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映画・演劇のレビュー

『河童のクゥと夏休み』

2007-07-18 21:57:48 | 映画
 この一見小さな映画が、2時間18分もの長尺だったのには驚いた。とても力のこもった映画だが、子どもに見せるのには、あまりに長すぎるのではないか。しかもクライマックスの後、さらに30分以上続くというのもなんだかなぁ、と思う。こういう良質のファミリーピクチャーは、できるだけたくさんの人に見てもらいたいと思うけど、そのためにもできたら1時間40分までに収めて欲しい、なんて。

 と、ここまで書いていてそんなこと誰よりも作り手が一番よく解っていることだろう。すべて分かった上で、この長さにしたのである。どうしてもこの長さがこの映画には必要だった。これは原恵一監督の我儘だけではない。そこにはリスクを負っても譲れないものがある。

 TV局のスタジオから逃れ、東京タワーに登って行くという『キングコング』へのオマージュとも取れるクライマックスはとても切ない。行き場所を失くしたクゥが天を目指す。そのままこの後エンディングを迎えたなら、これはただの感動ものとなる。だから、この映画はここでは終われない。

 スペクタクルの後の、普通の映画なら描かないはずの時間を見せること。そのことでこの物語は日常の中の出来事として完結することになる。この映画が望んだことはそこに尽きる。

 一つ一つのエピソードが実にいい。そんな中でも、当然の事かもしれないが、遠野に行くエピソードが凄くいい。川で2人で泳ぐシーンの気持ちよさ。夜、座敷童に会って、もう河童はこの世の中に存在しない、と知らされるシーンもいい。

 旅することで2人は成長していく。さらにはこの夏の出会いと別れを通して、彼らがお互い成長する物語でもある。河童と少年の出会い、さらには少年の家族との出会い。そして、この世界の人々が河童に出会うこと。この映画はささやかな物語であると同時にそんな壮大なドラマでもある。

 

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