いつもの柴崎さんの世界なのだが、60年代に作られた団地で暮らすことになった新婚夫婦の話という枠組みを用意しながら、そこに止まらずタイトル通り「千の扉」の向こうにあるたくさんの人たちの話になる。主人公は39歳の主婦。出会って3度の男から「結婚しよう」と言われ受け入れた。だから夫のこともあまりよくは知らない。淡泊な人で、あまり自分のことを話さないし、彼女も聞かないから何も知らない。新居 . . . 本文を読む
11月は「ビデオの日」のおかげで、旧作DVDを10本以上見ることになった。(別に見なくてもいいのだけど)何本かはここにも書いているけど、さすがに全部は書く時間がない。しかも、こんな時に限って、読むべき本がたくさんある。(これも別に読まなくてもいい)
仕方ないから、映画や芝居を見るのを減らすしかなく、11月も20日を過ぎたのに、まだ映画7本(その半券がまた、DVDに . . . 本文を読む
白石和彌監督によるラブストーリー。宣伝文句にある「共感度0%、不快感100%」は紛れもない事実で、こんなにも嫌な気分にさせられる映画はなかなかない。出てくる男女がみんなたまらなく不愉快。そんな彼らの織りなす愛の物語なんか見たくもない。途中で映画館を出たろか、と何度も思ったけど、思い留まる。だってせっかくお金を払ってここまで来たのだから。それにきっと、映画はそれだけ(不快なだけ)では . . . 本文を読む
凄く期待した。それだけにガッカリした。過剰な期待は偏見に繋がる。気をつけること。『悪魔‵を見た』のキム・ジウン監督の新作である。日帝時代を舞台にして、日本警察と義烈団の攻防を描く大作映画だ。朝鮮人なのに、日本の警察に所属する男をソン・ガンホが演じる。彼の引き裂かれた内面を描く。表面的には日本の手先だが、ただの裏切り者ではない。祖国のために戦う義烈団に潜入し、彼らの仲間になる。騙し騙 . . . 本文を読む
昨年のウイングカップで初めて見た「べろべろガンキュウ女」の新作だ。無事高校を卒業した小山都市雄くんが東京に行って半年。その7ヶ月の間で、大阪で2本、東京で2本の芝居を打ち、これが14回公演となる、ということらしい。(ウイングのスタッフに教えてもらった)ということは、彼は高校時代だけで10作品を作った(上演した)ということになるのだ。凄い話だ。
卒業後は、個人ユニッ . . . 本文を読む
なんとアニメーション映画になった『ゴジラ』である。最初この企画を知ったときには、子供向けの映画でも作るつもりか、と思ったが、そうじゃないことはすぐに明白になる。だが、それでもアニメのゴジラは不可能だろう、と思った。今はやりの3部作スタイルと言うことを知った時には、ますます心配になった。どこまで本気で取り組むのかが見えないから、期待より不安のほうが大きく膨らむ。昨年の『亜人』3部作の . . . 本文を読む
海のシーンから始まり、ラストでは宇宙へ。サカイヒロトによる映像を一心寺シアター倶楽の大きな舞台一杯に投影するシーンは圧巻だ。台本にはないその映像の迫力が作品全体のイメージを形作る。この小さなお話は、そんな壮大な世界を背景にする。
古代の洞窟壁画を発見して、その保存に立ち上がるというメインとなるお話と並行して、2つのお話が描かれる。1945年、戦時下の、とある3姉妹のお話は、戦場と . . . 本文を読む
滝田洋二郎監督の久々の新作だ。あまり食指のそそられない題材だったけど、彼が撮るのなら、見たい、と思い劇場に行く。やはり、正解だった。なんとこれは大好きだった『天地明察』の流れを汲む作品なのである。何かに全力で取り組む男たちとそれを支える妻の話。宮崎あおいがヒロインを演じているというところで、気付くべきだった。最初は二宮和也主演の料理映画なんて、と気分はいささか敬遠気味だったのだが、 . . . 本文を読む
いつものようにオムニバスである。常に変わらないスタイルを維持する。今回、条あけみさんは、懇意にしている3人の作家に短編台本を依頼する。浪花グランドロマンの浦部善行、万博設計の橋本匡市、空の駅舎の中村賢司。もちろん彼らは快く引き受けてくれる。台本自体は彼らの自由に委ねる。出来上がった台本は自然体で書いた気持ちのいい作品だ。あみゅーずのために書くという条件は彼らにとってプレッシャーにはならない。なぜな . . . 本文を読む
なぜこんなことをしてしまったのか。映画は妹(満島ひかり)のことを大事にする兄(妻夫木聡)のねじれた愛情を、迷宮入りしている一家惨殺事件の謎を追うことで描くのだが、なぜこんなことになるのか、よくわからない。犯人が捕まらないのも不思議。警察は殺害の動機がわからないから、犯人を挙げられないのだろうか。でも、日本の警察ってもっと郵趣だと思うけど。
この作品はある事件を追う . . . 本文を読む
会社が倒産し、仕事をなくし、住んでいた家も失い、妻にも逃げられ、もうどうしようもなくなった男が主人公。この情けない男を阿部サダヲが演じる。そんな彼がこれを機に、自由気ままに南の島を目指す旅に出る。沖縄からさらに飛行機で南下し、その先に船に乗り向かう。でも、そんなところでも、ちゃんとふつうに人が住んでいて、コンビニもある。(まぁ、雑貨店だけど)
そんな最果てのビーチ . . . 本文を読む
別にホラー映画に目覚めたわけではないけど、3本連続ホラー映画を見てしまった。たまたま2本連続劇場でホラーを見たので、調子に乗ってもう一本TSUTAYAでレンタルしてしまった。ビデオの日特典で映画の半券持参で旧作が無料だったので、『イット』の半券でこの映画を借りてきたのだ。『イット』を見た時、そういえば、以前『イット・フォロー』なんていうタイトルのホラー映画があったよな、と思い出して . . . 本文を読む
トンネルの崩落事故によって、閉じ込められた男(ハ・ジョンウ)を救出するスペクタクル超大作だと思って見始めたら、確かにその通りなのだけど、とても地味な映画で、最初の事故のシーン以外には、派手なシーンが一切ない単調な映画で、真っ暗な中に閉じ込められたままの男と(ほとんど動くことも出来ない)トンネルの外で、何も出来ずに手をこまねいている救助隊、遅々としてストーリーは進まない。まるで我慢比 . . . 本文を読む
スティブン・キングの旧作をリメイク。以前はTVドラマとして作られた。確か3時間の前後篇。今回初の映画化は、2時間15分で、子供時代のエピソードのみで作られた。原作は13歳と27年後のふたつの話が交錯する。少年時代のみのエピソードで全体を構成したのは正解だ。シンプルだけど、美しい映画に仕上がった。オリジナルの「今」だった80年代をそのまま舞台にすると、30年の歳月を経て、今ではノスタ . . . 本文を読む
ここに提示された破局は今ある現実をなぞっているわけではない。架空の災害を設定して、横山さんは敢えて現実の出来事としてではなく、フィクションの中で、震災に取り組む。そして、そこでの日常を切り取ろうとした。それは、自分の中にある漠然とした不安とより明確に向き合い、それを形にして提示しようとしたためだろう。
誰もいなくなった仮設住宅で夫の帰りを待ち、今もひとり暮らす女。 . . . 本文を読む