スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

渥美さんパートⅢ

2014年04月04日 | 雑感
渥美さん渥美さんパートⅡ≫に続く パートⅢです。

渥美さんの俳句(俳号・風天)をもっと知りたくて、森 英介著 『 風天 渥美清のうた 』 という本を読んでみた。

          

  渥美さん(通称・風天句)の220句すべてが網羅されていた。
  いい句ばかりですが、うち42句を抜いてみました。


  ≪ 勝手にスノーマン選ベスト10から ≫

       ○ 花冷えや我が内と外に君が居て
       ○ お遍路が一列に行く虹の中
       ○ 雲のゆく萩のこぼれて道祖神
       ○ ゆうべの台風どこに居たちょうちょ
       ○ 村の子がくれた林檎ひとつ旅いそぐ
       ○ 流れ星ひとり指さし静かなり
       ○ 花道に降る春雨や音もなく 
       ○ 好きだから強くぶつけた雪合戦 
       ○ 赤とんぼじっとしたまま明日どうする 
       ○ そば食らう歯のない婆(ひと)や夜の駅

 
       ○ ただひとり風の音聞く大晦日
       ○ いつも何か探しているようだナひばり
       ○ 土筆(つくしんぼ)これからどうするひとりぽつんと
       ○ 初めての煙草覚えし隅田川
       ○ がばがばと音おそろしき鯉のぼり
       ○ ポトリと言ったような気する毛虫かな
       ○ 髪洗うわきの下や月明かり
       ○ うつり香の浴衣まるめてそのままに
       ○ うつり香のままぬぎすてし浴衣かな  
       ○ うつり香のひみつ知ってる春の闇
       ○ 山吹キイロひまわりキイロたくわんキイロで生きるたのしさ
       ○ 梅酒すすめられて坊主ふふくそう
       ○ ひばり突き刺さるように麦のなか
       ○ 蓋あけたような天で九月かな
       ○ あと少しなのに本閉じる花冷え
       ○ ベースボール遠く見ている野菊かな
       ○ 月踏んで三番目まで歌う帰り道
       ○ すだれ打つ夕立聞くや老いし猫
       ○ いわせれば文句ありそなせんべい布団
       ○ おふくろ見に来きてるビリになりたくない白い靴
       ○ 肌寒く母かえらぬろ路に立つ
       ○ ようだい悪くなり苺まくらもと
       ○ ヘアーにあわたててみるひるの銭湯
       ○ 冬めいてションベンの湯気ほかりと
       ○ 立小便する気も失せる冬木立
       ○ 渡り鳥なにを話しどこへ行く
       ○ 背のびして大声あげて虹を呼ぶ
       ○ うなだれし柳と佇む新内流し
       ○ 打ち水をまつようにセミの鳴き
       ○ ちっちゃくて一匹で居る赤金魚
       ○ 雨蛙木々の涙を仰ぎ見る
       ○ 名月に雨戸とざして凶作の村

旅の句・悲哀の句・艶っぽい句・ふっと吹き出しそうな句。 風天句は それにしても 実にいい句ばかり。 

尾崎方哉のほかに、方哉の弟弟子・種田山頭火への想い入れも強かった渥美さん。
(山頭火は放哉が亡くなった3日後に行乞流転の旅に出たという)

友人でもある脚本家早坂暁さんのTVドラマで山頭火役を主演することになっていた。
ロケ開始の一週間前、渥美さんから『暁さん、寅が山頭火になったらみんなが笑わないかねえ』と言ってきた。
懸命に説得したが渥美の意志が変わらず、TVドラマからおりてしまい、NHKは急遽フランキー堺を代役に。

そんないきさつもあったようです。 いろいろ葛藤があったのでしょう。 

いやあ、方哉もしかりですが、渥美さんの山頭火も観たかったなあ! 

また、渥美さんはお遍路に強い興味を持っていたとのこと。


    
        (写真インターネット借用) 夕焼けは夜の虹かな?

幻の第四十九作は高知お遍路を舞台に、タイトルは≪寅次郎花へんろ≫に決まっていた。
渥美さんと山田監督はそのストーリーまで結構論議していたようです。
マドンナは田中裕子ゲストは西田敏行の予定だったとのこと。

  ○ お遍路が一列に行く虹の中

著者はこう記していた。
『なぜここまでにお遍路に強い関心を、晩年の心象風景ついての辞世の句であったのかもしれない』と。

(この句は死後、俳人・金子兜太(とうた)・稲畑汀子など錚々たる面々が監修・俳句のバイブルともいわれる
 『新日本大歳時記』に掲載されたことでも知られる)

  きっと 星めぐりの旅をしていることでしょう。

 昔、とある映画館の階段でばったり。握手を求めたら”あ~どうも”と言って丁寧にしてくれました。
 あの時の柔らかな手。 今でも忘れられません。
  ぜひ またお会いしたいものです。 銀河のむこうで そう遠くないうちに(笑)!