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映画・演劇のレビュー

『トンネル』

2017-11-10 19:49:04 | 映画

 

トンネルの崩落事故によって、閉じ込められた男(ハ・ジョンウ)を救出するスペクタクル超大作だと思って見始めたら、確かにその通りなのだけど、とても地味な映画で、最初の事故のシーン以外には、派手なシーンが一切ない単調な映画で、真っ暗な中に閉じ込められたままの男と(ほとんど動くことも出来ない)トンネルの外で、何も出来ずに手をこまねいている救助隊、遅々としてストーリーは進まない。まるで我慢比べのような映画である。ハ・ジョンウはヒーローのように活躍するわけではない。

 

確かにリアルだけど、これでは映画としての面白みはない。ハリウッドの派手なデザスター映画を期待したら肩すかしを食う。どちらかというと、感動のヒューマンドラマなのだが、それにしてもテンションが低い。見終えてがっかりする。しかし、そのがっかりこそが、この映画の誠実さなのである。

 

こういうハイリスクな大作に挑んで、それをこんなふうに映画化するという韓国映画界のふところの深さには感心する。日本映画やアメリカ映画ならもっと娯楽映画としての仕掛けを施すはずだ。でも、そんな小細工はなしである。

 

もう一本『善悪の刃』という韓国映画も見たのだが、これは日韓ワールドカップ開催直前の2001年を舞台にしたある殺人事件の犯人にされた男のお話。あの頃の韓国の警察って、凄かったのだな、と改めて驚かされる。容疑者に暴行を加えて事件をねつ造し、勝手に事件を解決してしまう。こんな無茶苦茶なことはないわ、と思うが、これが実際に起きた事件で、たった10数年前の韓国での日常(?)なのである。これが特殊なことではないことは、他のたくさんの韓国映画を見ればわかる。

 

全体のタッチを少しコミカルに仕上げてあるから、フィクションだと思っていただけに驚きは大きい。ポン・ジュノの傑作『殺人の追憶』での警察も凄まじかったなぁ、と思い出す。でっちあげなんか、日常茶飯事で、こんなことのための10年も刑務所に入れられ、出所後も人生を破壊され、さらには冤罪をはらすために、もう一度裁判に挑むことになるのだが、それもまた妨害される。正義なんかあるのか、と暗い気分にさせられる。

 

2本の映画に共通するものは、変な気を回すことのないストレートさだ。それが韓国映画の魅力だろう。直球勝負でドドンと迫る。時には暑苦しいこともあるけれど、悪くない。

 


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