スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

高倉さん

2014年04月20日 | 雑感
夏目さんの次は高倉さん というか あの健さんです。

健さんといえば、最近はいろんな人の名が出てくるのだそうです。 時代も変わるものですね。 

高倉 健著『あなたに褒められたくて』『南極のペンギン』『旅の途中で』の三冊を久しぶりに再読してみました。

健さんの祖先は北条氏。一門自害したが、北条篤時は子と共に鎌倉の地を逃れ九州に辿り着いたという。
若かりし時はそうとうな不良だったようです。
ボクシングに夢中に。 スキューバダイビング歴20数年。 催眠術もできるそうですよ。

         

 『あなたに褒められたくて』 

海外での仕事も多い健さん、無頼派作家・壇一雄の晩年住んでいたポルトガルの漁師の街サンタクルス
<宛名のない絵葉書>の章から始まるのですが、旅先で会った人々との交流。 
そして小林稔侍さんとの思い出。 他界した母への想い。

二十八章まであるのですが、どれも心打たれ暖かくなるエッセイでした。

  <ウサギのお守り>という章の文章を抜粋してみます。

   人が人を傷つけるとき、自分が一番大事に想う人を、いや、むしろとっても大切な人をこそ、
   深く傷つけてきたような気がする。
   この人はかけがえのない人なんだ、もうこんな人には二度とは会えないぞ と思うような人に限って
   深く傷つけるんですねえ。 傷つけたことで自分も傷ついてしまう。
   そしていつのころからか、本当にいい人、のめり込んでいきそうな人、本当に大事だと思う人からは、
   できるだけ遠ざかって、キラキラしている思いだけを ずっと持っていたいと考えるようになってますね。
   卑怯なんですかねえ。


  文章もなかなかのもので、実はこの本、第十三回日本文芸大賞エッセイ賞受賞しているんです。

 『南極のペンギン』 にこんな話がありました。<ふるさとのおかあさん>の章

   母親想いの非常に強い人でもあり、丁度映画≪あうん≫の撮影中に母が他界。 
   葬儀に間に合わず一週間も遅れてふるさ とに帰り、線香をあげておがんでいるうちに、
   母親の骨を見たくなり仏壇の骨壺をあけ見ていたら、むしょうに母と別れ たくなくなって、
   骨をバリバリかじってしまったとの話も。
   そばにいた妹たちに「おにいさん、やめてっ!」と悲鳴が、、、頭が変になったのかと思われたようです。


  この本は絵本になっている。

 『旅の途中で』 ではこんな告白も。<赤いガラス玉>の章

   大学時代(明大)新宿に遊郭があり、雪の降る日そこへ行った時のこと。
   ある事情でさんざん待たされ帰ろうとした時、そのお姉さんが
   学生服を着た貧しい学生と思ったのでしょう。
   「これ質屋さんに入れてなにか食べて帰りなさい」と言われ渡された赤いガラス玉。
   言われた通りに質屋に入れ友達に景気良くおごったという。
   身体を売らなければ生きていけない、世界中どんな法律を作っても、未だにこの哀しい生業。
   「遊女の心意気」だったかもしれない。自分にとっては「ルビーの指輪」。
   雪を見ると時々ふっと思い出されるという。
   あの時のお姉さん、まだ元気だったら、どうかお幸せでいてください。
   僕も一生懸命頑張ってます。
 

健さんももう80歳を過ぎた年齢に。 コーヒー色に染まってきた健さん  いい色です。

      
                                            (映画「あなたへ」打ち上げ時)