goo blog サービス終了のお知らせ 

習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ミッドウェイ』

2022-04-11 10:56:51 | 映画

1昨年の夏に公開された大作映画である。この手の戦争大作は大事にされ必ずヒットするというのが日本での定番だった。でも、もうそういう時代ではなくなったのだろう。コロナ禍での公開というハンディもあっただろうが、無残な興行となってしまった。ハリウッドの大作映画で、太平洋戦争を描く映画で、日本人キャストが重要な役でキャスティングされている。ただそれだけで注目される時代は終わった。

真面目な映画である。史実に則り、でも派手なドッグファイトで驚かされ、豊川悦司が山本五十六を演じ、キャストの3番目(だった気がする)を飾り、浅野忠信や國村隼も重要な役で出てくる。でも、映画はとんでもなくつまらない。『インディペンデンス・デイ』に代表されるハリウッド・デザスター映画の巨匠ローランド・エメリッヒ監督作品だ。でも、彼は2010年代からそれまでの作品とは少し傾向の違う映画も手掛けている。今回の『ミッドウエイ』はその流れで作られた作品ではないか、と思われる。派手なだけの戦争アクション映画ではないことは、明白だ。だけど、個々の人間が丁寧に描かれる群像劇というわけでもなく、あの戦争を冷静に捉えて日本とアメリカが何をしようとしたのかの検証をするわけでもない。『トラ、トラ、トラ』とは時代も違うけど、今この映画を作るのならその意義をもっと明確に示す映画でなくては意味がない。

それにしても無残な出来だ。特撮が見事なだけに、お話のつまらなさは際立つ。でも、先に書いたようにこれはお気楽なだけの娯楽活劇ではない。それどころかとても真面目で、真剣な映画なのだ。それだけに余計たちが悪い。まず、何よりも問題点は誰が誰なのかわからないことだ。こんな映画は珍しい。群像劇であることはわかっているけど、ひとりひとりのドラマが細切れでちゃんと描かれていないから、混乱してしまい、興味を抱けなくなる。単調で眠くなる。

日米がそれぞれ何を思いどう戦うのか、それだけでもちゃんと描いて欲しかった。すべてが表層的で、彼らの感情が伝わらない。あれもこれもと詰め込みすぎて何一つ描けないまま、2時間半。ラストで彼らのその後が語られるのだけど、そんなことより、本編の中で彼らが何をしたのかを描くことのほうが大事ではないか? (当たり前の話だが。)日米を同等に描くという指針だったはずなのに、結局はアメリカ側だけが描かれるのも、仕方ないことだが、つまらない。中国資本が入り、あまり意味のないいびつなシーンも挿入されるのは、ご愛敬として流せるけど、エメリッヒの目指したものがこんなレベルでの妥協に終わったのだとしたら、なんだか悲しい。アメリカの勝利に終わったが日本も頑張ったし、確かに脅威だった、だなんて、そんなくだらない映画は見たくはない。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 澤村伊智『怖ガラセ屋サン』 | トップ | 錦見映理子『恋愛の発酵と腐... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。