
こんなえげつない話に耐えられない。吐き気がする。だけどこれは確信犯だ。読者を不快にさせるためにやっているわけではない。ましてや下品なゲテモノでもない。そこには確かな意図があり、それが知りたいから、最後まで読んでみることにした。いろんな意味でこれは衝撃的な作品である。
彼女がこんな暮らしをする。ここまで自分を追い詰めていくのは両親のせい、なんていうアホな答えではない。見境なしのセックスや買い物依存、借金まみれ。今を生きることにも疲れてしまう25歳。その先には何があるのか。異常者としかいいようがない彼女の周囲には同じような異常者ばかり。類は友を呼ぶってことか。地獄にまっしぐら。
ラストで初めて一瞬家族らしい団欒を過ごすシーンが描かれる。もちろんほっとするわけではない。まさかの安易なハッピーエンドになるわけもない。ここまでやっといて、それはない。ただ、あれはひとつの確かな答えである。彼女の悲しみはそこから始まったんだとわかる。だが、それで問題は解決しないことも自明のことだ。彼女が飛んだ時、彼はそれを受け止められるのか。その答えはこの小説のその先にある。目を逸らすな。刮目せよ。