聖母マリアの被昇天の祭日(8/15)が近くなった。
ナショナル・ギャラリーの旅、印象派の作品が続いたが、そこから2世紀ほど時代は遡る。
バロック期にスペイン内外で最大の画家として名を馳せたバルトロメ・エステバン・ムリーリョ(1617-1682/セビーリャ派)。
宗教主題の作品を信心深い修道会のために数多く手掛けた彼は、殉教など生々しい場面を避け、美しい聖家族、愛らしい聖人、雅やかな聖母などを描いたことで知られてい、これまでも、<無限罪の御宿りと聖母の被昇天>(13/08/15)で取り上げた。
上部に父なる神と精霊の鳩、そしてキリストが天上の三位一体を構成し、下部にマリアとヨセフ、幼きイエスがこれを反映して地上における三位一体を形づくっている。
ただひとり花の小枝を持ち直接話しかけるヨセフは、彼がマリアの夫になることを神の意志として受け容れたことを象徴しているとされる。
幼子キリストを構図の頂点にするため石材の上に配し、“ それゆえ、主なる神はこう言われる。わたしは、一つの石をシオンに据える。・・・堅く据えられた礎の、貴い隅の石だ ” (イザヤ書:28-16)を示唆したと。
当時、彼に勝るのは巨匠ラファエロ(1483-1520/イタリア/盛期ルネサンス)のみとまで高く評価された。
幼いイエスの愛らしい無垢な表情、若々しい聖母マリアの柔らかく繊細で豊かな叙情的描写は、絵を前にした者を聊かの衒いもなく優しい気持ちに誘なってくれるのである。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.848
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