2017-06-07 18:39:49 sankei news
残された中国との差は? 日本が東京五輪で金メダルを奪取するために必要なもの
世界卓球 2017.6.7 11:10
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日本の唯一の金は吉村真晴(右)と石川佳純組の混合ダブルスだった(AP)
日本の唯一の金は吉村真晴(右)と石川佳純組の混合ダブルスだった(AP)
ドイツ・デュッセルドルフで5日、閉幕した卓球の世界選手権個人戦で日本勢は42年ぶりのメダル5個を獲得した。しかし、金メダルは一つだけで、日本の前に立ちはだかったのは中国の高い技術だった。東京五輪でのお家芸復活に向け、中国との差を縮める秘策はあるのか。
「それはずばり、3球目攻撃の威力と精度です」
近藤欽司・元全日本女子監督(現・サンリツ監督)はそのように語る。1球目はサーブ、2球目は相手のレシーブ、3球目攻撃とはそのレシーブを強打することを指す。
「決めるときは3球目で決めて、先手を取っていくことがゲームを勝ち抜くには重要です」(近藤氏)
今大会では日本選手も要所要所で、強い攻撃を見せて、中国選手からポイントを挙げた。しかし、中国はそれ以上に重要な場面でこの3球目で得点を奪った。
たとえば、銀メダル以上をかけた16歳ペア、伊藤美誠(スターツ)早田ひな(福岡・希望が丘高)組と、ともに26歳の丁寧・劉詩●(=雨かんむりに文の旧字体)の中国ペアとの第1ゲーム。日本は11-10とリードし、あと1本の場面で、丁寧から長身をフルに使った3球目攻撃を決められた。すぐに連取され、このゲームを奪われた。
「このポイントがすべてでした。丁寧の一打に圧倒されてしまいました」(近藤氏)
日本は4ゲーム目は取ったものの、1-4で中国ペアの前に屈した。
男子シングルスで13歳の張本智和(エリートアカデミー)は史上最年少でベスト8入りした。ただ、世界ランキング3位の許●(=日へんに斤)(27)=中国=との準々決勝で勝負を左右する1球に精度を欠き、敗退した。男子ダブルスでは大島祐哉(23)=木下グループ、森薗政崇(22)=明大=組も決勝では中国ペアにあと一歩及ばず、銀メダルとなった。
日本は今大会、金1、銀1、銅3の計5個のメダルを獲得し、国際ペアのメダルを含めて6個だった1975年のインド・コルカタ大会以来の好成績を収めた。対する中国は金4、銀3、銅3(うち国際ペア1)の計10個に上った。
日本の唯一の金は吉村真晴(23)=名古屋ダイハツ=と石川佳純(24)=全農=組の混合ダブルスだった。混合ダブルスでは中国はドイツ選手との国際ペアを組んだ。「日本は今回もちろん立派な金メダルだったが、東京五輪の種目に混合ダブルスが採用されて中国人同士のペアが組まれたら、手ごわい」(関係者)との声もある。
今大会は平野美宇(17)=エリートアカデミー=の女子シングルス銅など「48年ぶり」という記録も相次いで誕生した。この長き間、日本卓球は手をこまねいていたわけではない。「日本卓球協会は小学生の全国大会を創設し、ジュニア育成に力を入れてきた」(星野一朗専務理事)という。その上、平野や張本らは寄宿制のエリートアカデミーに入り、親元を離れて卓球に専念してきた。こうした強化は今回の躍進に着実に結びついている。
しかし、中国との差を縮めるのは容易ではない。「東京五輪で金メダルを取りたい」と平野や張本は強い意欲を見せる。ただ、「東京まで3年しかない」という現実もある。近藤監督は東京五輪に向けて、3球目攻撃の強化のほかに、「金メダルを取るには“新製品”(新しい技)が必要。ここ1本の場面で相手を驚かせる技を磨くことが大切だ」と助言している。
(編集委員 大家俊夫)
◯ Thing for Jpn to get a gold medal by 2020
