
ゴミの清掃員をしている綺麗好き男子とゴミ屋敷状態なのにさらに部屋にゴミを溜め込むゴミアーチストの女子。隣り合わせの部屋で住むふたりのドラマ、(という表面的なお話をきちんと裏切る)と,書いたが、そんな簡単な話ではない。真反対のふたりのラブストーリーという安易な設定に見せかけて実はかなり病んだふたりの話でもある。ゴミと潔癖症を通した虐待を描く。
ふたりの置かれた家庭環境がエゲツない。さらには今置かれた状況もかなり過酷である。だけど、ふたりは彼の知り合いであるミントを通して自分たちの生き方を改善して行く。そしてお話はちゃんとよくあるラブストーリーになっていく。
まさかの展開を見守る。この作品の着地点は想像もつかない。甘いコメディタッチのラブストーリーにも出来た話だが、そうはならない。ミントの裏切りには驚かれた。まさかのドラマチックを狙ったあざとい展開ではない。主人公たちだけではないふたりを引っ張ってくれるミントの中にある弱さを通してラストに至る。簡単な話ではない。ゴミの王国と清潔の国。ふたりが新しい一歩を踏み出す。
ゴミ回収について普段から気になっていたことの一部がこの小説を通して理解できたのもよかった。シビアな現実を乗り越えていく彼らの物語は胸に沁みてくる。