
なんと2時間56分に及ぶ長尺映画である。しかも、娯楽アクション映画のはずなのに、とんでもなく暗くて重くてしんどい。お話だけではなく、実際の映像がとことん暗くて、何をしているのか、よくわからないほどなのだ。映画館の暗闇の中で見ているのに、である。こんな大スクリーンで見ているのに、である。それってどういうことよ、と思う。アート映画ではなくハリウッド映画がこんなにも照明も使わずに、夜の闇の中でアクション映画を撮るなんて驚きだ。
渋めに抑えていて苦悩するバットマンの姿ばかりで、派手なアクションもない地味地味映画。さすがにクライマックスの洪水は凄いけど、そこまでのアクションは散発だし地味。お話は探偵もののスタイル。スカッとする展開は皆無。ダラダラと長い。大丈夫か、この映画、と心配する。
コミックなのにリアリズムを貫くスタイルでバットマンを描こうとした意図は明確だが、それが上滑りしている。シリアスな表情で事件と向き合うバットマンは時には滑稽ですらある。お面を被ってあのコスチュームで、腕組して悩んだり考え込んだり。背景となるのはバットマンというスタイルがまだ認知されてない時のお話(バットマンの登場から2年目)なので、ゴッサムシティの人々からも支持されていないし、警察からは何なんだあいつは、と不審がられている。(そりゃ、あの格好だもの!)ヒーローとして認知される以前のバットマンという設定自体は面白いけど、説得力はない。
3時間ずっと夜のシーンばかりというのも徹底している。冒頭の市長暗殺から、前半のクライマックスである市長の葬儀までで70分。葬儀シーンで初めて夜じゃないゴッサムシティが見れる。でも、その後はまた夜のシーンだけで、ラストに至る。ラストではようやく明るくなった後の光景が描かれるけど、もうそこで映画は終わりだ。
主役のロバート・パティンソンはゾンビみたいで、ぼそぼそ喋る。ほとんどバットマンなので、お面を被ったまま。ブルース・ウェインの時との対比もあまりない。キャットウーマンとのラブロマンスもあるけど、そこもお話本題の邪魔にはならないようにあっさり控えめ。大胆で挑戦的な映画だという事は認める。だけど、いろんなところで突っ込みどころ満載。