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映画・演劇のレビュー

『First Love 初恋』

2022-12-11 14:06:29 | 映画

全9話からなるNetflix配信ドラマ。寒竹ゆり監督、脚本で満島ひかりと佐藤健が主演する恋愛ドラマだ。こんなベタな話で大丈夫かと思うような内容なのだが、これがなかなかよくできている。ありえないような嘘が気持ちいい。こんな恋があればいいな、という感じで見ていられる。誰もが体験した甘くて切ない(でもどこにでもありそうな)恋物語を美化してそこに重ね合わせるといい。自分もヒロインや主人公になり、高校時代を妄想してもいい。宇多田ヒカルの「First Love」と その19年後に発表された「初恋」 にインスパイアされたこのドラマは彼女の歌の世界を拡大して映像化したような美しく切ない物語。

1話が1時間ほどの中編映画のスタイルで、連続ドラマだけど独立した1話完結に近い作り方がなされているので見やすい。これは各エピソードはそれだけで1本の作品としても成り立つのに、完全に連続もの、という不思議な作品なのだ。現在のふたりのお話と高校時代の話が毎回同じように並行して描かれていく。

最終話でふたりの出会いが描かれ、さらには結末も描かれる。それまでのエピソードも時系列ではない。なんとなく思いついたところから見せていくようなくらいにさりげない。ただ、その都度今と過去はリンクする。今のエピソードに刺激されて思い出す過去の出来事という感じで連鎖する。今と過去がひとつになり、各エピソードは完結するのだ。(たぶんそんな感じだったような気がする)

高校時代に出会い付き合うふたり。だが彼女は事故で高校時代の彼との記憶をすべて失くす。その後二人は別れてしまい別々の人生を歩むが、10数年後に偶然再会して、、、、というような大枠はメロドラマの定番のようなお話の展開なのだが、作品全体の雰囲気はさりがなくて、嘘くさくはない。別れてからのそれぞれの人生(満島の結婚から離婚に至るエピソードとか、佐藤の自衛隊でのエピソード)と再会してからのふたりのエピソード、そして高校時代の二人のエピソードという3段階の時間がモザイクのように断片的に同時進行するというスタイル。

最後のハッピーエンドはなんだか出来すぎで嘘くさいけど、これは壮大なラブロマンスなのだからこれはこれでいい、としておこう。他人なんか関係ないふたりだけの世界がそこには広がる。

 


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