夜、たまたまTVをつけたらこの映画がやっていた。もうすでに2時間近くが過ぎているから、お話はもう事件の終末に入っていた。ほんの少しだけ見るつもりだったけど、気がつくと最後まで見てしまった。さすが市川崑。久しぶりに見て、ラストがあんなにもさらりとしてあっけないことに驚いた。
この映画は封切りの時に見た。これが角川映画のスタートだった。映画は大ヒットして、僕も感動した。だからあの頃何度も見た。衝撃的だったのだ。市川崑を知ったのもたぶんこの映画からだ。以前『吾輩は猫である』を封切で見たけど、あれにはあまり感心しなかった。まだ高校生の頃、映画が大好きで、当然少ないお小遣いはほとんど映画に注ぎ込んでいた時代のお話である。
斬新な映像と音楽。懐かしい風景。おぞましい殺人。悲しい人間の性。10代の僕はいろんな意味でこの映画からたくさんの影響を受けた。中学生だった時の『日本沈没』、高校に入る直前直後の『砂の器』と並んで僕の思春期3部作とでも呼ぶ日本映画のエポックである。
今見ても新鮮だった。しかもみんなこんなにも若いし。石坂浩二はあの頃あんなに若かったのか! と改めて気づく。これはその後量産された金田一映画の先駆けであり、レジェンドとなった傑作。それが4Kデジタルリマスター版の美しい画像でよみがえる。(我が家は4Kじゃないけど)
見たのはたった1時間弱だったけどとても嬉しい体験だった。別に今は最初から見たいわけじゃないから、これくらいで充分満足した。坂口良子がかわいいし、あの頃の僕のマドンナだった島田陽子はやはり美しかった。そしてゲストとして角川春樹や横溝正史が出てくるシーンも見ることが出来たのもラッキーだった。(ふたりはちゃんとセリフもある)
あれから市川崑の映画は見れる限り見た。この映画以降の作品は最後の作品まですべて劇場で封切り時に見ている。もちろん遺作は再び挑んだこの『犬神家の一族』のリメイクだったことはみんな知っているだろう。1976年。あれからもう50年近くの歳月が過ぎた。