
モノクロでしかもスタンダードサイズの映画なんて近年なかったはずだ。商業映画なのに大胆。どこかで見た宣伝で「デビッド・リンチを想起させる」なんてことが書かれてあったのを見て、ついつい見に行ってしまった。
暗くて重くて、しかも息の詰まる映画である。ホラータッチで閉鎖空間で、幻想と妄想が交錯して、だから実はとても好きなタイプの映画のはずなのだ。なのに、まるで乗れなかった。映画を見ながら、途中でここまで不快になり、乗り切れなくなるなんてことはめったにない。映画のレベルは最上級なのに、その映画に乗り切れないとはどういうことなのか。
登場人物は2人(ロバート・パティンソン と ウィレム・デフォー)のみ。彼らが嵐の灯台の閉じ込められて過ごす時間をクライマックスにして、反発しあうふたりの男たちの4週間がまずは描かれていく。最初はそれなりに緊張感もあり、悪くはなかったのだが、後半になるとだんだんついていけなくなる。この映画が何を目指したのかもわからない。狂気に至る過程はわからないでもないし、彼らの心の闇を告白していくという展開もパターンだけど悪くはない。
だが、これはただただおどろおどろしい映画でしかない。この映画を通して、僕たちがどこに連れていかれるか、という映画ならではの快感がそこにはないからだ。ラストの死なんてもう最初からわかりきっていたことだ。だからこそ、そこに至るまでのプロセスこそが必要なのではないか。緊張感が持続せず、不快感だけが増幅されていく。そういう映画を作りたかったのなら、それはそれで成功しているのかもしれないが、僕は納得しない。残念だが、これは仕掛けだけで中身の伴わない映画にしか見えなかった。