクリックが死後カンボジア難民の写真でこの賞を受賞している)

当時から違和感を抱いた人は少なくは無かったようだが、この一枚が疑惑の写真として問題になった
のはキャパの死後15年も経ってからのことだという。


本当に撃たれているのか、本当死んでいるのか、調べていくうちに謎が謎を生む。
著者はこう語る ≪キャパの虚像を剥ぐということではなく、ただ本当のことを知りたかっただけだ≫ 


キャパもこの一枚については多くを語らなかったようだが、真実はいづこにあったのだろうか。

情報が過多の現代においては、≪本当のことを知る≫ ことは至難の業。

勿論写真も精巧に修正どころか合成も可能な時代、情報操作もある意味では簡単に出来うる時代だ。 
真贋は不明だが、ある国においても反体制派が株価操作をし暴落を促し世界経済を揺るがせもした。

私たちはこれからの時代、何を信じていいのだろうか。 そんなことを思う一枚でもあった。

【 沢木 耕太郎 】
ノンフィクション作家でインド・イギリス他乗合バスの旅を中心とした紀行小説『深夜特急』や妻(ヨソ子)の側から見た
作家・檀一雄を描いたノンフィクション作品『檀』が有名。 1947年生れ数々のノンフィクション賞や文学賞を受賞している。

キャパといつも一緒だったカメラマン・恋人ゲルダはスペイン内戦の激戦地であったブルネテで暴走戦車に轢かれて死に、
その17年後にキャパもインドシナで地雷を踏んで死んだ。

一枚の写真の謎が謎を生みだしたとしても、著者のキャパに対する親愛の情は変わらないと語ってはいたが。

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