少し期待した。『竹取物語』をどうアレンジして自分たちの世界を提示するのか、高校生らしい取り組みだと思うし、彼らの意図するものがどきにあるのか、ドキドキしながら見る。月の世界の身分制度とか、プリンセスであるはずのかぐや姫がどうして地球に流されてきたのか、とか、なぜ、月に戻れるのかとか、高校の授業で習ったときにも、みんなが不思議に思ったことへの彼らなりの答えがここに用意されているならいいな、と思った。
だれど、芝居自体はあまりそういうことを考えることなく、単純にお話を進めていて、少し残念だ。演劇部の作品というよりも、文化祭のクラス劇ロングバージョンという感じで、何のひねりもない台本と素朴な芝居がマッチして、これはこれで楽しめるけど、物足りない。なんだか」とても暖かくて優しい気分にさせてくれる芝居だけれども。だから、完成度云々を言う気はない。だけど、この程度なら別にかぐや姫を主人公にしなくてもよかったのではないか。ただの宇宙人(エイリアン)でも成り立つ話だ。
月の世界の住人は優しくて欲張らないから現状に満足してしまい向上心がないから成長しない、という設定は面白く、かぐや姫がそんな生ぬるい世界から飛び出したいと願う、という展開は悪くない。パンフにあった「裏設定」をもう少しちゃんと芝居全体のストーリーに中に散りばめることが出来たなら、もっと魅力的な芝居になっただろうと思う。惜しい。