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映画・演劇のレビュー

コトリ会議『おなかごしのリリ』

2014-06-07 21:17:23 | 演劇
6人の死者たちが命を棄てたことで、自由になったはずなのに、結局は何も変わらない現実を生きていくことになる。冒頭で描かれる延々と続く「しりとり」のように、作品自体もそんな堂々巡りが描かれる。彼らの抱える不安を描く。彼らはまるで生きていたころの延長でしかない死後の世界では満足出来ず、今度は宇宙に逃げようとする。どこまで逃げても結局は同じなのに、である。

ガスによる集団自殺。死んでしまった後の彼らを描く。だが、そこにはひとりだけ死んでいないものが混じっている。だが、そこで「誰が死んでいないのか、」というミステリにはならない。描きたいのはそこではない。だって最初からそんなことは明らかなのだ。(一人だけ頭に死者がつけるベタな三角巾がない。)

 
 問題はそこではなく、生きていようと死んでいようと変わらないということだ。ここに描かれる不毛な会話の先には何もない。先にも書いたが、これは家族を描いた『花の台ふき』とセットで、1本になる。こちらは家族を離れた個人の話。今回は、家族と個人でセットなのだ。

 あまりよくは知らない者通しが一緒に自殺して、本当なら、それでおしまいのはずなのに、死んだ後の日常を6人で生きることになる、なんて。しかも、彼らはそのことを不思議には思わず、受け入れる。なんともへんてこな話なのだ。なんの疑いも抱かず、与えられた時間を持て余しながら生きていく。(というか、死んでいく)ここに描かれる退屈すぎる死後の世界は、なんだか微妙でおかしい。

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