今、これを読むことに何の意味があるのだろうか。高2になった2人の少女が過ごす1年間のスケッチである。とてもサラッとしていて、軽く読み流してしまう。ドラマチックなことなんて全くない。こんなことを小説として書く意味があるのか、と思うくらいにさりげない。でも、どんどん読ましてしまう魅力がある。これがどこにたどりつくのか、実はとても気になる。
帰宅部。中学の時は陸上部でがんばっていた。でも、今はもう部活はいい。そんな女子2名。考古学部男子2名(もちろん部員少ない。でも、けっこうガチで全国目指している。)との淡い付き合い。恋人にはならない。でも、すこしは意識している。健全な男女だし、嫌いじゃないし。
こういう4人の高校生活のスケッチをさらりと綴っていきながら、大切な時間を描く。それってとても難しい。起伏のないドラマが、それなのに、目を離せなくするのは、この4人の男女が確かにそこにいて、精一杯に生きているのだ、ということが、伝わってくるからだ。嫌なことなんか、別に何もないのに、息(生き)苦しい毎日。そんななかで、ただ漂うように生きる。ささやかなことに一喜一憂しているけれど、特別なことは何もない。ただ。漫然と時は過ぎていく。それはまるで安全な水槽の中でぷかぷか暮らしている魚みたい。
仲のいい異性の友だち。恋人ではないし。意識はしてないはずなのに、意識している。好きだ、とは言えないのはほんとうの気持ちがよくわからないからだ。安易に好きなんて言えない。彼女たちはクラブにも入らないし、勉強もそんなにしない。何かに熱中することもなく、なんとなく生きている。将来のことはまだわからない。高校2年の1年間の出来事。高2という時間もなんだか中途半端。でも、そんなふうにして、たくさんの高校生たちも生きているのだ。きっと。