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映画・演劇のレビュー

宮島未奈『成瀬は天下を取りに行く』

2024-05-15 08:02:00 | その他

今年の本屋大賞受賞作。おめでとう。ちゃんと天下を取った。ずっと前から読むはずだったけど、図書館の予約がかなり立て込んでいて、無理っぽいから読むことを諦めていたら、学校の図書館が買っていたので、無事読むことが叶う。よかった、よかった。

 バカバカしい話だけど、彼女の生きる姿勢には感心する。14歳とは思えない達観、大胆、太っ腹? 豪快。大津西武閉店まで1ヶ月毎日通うとか、まるで漫才なんてしたことがないのにM1グランプリに出場するとか成瀬の行動はいきなりでとんでもない。破天荒を素でする。考えなし,というか怖いものなし,というか。 
 
柚木麻子の『ランチのアッコちゃん』のような爽快さである。読みやすいから一気読みした。2時間くらいで読み終えてしまう。そういうところも柚木麻子のアッコちゃんシリーズと似ている。
 
短編連作で4話になると成瀬は高1になった。丸坊主頭でセーラー服。(髪の毛がどこでも同じペースで伸びてくるかを調べるための実験らしい)大津西武閉店シリーズの3話は成瀬はほとんど出てこないスピンオフ。4話からラスト6話まで、加速する。カルタ班(膳所高校はクラブ活動を班活動という)で全国大会に出場して、広島から来た子に好かれたり。地元愛満載で西武大津の話から始まり最後は跡地に建ったマンション12階から琵琶湖を見る。ときめき夏祭りの司会を4年間して漫才をした。高校卒業して京大に行く。東大でもいいけどやはり地元愛。
 
成瀬は彼女だけの天下取りに挑む。それはバカバカしいほどストレート。自分の興味が趣くまま突進する。周りの目から描かれる彼女の話はラストで初めて彼女目線で描かれる。いろんなことを西武大津に象徴させたドラマは成瀬という生き方と不思議な呼応を遂げる。
 
高校生向けの読みやすいし楽しい作品で学校図書館にピッタリの一冊。
 

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