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映画・演劇のレビュー

『我が心の香港 映画監督アン・ホイ』

2023-08-09 10:03:39 | 映画

これは香港映画の巨匠アン・ホイの映画人生を追ったドキュメンタリー。僕が彼女の映画を始めて見たのはデビュー直後の第2作である82年作品『望郷 ボートピープル』。ドキュメンタリータッチで描かれる世界は新鮮で、それは今までの香港映画にはなかったものだ。その後も精力的にどんどん様々な映画(いかにもの香港映画である、ヤクザ映画やアクションも)を作り続けてきて昨年の香港を描くオムニバス『七人樂隊』にも参加している。これまでの最高傑作は2014年の大作『黄金時代』だろう。

と、ここまでは映画を見る前に書いたが、今回この映画を見て改めて見逃している彼女の映画があまりに膨大でショックを受けた。そのほとんどが未公開だったり、映画祭のみの上映だから、仕方ないけどなんだか悔しくて。

さて、このドキュメンタリー映画だ。2時間たっぷり余すことなく、彼女の映画、人生が綴られていく。たくさんのこれまでの映画の映像、そのシーンを挟み込み、さらには彼女のことば、行動を追いつつ、周囲の人が語る彼女も挿入しながら、彼女が何を求めて映画を作り続けるのかに迫る。そしてタイトルにもあるが、そこには香港への熱い想いが根底にはある。

返還から20年を経た時、新作キャンペーンで大陸を周り、中国本国がいかに素晴らしいかを語るように強要され、反発するシーンからはさまざまな想いが伝わってくる。今や中国資本がなくては香港映画は作れない。だけど、政府におもねるような映画は作りたくない。

香港が好きだ。だからずっと香港で映画を作ってきた。75歳までは映画を作っていくと語っていたが、75を超えた今、まだまだ映画を作り続ける。香港映画界の巨匠は世界から注目されている。あんなに小さな丸っこい女子なのに、彼女は凄い映画を作り、今も戦っている。


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