廣木隆一監督はなんでもありだ。今後もすごい勢いで新作が公開される。しかも、ジャンルは多岐にわたる。それにしても、柚木麻子の小説の映画化は今回が初めてではないか。今までどうして誰も映画化しようと思わなかったのだろう。こんなに面白いのに。数ある傑作の中から選ばれた(のか?)今回の作品は、お話自体の大枠はうそだけど、ディテールはリアル。だから、このお話にさえ乗れると嵌まれる。
4人の痛い女たちと、彼女たちが共通で好きになるもっと痛い男、伊藤(岡田将生)という図式。最後は狂言回しとなるシナリオライター(木村文乃)と伊藤との対決になる。
自分の逃げ道を確保した上で、筋を通そうとする勘違い男伊藤が、最初は痛くて狡い男にしか、見えない。愚かでバカバカしい。だが、だんだんそんな彼が愛おしくなる。痛ましいくらいに懸命なのだ。自分の身を守ることに必死になっている。何かを怖れて、それを隠すために、突拍子もないことをしている。要するに傷つきたくないだけなのだろうけど、本人はそこを認めない。
実を言うと、それは4人の女たちも同じだ。なんてバカで愚かなのだろうか、と思う。だが笑えない。彼に振り回される女たちはそれぞれ、必死だ。自分なりに全力で生きている、つもり。勘違い。
距離を置いて彼女たちにアドバイスを与えながら、その愚かさを笑っているシナリオライターが、実は彼女たちを笑えない、というオチも上手い。終盤の彼女と伊藤との対決シーンもとてもいい。保身に走るのではなく、自分なりの哲学を振りかざす伊藤に対して、自分をさらけ出し惨めでも不格好でもいいと、開き直る姿は感動的。
本作は、深夜のTVシリーズとして作られたドラマをなんと全く同じキャストで映画化した。最近ではなかなかないパターンだ。TVの続編を映画で、というのが主流でこういうのはない。このあり得ないような話を、もう一度敢えてやろうとしたのは何故だろうか。
彼らが傷つきながらも必死に生きているのがいい。最後は自分をさらけ出して、行くしかないという結論に至る。そんな女たちに対して伊藤くんはそこまで開き直れない。そんな温度差も上手い。この群像劇は、どこかで、誰もの琴線に触れるものを持っているからだろう。恥ずかしいけど心当たりのあるものを、柔らかく突き出してくる。笑いながらもドキッとさせられる。冗談でしょ、と思いながらも、そこに誠実な本気を見せられるのだ。感心した。