
来週見る朝井リョウ原作の映画『少女は卒業しない』の予習として見た。中川駿監督の前作。2016年作品。彼がこの作品に続いて今回初長編デビュー作として『少女は卒業しない』を選んだというのは納得できる。彼の興味の焦点は明確だ。だがそれはもちろん「かわいい女の子たちの青春映画を作りたい」とかいう安易な考えからの選択ではない。彼の少女たちの時間を見つめる視線はまるでドキュメンタリーのようで新鮮だ。これはストーリーを伝える映画ではない。ましてや昔よくあった(といってもまだほんの10年ほど前だが)少女漫画を原作にしたキラキラ青春映画とか呼ばれていたものでもない。そこに10代の女の子たちが生きている。その時間を大切にしたい。ただそれだけ。
今田美桜が主演している。クラスメートなかよし4人組の女の子たちのお話。LGBTを扱う映画という宣伝だが、この39分の中編映画は、まず少女たちの時間を丁寧に切り取る。そこにさりげなく同性のクラスメートへの淡き恋心が描かれる。だけどそれは同性愛なんていうものではなく、あくまでも淡い恋心という次元のもの。それを大仰にレズだとか言って、騒ぎ立てるバカな男子高校生たちを配する。この先、彼女の想いがどういうふうに進展するのかはわからない。苦しい気持ちを訴えかけるのではなく、幸せな気持ちを養護教諭に伝える。そんな想いを大切にする。黒板に書かれた文字は自分が書いた、と彼女は言う。こんなカミングアウトの中に込められた彼女の想い。39分の映画だから描けれたこの小さな世界を愛おしく思う。
「2017年・第26回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)のコンペティションでグランプリを受賞」し、2018年には劇場公開もされた作品らしい。これが認められて今回の商業映画デビューにつながったのだろう。2時間という上映時間の『少女は卒業しない』が楽しみだ。この映画の3倍の上映時間のなかで、「卒業までのたった2日間のできごと」をどういうふうに描くのか。不安はない。期待しかない。