チェコのヤン・シュヴァンクマイエル監督による驚きの映画。配信が後1週間で終了するから、慌てて見ることにしたのだが、見逃さなくて良かった。これは思いがけない拾い物だ。あっと驚く過激で大胆な描写が連続。驚愕の、衝撃の一作である。2時間12分の長尺なのに怒濤の展開で一瞬もダレないし、飽きさせない。予想不能のまさかの、あきれるばかりの展開になっていく。
赤ちゃんに恵まれない夫婦が手にした赤ん坊は夫が持ち帰ってきた木の根切り株。人形ですらないそのグロテスクなものを妻は喜び、子供として育てることに。擬装妊娠から、子育て。だが、徐々に対応は大変になり、赤ちゃんは成長し凶暴化する。必死になって子育てするが、最終的には夫婦は投げ出す。それを隣家の女の子が引き継いでいく。それって愛情からなのかどうか、よくわからないけど、彼女は弟か妹が欲しかったから、ね。
人形アニメを多用したいつものブラックホラーは悪意ある描写を連鎖する。切り株赤ちゃんは殺人というか、食人を繰り返す。子育てバトンは夫婦から後半は隣人の女の子に。彼女が切り株赤ちゃんを介護という展開から、最後はあんな安直なあっけなさに。クールというか、そっけなさ過ぎ。えっ、と思った。惨劇を見せないのはよかったけど。それにしても。
続けて配信がスタートしたばかりの『ほんとうのピノッキオ』を見る。マッテオ・ガローネ監督(あの傑作『五日物語』の監督だ!)なのに、なぜかこんなにも生ぬるい映画で、驚き。ピノッキオは先日デル・トロの人形アニメ版を見ている。本作は実写版。アプローチはもちろんまるで違う。ふたりとも過激な作風だと思うけど、ほんとならこちらのほうがよりハードな作品になりそうなのに、こちらはこんなに甘いし、のんびりした映画だ。対してあちらはなかなか攻めた映画に仕上がっている。ロベルト・ベニーニ(彼は昔監督主演で同じように実写版ピノッキオを作っている)がゼペット爺さんを演じるが、ピノッキオを始めとしてほとんどのキャストは特殊メイクというか、CG加工の原型を留めないアニメ仕様。
ストーリーはよく知っているお話通りだけど、そのあまりののんびりぶりに、「いいのかこれで」と心配になる。ピノッキオはわがままで失敗ばかりするが、すぐ許されるし、騙した相手も許す。のんびりしてるのに、テンポは早いので、サクサク進んでいく。ラストのクジラの腹の中は、サメの腹の中に変更しているけど、どんだけ大きなサメですか?
2本続けて木の人形が人間のようになる映画を見たことになる。意図的にではなく、たまたまだが、なんだか不思議な巡り合わせだ。だから、2本セットにして書いてしまったけど、でも当然この2本には共通項はまるでない。
さらには、今調べたらディズニー・プラスにトム・ハンクス主演、ロバート・ゼメギス監督で作った最新映画もあり、それが既に配信されているみたいだ。なんだかピノッキオブームだね。