第11回ポプラ社小説新人賞の特別賞受賞作。ポプラ社の本はそれだけで信用できる。この小説も素晴らしかった。ある兄弟のお話。五年生の弟と高2の兄。兄は1年前から学校に行ってない。部屋に引きこもって絵を描いている。弟は心配で頻繁に兄の部屋を訪れる。兄はいろんなことを教えてくれる。何があったか、ではなく、今何をしているのかが描かれていく。母さんたちは兄に学校に行きなさいとは言わない。諦めたのではなく、気長に待っている。弟の僕は毎日の生活をこなしながら生きていく。普通じゃないかもしれないけど、こんな毎日が続いていく。
前半はとてもよかったが、後半戦、兄の不登校の話に焦点が移っていき、少しつまらなくなってくる。そこでは何故彼が不登校になったのかが描かれていくのだが、そういう説明をせずに描いて欲しかった。弟の視点から描かれる兄の秘密。そこにクローズアップして欲しくなかった。最後まで弟くんを中心にしてドラマを展開して欲しかったのだ。兄のことを友だちに知られて、大好きだった兄が恥ずかしいものになっていく。そんなふうに思う自分に戸惑う。彼がそこからどうなっていくのかが知りたい。普通って何なのか。何が大切なのか。兄を通して弟が何をするのか、何と向き合うのかそれが気になる。そこから兄の問題を描けばいい。
しかもさらには第二章。ここで話が遡り、母の視点から兄の秘密を描いていくエピソードになり、弟は登場しない。これでは全体の構成が上手くいってない気がする。あんなにも前半部分が素敵だったのに残念だ。