○ 名医 ② エキセントリック

2007-07-14 17:51:27 | ♪Weblog
夫人が落ち着いたところで事情を聞き出した先生は憤慨した。巻先生の診察室に向かいながらも反省することしきりだ。巻君を採用したのはやっぱり間違っていたのかなぁ。そうだなあ、「ちょっとエキセントリックなところがある」と他のベテラン医師たちが案じていたのに、自分が押し切るかたちで採用した。それだから、診察室の扉を開けつつ自然に顔が強ばり声にも怒気がこもり、いつものまにか尋問口調になる。 
「いったい全体どうしたことだね、巻君。大丈夫かね。いくら最近医療ミスとが流行っているといったて、こんな見え透いた誤診をしておったら、病院の信用なんてがた落ちじゃないか」
ふだんは、穏やかな先生が、口角泡を飛ばしていることというのに、巻医師は、涼やかな顔をして机に向かい、何やらカルテに書き込んでいる。 
「家内は、もうすぐ曾孫ができる身なんだよ。君。それに、オレはもうその…もうその… その家内に向かって、オメデタてすね、とは何事だ!」

巻医師は、チラッと顔を上げると、ニコリともせずにつぶやいた。 
「でも止まったじゃないですか、奥様のしゃっくりが」



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