スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

ウエザ・リポート 『笑顔千両』

2015年01月28日 | 雑感
1997年~2007年に書かれた人気時代作家・宇江佐真理のエッセイ本だ。

     

このエッセイに<新川慕情>という記述があり、函館市街を流れる川・新川(現亀田川というらしい)
にある千歳橋のことが記されていた。

宇江佐さんはこの新川付近に生れ育ち、現在もそこに在住し小説を書いている。

実は私もそこに生れ高校卒業まで住んでいたので、とっても懐かしく読ませていただきました。

作家の日々の生活、函館のこと、読書のこと、6度直木賞候補になるも落選、などが多彩に網羅。

私も読むまで知らなかったのであるが、治水工事の立案者は青森から来た堀川乗経という僧で、
私の生れた堀川町はこの名にちなむというではないですか。

まぁ、私ごとはどうでもよいのではあるが、数多くの宇江佐作品(江戸の掘割の描写など)における
登場人物の視線は、この千歳橋から新川を見つめる視点にほかならないという。

行って戻って、また行って。 恐らく死ぬまでこの川を渡り続けるだろう、、、と記す。

夫は元大工。次男はお笑い芸人修業の身とか、築100年もの古い民家に住み、台所の片隅で
小説を書き、函館一本やりの作家人生を貫く姿勢は、なかなかどうして。


不思議と、若かりし時(今も若いが?)は歴史が好きになれなかったようだ。

為政者ばかりの話に終始していたため、信長も秀吉も家康なども興味を持てない人物であったという。

これには私も共感する。 時代小説を書く人は こうでなくっちゃ!

宇江佐作品はその殆どが無名の主人公だ。普通の人々の普通の暮らしを通して仄みえる江戸のイメージを
掬い取って書くだけ、との思いにも。

函館の自宅にたびたび編集者の来訪もあるという。

 『書斎はどこですか と真顔で訊く馬鹿ものがいる。
  あるか そんなもの! 冷蔵庫の横にある机を顎(あご)でしゃくる』 


作家というときっと立派な書斎で書いていると思ったのでしょう。その生活ぶりもまた 見事である。
また、若い担当編集者から≪切ないお話≫をと所望されることがあったという。

 『 馬鹿いってんじゃねぇ。 切ないことはごまんとあって、今更何が悲しくて書かにゃならない・・』

読者からの反応で、人生の指針を求めているのだなぁ、と思いなおし、母親の心でその娘たちの
恋愛を静観する姿勢を取ろうと考えたともいう。

 『 なに? また、うたかたの作品かって? あぁそうともさ 』

時代ものを長く書き続けると、江戸っ子気質が身につくようだ。女性のベらんめぇ口調も実に気持ちよい!

でもなぁ 函館弁を 忘れちゃいけねぇぜ!(あれっ??)


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