池田屋事件をメインにして見せる後半戦は土方歳三(田中尚輝)と沖田総司(鐘ヶ江洸)を主人公にする。どうしてもまとめに入ってしまうのが、2部作(あるいは3部作)の後半戦の宿命だ。これはミニマムな視点から新撰組の歴史と、その分岐点を描く大作である。2年間の焦点を絞って、4人の視点から描く。
土方の弱さ、沖田の優しさがちゃんと描き切れたなら成功なのだが、作品全体を池田屋事件に照準を合わせすぎた。その結果バランス感覚が損なわれた。鬼の副長である土方の秘められた弱さを彼の憂鬱として描こうとした視点には問題はない。沖田の純愛を通して彼の優しさを描くというのも悪くはない。だが、それがどこからやってきて、どこにたどり着くのかをもっとしっかり見せる必要がある。そういう一番大切なポイントが曖昧になっている。
個々の人間を描くという第1のテーマと同時に今回のもうひとつの大きな目玉は大胆な殺陣であろう。本格的に刀と刀がぶつかり合い、肉弾戦の様相を呈する。激しく、荒々しい斬り合いが延々と描かれる。段取りをきれいに見せるのではなく、リアルで過激。とても迫力がある。同じように激しいダンスシーンと絡ませて、華麗で悲壮なアクションの連打は見応えがある。
しかし、池田屋の戦いをクライマックスに持ってくることで、立ち回りの見事さに人間ドラマのほうが負けてしまった。2人の主人公のキャラクターを紋切り型に見せてしまったのも残念だ。彼らの内面がもう少し掘り下げられたなら、きっと見応えのある芝居になったことだろう。微妙なところで全体のバランスが損なわれたのが悔しい。