残された中国との差は? 日本が東京五輪で金メダルを奪取するために必要なもの
世界卓球 2017.6.7 11:10
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日本の唯一の金は吉村真晴(右)と石川佳純組の混合ダブルスだった(AP)
日本の唯一の金は吉村真晴(右)と石川佳純組の混合ダブルスだった(AP)
ドイツ・デュッセルドルフで5日、閉幕した卓球の世界選手権個人戦で日本勢は42年ぶりのメダル5個を獲得した。しかし、金メダルは一つだけで、日本の前に立ちはだかったのは中国の高い技術だった。東京五輪でのお家芸復活に向け、中国との差を縮める秘策はあるのか。
「それはずばり、3球目攻撃の威力と精度です」
近藤欽司・元全日本女子監督(現・サンリツ監督)はそのように語る。1球目はサーブ、2球目は相手のレシーブ、3球目攻撃とはそのレシーブを強打することを指す。
「決めるときは3球目で決めて、先手を取っていくことがゲームを勝ち抜くには重要です」(近藤氏)
今大会では日本選手も要所要所で、強い攻撃を見せて、中国選手からポイントを挙げた。しかし、中国はそれ以上に重要な場面でこの3球目で得点を奪った。
たとえば、銀メダル以上をかけた16歳ペア、伊藤美誠(スターツ)早田ひな(福岡・希望が丘高)組と、ともに26歳の丁寧・劉詩●(=雨かんむりに文の旧字体)の中国ペアとの第1ゲーム。日本は11-10とリードし、あと1本の場面で、丁寧から長身をフルに使った3球目攻撃を決められた。すぐに連取され、このゲームを奪われた。
「このポイントがすべてでした。丁寧の一打に圧倒されてしまいました」(近藤氏)
日本は4ゲーム目は取ったものの、1-4で中国ペアの前に屈した。
男子シングルスで13歳の張本智和(エリートアカデミー)は史上最年少でベスト8入りした。ただ、世界ランキング3位の許●(=日へんに斤)(27)=中国=との準々決勝で勝負を左右する1球に精度を欠き、敗退した。男子ダブルスでは大島祐哉(23)=木下グループ、森薗政崇(22)=明大=組も決勝では中国ペアにあと一歩及ばず、銀メダルとなった。
日本は今大会、金1、銀1、銅3の計5個のメダルを獲得し、国際ペアのメダルを含めて6個だった1975年のインド・コルカタ大会以来の好成績を収めた。対する中国は金4、銀3、銅3(うち国際ペア1)の計10個に上った。
日本の唯一の金は吉村真晴(23)=名古屋ダイハツ=と石川佳純(24)=全農=組の混合ダブルスだった。混合ダブルスでは中国はドイツ選手との国際ペアを組んだ。「日本は今回もちろん立派な金メダルだったが、東京五輪の種目に混合ダブルスが採用されて中国人同士のペアが組まれたら、手ごわい」(関係者)との声もある。
今大会は平野美宇(17)=エリートアカデミー=の女子シングルス銅など「48年ぶり」という記録も相次いで誕生した。この長き間、日本卓球は手をこまねいていたわけではない。「日本卓球協会は小学生の全国大会を創設し、ジュニア育成に力を入れてきた」(星野一朗専務理事)という。その上、平野や張本らは寄宿制のエリートアカデミーに入り、親元を離れて卓球に専念してきた。こうした強化は今回の躍進に着実に結びついている。
しかし、中国との差を縮めるのは容易ではない。「東京五輪で金メダルを取りたい」と平野や張本は強い意欲を見せる。ただ、「東京まで3年しかない」という現実もある。近藤監督は東京五輪に向けて、3球目攻撃の強化のほかに、「金メダルを取るには“新製品”(新しい技)が必要。ここ1本の場面で相手を驚かせる技を磨くことが大切だ」と助言している。
(編集委員 大家俊夫)
◯ Thing for Jpn to get a gold medal by 2020