
50歳になる男。封印していたこと、恐竜時代の話をみんなの前で喋ることになる。何故か現役の大学の先生から話を聞きたいと連絡がありお会いしたら、今度は話せない。機会を改めてたくさんの人たちの前で話すことをお願いする。すると教授は大学の講座で学生たちの前で話す機会を作ってくれる。ここまでが前座みたいな部分。
本題は彼の話す恐竜時代の物語なのだが、これがなんだか不思議な父と息子のお話になっている。それが淡々としたタッチで延々と続く。しかも自分の少年時代の話と交互に描かれていくのだ。
彼が語る恐竜時代の恐竜たちのお話と彼自身の子ども時代が交錯する世界は不思議にリンクしながらさらりと交互に描かれていく。それがどこに行き着くかは見えないままラストに至る。
大学の講義室は500人くらい入る大教室。だけど、講義にはたった5人しか来ていない。それってどういうことなのか。そんなことへの説明もなく、お話は終わってしまった。まるで狐につままれたみたいな気分だ。
行方不明になった父から受け継いだ話をさらに若い世代に受け継ぐ。1億五千万年前から受け継がれてきた父と息子の物語。
同時掲載の短篇『灼熱のドッジボール』も同じように、また父と息子の話。父の胸にある謎の傷。ドッジボールで受けた傷だと本人は言うが、よくわからない。父が息子に伝えること。これはまるで合わせ鏡のようになる長短2作品が収録された不思議小説。